音楽配信サービスを選ぶときに注目したい要素はいくつかありますが、今回はとくに「音質」に注目します。音質に妥協せずサービスを選びたいときにチェックしたい項目や、音質が同じときに比較したい機能など、自分に合ったサービスを選ぶためのポイントを検討していきます。
音質にこだわるなら、「Amazon Music Unlimited」または「Apple Music」の2択となるでしょう。どちらもロスレス圧縮に対応しており、高音質の楽曲を楽しめます。
数ある音楽配信サービスの中から、音質にこだわりたい人向けに「Amazon Music Unlimited」と「Apple Music」を含めた5つのサービスをピックアップしてその特徴を紹介します。
音楽サブスク主要サービスの音質を比較
音楽配信サブスクの音質を考えるとき、注目したいのは「圧縮方式」と「ビットレート」です。今回は5つの音楽配信サービスをピックアップしました。それぞれの音質を表にまとめてみます。
サービス名 | 最高音質 |
---|---|
Amazon Music Unlimited |
|
Apple Music |
|
LINE MUSIC | ロッシー圧縮:320kbps |
Spotify Premium | ロッシー圧縮:320kbps |
Amazon Music Prime | ロッシー圧縮:320kbps |
圧縮方式の違い、「ロスレス」か「ロッシー」か
圧縮方式は大きく分けて「ロスレス圧縮」と「ロッシー圧縮」の2つがあり、音質に大きな影響を与えます。
ロスレス圧縮は、データを圧縮しながらも元の音源データを劣化させずに保存する方式です。その音質はCDと同等か、もしくはそれ以上あり、音質に妥協しません。今回紹介している中では、Amazon Music UnlimitedとApple Musicがロスレス圧縮をサポートしています。音質で選ぶなら、まずはこの2つが筆頭候補です。
ロスレス圧縮のデメリットはデータ量が多くなることです。そのため、モバイル通信でストリーミングするには適しません。あらかじめ端末にダウンロードしてオフライン再生するなどの工夫が必要です。またストレージも多く消費してしまいます。

次にロッシー圧縮は、一部のデータを削除して圧縮する方式です。ほとんどの音楽配信サービスは、ロッシー圧縮を採用しています。データサイズが小さくなるため、通信量が少なく、またストレージを大きく消費しません。気軽に音楽を聴くにはぴったりです。
デメリットは音質が劣化することです。ただし、移動中に音楽を聴くことがほとんどだったり、普通のPCスピーカーなどで聴くならこれで十分という声もあります。
なお、ロスレス圧縮とロッシー圧縮では、使用するオーディオフォーマットも異なります。ロスレス圧縮ではFLACやALACが使用され、ロッシー圧縮ではAAC、MP3、Ogg Vorbisなどが使用されます。
ビットレートの違い
ロッシー圧縮では、圧縮率が高いほど音質は低くなります。圧縮率が高くなると1秒間に処理するデータ量は小さくなります。これがビットレートです。
ビットレートはロッシー圧縮で音質を測る目安に使われています。ビットレートが高いほど高音質になりますが、データ量は多くなります。ロッシー圧縮ではビットレートを変えて音質を調整しています。一般的に、低品質・標準・高品質などに分かれていることが多く、ストリーミングやオフラインなどで適切な通信量になるよう切り替えて使用します。
下記、一般的な音楽配信サービスの音質をまとめました。ロッシー圧縮を採用した音楽配信サービスでも高品質の320kbpsをサポートしていれば、音質面で不満を感じることは少ないでしょう。
- 低品質:〜128kbps
- 標準:256kbps
- 高品質:320kbps〜
音質で選ぶならAmazon Music UnlimitedかApple Musicの2択
音質で妥協したくないなら、ロスレス圧縮を使用している音楽配信サービスを選ぶとよいでしょう。
ロスレス圧縮を採用している音楽配信サービスはいくつかありますが、ここでは、「Amazon Music Unlimited」と「Apple Music」の2つをピックアップしました。
Amazon Music Unlimited:ロスレス・ハイレゾと空間オーディオをサポート


