音楽配信サービスを選ぶ際に、音質を重視する人におすすめなのがApple製デバイスとの親和性が高い「Apple Music(アップルミュージック)」です。
Apple Musicの特徴は、最大24bit/192kHzの「ハイレゾロスレスオーディオ」と、3Dの立体的な音響体験を可能にする「空間オーディオ」に対応している点。AirPods ProなどのApple製イヤホン/ヘッドホンを使用すると、頭の動きに応じて音の位置が変化するなど他の音質サブスクにはない技術が採用されています。
本記事ではApple Musicの音質の特徴や他の音楽サブスクとの違い、高音質な楽曲を聴く方法などを詳しく解説します。
Apple Musicの音質
Apple Musicの特徴は、「ハイレゾロスレスオーディオ」と「空間オーディオ」を提供し、高品質な音楽体験を実現していることです。Apple Musicは「ALAC」という独自のコーデックを採用し、音楽配信サービスの中でもとくに高音質にこだわっています。
最大24bit/192kHzのハイレゾロスレスオーディオをサポート


「ロスレス」と「ハイレゾロスレス」をサポート
Apple Musicでは、すべての楽曲を「AAC」(Advanced Audio Codec)と「ALAC」(Apple Lossless Audio Codec)の2種類のフォーマットで配信しています。データ容量を小さくするために非可逆圧縮をおこなうAACに対し、ALACは音質を劣化させることなくデータを圧縮する可逆圧縮を採用。これにより、従来の圧縮では失われてしまう音の奥行きや繊細なニュアンスを保ったまま、高音質を実現しています。
Apple Musicでサポートされているのは、「ロスレス」と「ハイレゾロスレス」の2つのロスレスオーディオです。ロスレスは16bit/44.1kHzのCD音質から最大24bit/48kHz、ハイレゾロスレスは最大24bit/192kHzの音源を楽しめます。とくにハイレゾロスレスオーディオは、これまでの音楽配信サービスでは再現できなかった繊細なニュアンスや生演奏の質感などをリアルに体感できるのが特徴です。
空間オーディオで立体的な音楽体験

空間オーディオは、3Dの立体的な音響体験を可能にする技術です。Apple Musicは、映画やゲームでも採用されている「ドルビーアトモス」に対応しています。従来のスレテオと異なり、音が左右だけでなく上下からも聞こえるように感じられ、360度から包み込まれるような立体的な音楽体験が可能です。
またAirPods Pro、AirPods Max、Beats Fit Proを使用すると、「ダイナミックヘッドトラッキング」により、頭の動きに応じて音の位置が変化し、ライブ会場にいるような没入感が得られます。iPhoneやMacの内蔵スピーカーをはじめ、普通のイヤホンでも空間オーディオは再生できますが、対応製品と組み合わせることでドルビーアトモスが意図している通りの本格的な3Dサラウンドを楽しめます。
Apple Musicと他の音楽配信サービスとの違いは?
Apple Musicには無料プランがないので、同じサービス内での比較ができません。そこで、他の音楽配信サービスとの違いを見てみます。ここでは、Amazon Music UnlimitedとSpotifyに注目しました。
Amazon Music Unlimitedとの違い


Amazon Music UnlimitedはUltra HDや空間オーディオに対応
Amazon Music UnlimitedはApple Musicと同様、ロスレス/ハイレゾロスレスオーディオと空間オーディオを提供しています。最大音質は24bit/192kHz(Ultra HD)で、空間オーディオはドルビーアトモスと360 Reality Audioの2種類に対応しています。
音質についてはApple Musicと大きな差がありません。楽曲数においても、1億曲以上の楽曲をロスレス(HD)、数百万曲をハイレゾロスレス(Ultra HD)で提供しています。ただし、ダイナミックヘッドトラッキングには対応していません。
Amazon Music Unlimitedは、Alexa(アレクサ)搭載デバイスとの連携に強いのが特徴です。「Echo」シリーズをはじめ、Alexaに対応したデバイスが数多く販売されており、Amazon Music Unlimitedと簡単に連携することができます。
これに対して、Apple MusicはApple製品と親和性が高いというメリットがあります。iPhoneやMacには標準でApple Musicを楽しむ環境が用意されており、スムーズに操作できます。登録してすぐ使い始めることができるのは、Apple Musicの魅力です。
コスト面ではAmazon Music Unlimitedが有利です。プライム会員は年間プランを選べて年額9800円で利用できます。Apple Musicは年間プランでも1万800円なので、Amazon Music Unlimitedと比べると少し割高です。
Spotifyとの違い