HD(ロスレス)とUltra HD(ハイレゾロスレス)をサポート
Amazon Music Unlimitedは、アマゾンが提供している音楽配信サービスです。2021年より、ロスレスオーディオを配信するAmazon Music HDを統合し、追加料金なしで高音質な楽曲を楽しめるようになりました。
Amazon Music Unlimitedの高音質はHDとUltra HDの2種類です。HDは音楽CD品質の16bit/44.1kHzで、音楽CDを超える24bit/44.1kHz〜192kHzのハイレゾロスレスがUltra HDです。HDの楽曲は1億曲以上、Ultra HDは700万曲以上を揃えています。
また、ロッシー圧縮や空間オーディオもサポートしています。空間オーディオは、臨場感や没入感のある立体的な音楽を楽しめる音響技術です。特別なヘッドホンを必要としないので誰でも気軽に体験できます。


音質を細かく設定可能
音質は、楽曲の再生画面や画面右上の設定ボタン
から[設定]を開いて[ストリーミング設定]や[ダウンロード設定]で指定します。HD/Ultra HDと空間オーディオのどちらを優先的に再生するかや、モバイル通信時のストリーミングではロッシー圧縮のSD品質に自動で切り替えるなど、音質を自由に組み合わせることができます。プライム会員ならAmazon Music Unlimitedを月額980円または年額9800円で利用できます。非プライム会員よりも1割程度割安になるので、プライム会員にとくにおすすめです。
初回30日間無料
Apple Music:音質向上のさまざまな技術を投入


最大24bit/192kHzのハイレゾロスレスをサポート
Apple Musicはアップルが提供する音楽配信サービスです。音質についてさまざまなオプションを用意し、状況に応じて選択できます。楽曲の再生にはiOSやmacOS標準の「Apple Music」アプリを利用しますが、Android端末やWindows PCでもアプリをインストールすれば利用可能です。
Apple Musicでは、ロスレスオーディオ、ロッシー圧縮、空間オーディオを切り替えて聴くことができます。ロスレスオーディオの音質はAmazon Music Unlimitedと同じで、16bit/44.1kHzのCD音質(ロスレス)と最大24bit/192kHzのハイレゾロスレスをサポートしています。


高音質で聴くときは「設定」アプリからロスレスオーディオをオンにする
ロスレスオーディオを聴く場合は、再生設定の[オーディオの品質]で「ロスレスオーディオ」を有効にするだけ。この画面ではストリーミングとダウンロードの音質を個別に設定可能です。
また空間オーディオでは、AirPodsやBeatsなどの対応ヘッドホンを利用することで、頭の動きに合わせて音の定位が変化するダイナミックヘッドトラッキング機能を有効にできます。
Apple Musicは、iOSやmacOSとの相性が抜群でアップルの製品を持っている人におすすめです。単なる音楽配信サービスではなく、ソフトとハードの両方がアップルのエコシステムの中で上手に統合されています。このような差別化が図られているおかげで、ほかのサービスよりも高品質な音楽体験を提供する環境が整っています。
初回1カ月無料
320kbpsの音質に対応するその他の音楽配信サービス
ロッシー圧縮は、音楽配信サービスの標準として長い間採用されてきました。そのため普段最も聴き慣れている音とも言えます。PCスピーカーなどで聴く場合、最高音質の320kbpsであればロスレスとの違いを聞き分けることは困難でしょう。ここでは、320kbpsに対応している音楽配信サービスをピックアップしています。
LINE MUSIC:有料プランならイコライザを細かく設定できる


LINE MUISC。有料版はイコライザが使用可能
LINE MUSICには無料のフリープランと有料のプレミアムプランの2つのプランがあり、フリープランでは各曲30秒までのオンデマンド再生が可能です。ただし音質を選べず、低音質のみの再生となります。制限なしの高音質で聴きたければ、プレミアムプランに登録する必要があります。