Spotifyの最高音質は320kbpsだが、ハイレゾロスレスオーディオや空間オーディオには非対応
Spotifyは最高音質320kbpsのOgg Vorbis形式での配信となるため、音質を重視するならApple Musicのほうが適しています。Spotifyはハイレゾロスレスオーディオや空間オーディオに対応していません。
Spotifyは世界中で6億1500万人以上のユーザーを持つ人気のサービス。豊富なプレイリストやユーザーに合わせたリコメンド機能が強みで、音楽の見つけやすさに定評があります。音質面を重視するならApple Musicが有利ですが、使いやすさやリコメンド機能を重視するならSpotifyも選択肢のひとつに入るでしょう。
ファミリープランには、「Spotify Kids」や「Family Mix」などこのプランでしか利用できない機能がついています。家族や子どもと一緒に楽しめるのが他にない強みです。
Apple Musicでロスレスオーディオを聴くときの注意点
Apple Musicでロスレスオーディオを楽しむときは、「対応ハードウェア」と「データ量」について知っておくと安心です。
対応ハードウェアの確認

Apple Musicの一部の楽曲は、最高24bit/192kHzの高解像度で配信されています。この楽曲をフルで楽しむには、外部のDAC(デジタルアナログコンバーター)と、高解像度に対応している有線のヘッドホンやスピーカーを使用する必要があります。
また、Bluetooth接続ではハイレゾロスレスでの再生はできません。ハイレゾロスレスの楽曲自体はBluetooth接続でも通常の高音質な音源として楽しめますが、AirPodsシリーズのようなAppleのワイヤレス製品でさえ、Bluetooth接続ではAACコーデック(16bit/48kHz)が使用されます。24bit/192kHzの音質をフルに体験したい場合は、やはりDACと有線ヘッドホン/イヤホンを使用する必要があります。
ところで、最新のAirPods 4やAirPods Pro 2は、Apple Vision Proとペアリングしたときにロスレスオーディオが楽しめるようになっています。今後、AirPodsとiPhoneとの組み合わせでもロスレス音源を再生できる新しいコーデックをAppleが開発する可能性があるかもしれません。この点については注目していきたいところです。
データ量に注意

モバイル通信ストリーミングの音質
ロスレスオーディオやハイレゾロスレスオーディオは音質が良いぶん、AACに比べるとファイルサイズが大きくなります。Apple Musicのハイレゾロスレス(最大24bit/192kHz)のデータ量は3分あたり約145MB、ロスレス(最大24bit/48kHz)は約36MBになります。「高音質」(AAC256kbps)と比べて6倍から24倍以上もの違いがあり、音質が高くなるほど通信量が激増します。
ロスレス/ハイレゾロスレスは、ストリーミングで再生すると大量のデータ通信が必要なので注意が必要です。モバイル回線使用時の音質はAACを選択し、Wi-Fi接続時のみロスレスオーディオで再生すると安心です。

ダウンロードの音質は3種類から選べる
またオフライン再生を利用する場合も、ロスレス/ハイレゾロスレスのダウンロードはストレージ容量をより多く使用します。10GBの容量で保存できる曲数は高音質で3000曲ですが、ハイレゾロスレスだと200曲程度になります。デバイスの空き容量に十分な余裕があることを確認するのがよいでしょう。
Apple Musicを高音質で楽しむ方法
Apple Musicは全楽曲でロスレスオーディオに対応していますが、初期状態では無効になっているため、最初に設定をする必要があります。
ロスレスオーディオを楽しむ

音質は「設定」アプリで変更します。[アプリ]→[ミュージック]→[オーディオ品質]を開いて、「ロスレスオーディオ」をオンにします。
さらに、[モバイル通信ストリーミング][Wi-Fiストリーミング][ダウンロード]のそれぞれで音質を設定します。データ通信量を気にせず高音質を維持したいなら、ロスレスまたはハイレゾロスレスを設定するのがおすすめです。
なお、すでにダウンロードしてある楽曲をロスレスオーディオで再生するには、その曲をいったん削除して再ダウンロードする必要があります。ミュージックの設定で[ダウンロード]の音質に「ロスレス」を選択し、Apple Musicから同じ楽曲を再ダウンロードしてください。
空間オーディオを楽しむ


ロスレスオーディオより空間オーディオを優先して再生したい場合は、ミュージックの設定画面で[ドルビーアトモス]を開いて[自動]または[常にオン]を選択します。
[自動]では、AirPodsやBeatsヘッドフォンなど対応デバイスに出力されているときにドルビーアトモスが使用されます。その他のデバイスを利用する場合は[常にオン]を選択すると、すべてのヘッドホンやスピーカーでドルビーアトモスを再生しようとします。
ドルビーアトモスの設定を変更すると、ダウンロードについて聞かれます。ドルビーアトモスで曲をダウンロードする場合は[オンにする]をタップします。
まとめ:音質を重視するApple製品ユーザーにおすすめ

Apple Musicは音質を重視するユーザーに有利な選択肢です。高音質なハイレゾロスレスオーディオと、没入感あふれる空間オーディオの両方を体験できます。iPhoneやAirPodsシリーズと相性が抜群で、Apple製品を持っている人に最適と言えるでしょう。
ところでiPhoneやiPad、Mac、AirPodsなど対象のApple製品を購入すると、3カ月の無料特典が付いてきます。ミュージックアプリから簡単に登録できるので、対象製品を手に入れたらぜひ活用してください。