音質は320kbpsをサポート

Wi-Fiとモバイル、ダウンロードの音質を個別に設定できる
LINE MUSICがおすすめなのは、LINEのユーザーと中高生です。LINE MUSICはLINEとの連携機能が充実しています。LINEのプロフィールで再生する曲やMV、LINE通話の着信音や呼び出し音を自由に変更できるほか、LINEスタンプが使い放題になるLINEスタンププレミアムのベーシックコース(月額240円相当)がついてきます。LINEでスタンプをたくさん使いたい人やプロフィールなどに楽曲を設定したい人にはもってこいです。
またLINE MUSICでは、中高生でも学割プランを利用できます。多くのサービスは大学生からなので、これはLINE MUSICの大きなアドバンテージです。LINE MUSICではアカウント画面で学生認証を済ませると学生プランを登録できるようになります。
なおLINE MUSICを利用するなら、LINE STOREを利用するのが断然おすすめです。クレジットカードの登録で初回2カ月無料になるほか、月額料金も通常より割安となり年間契約では1200円もお得になります。
Spotify Premium:世界最大級の音楽配信サービス


Spotify Premiumはイコライザも備える
Spotifyは、2024年4月の時点で月間アクティブユーザー数6億1500万人を抱える音楽配信サービスの世界最大手。40億以上ものプレイリストを配信し、音楽との出会いを大きく広げてくれます。
広告付きとはいえ、パソコンやタブレットならオンデマンドでのフル再生が可能で、無料プランでもストレスをあまり感じないのも人気の秘訣です(スマホは対象外。また、30日ごとに15時間までの制限があります)。

最高音質を設定できるのはPremiumのみ

ダウンロードの音質は個別に設定できる
無料プランの音質は高音質の160kbps相当に制限されています(Webプレイヤーは128kbps)。最高音質の320kbpsで楽しむには、Spotify Premiumへの登録が必要です。
Spotify Premiumに登録すると、1億曲以上の楽曲や600万以上のポッドキャストに無制限にアクセスできるようになります。海外発のサービスということもあり、コンテンツの多くは英語のものが多い印象で、洋楽好きは興味が尽きません。
また世界中のユーザーが公開しているプレイリストを利用でき、好みの音楽へアクセスしやすい環境が整っています。最初に無料プランを使って、サービスが気に入ったらアップグレードを検討しましょう。
ちなみにSpotifyでは、Standardプラン、Studentプラン、Familyプランのほかに、一緒に住んでいるカップル向けのDuoプランがあります。Duoプランは月額1280円で、2人で個々に登録するより割安です。6アカウントが使えるFamilyプラン(1580円)もありますが、2アカウントで十分という人にはDuoプランがお得でおすすめです。
Amazon Music Prime:プライム会員は無料で使える


厳選プレイリストでオンデマンド再生が可能
Amazon Music Primeは、プライム会員向けに提供されているサービスです。Amazon Music Unlimitedのような単体プランはなく、プライム会員(月額600円または年額5900円)であれば追加料金なしで利用できるようになっています。
Amazon Music Primeでは、有料プランと同等の1億曲以上の楽曲を広告なしで利用できます。ただし制限もあり、オンデマンド再生を利用するには厳選プレイリストを利用する必要があります。
厳選プレイリストは、自分で作成できる「オンデマンドで再生できるあなたのプレイリスト」と「最近再生した楽曲ほか」、ユーザーの履歴などから自動的に選曲されたプレイリストがあり、全部で15種類用意されています。好きな曲をオンデマンド再生するにはあらかじめプレイリストを作成する必要がありますが、リストに登録した曲はオフライン再生も可能です。


「設定」からダウンロードやストリーミングの設定を開く
厳選プレイリストを使わない場合はシャッフル再生が基本となります。またスキップ操作やオフライン再生などにも制限があります。音質の設定は320kbpsの標準音質が最高です。ストリーミングとダウンロードで音質を切り替えられます。
Amazon Music Unlimitedに比べると音質は劣りますが、プライム会員なら無料で使えるのが大きな魅力です。Amazon Music Unlimitedほど音質にこだわらず、また同じ曲を聴くことが多いなら、Amazon Music Primeで十分かもしれません。
初回30日間無料