他者との違いを受け入れて仲良く暮らす。どんな人もそうしたいと願っていると思います。でも「言うは易く行うは難し」ですよね。映画『パディントン』は、そんな違いを持った者たちと共生することの大切さを、子供にも大人にもわかりやすく伝える作品です。
原作はイギリスの作家マイケル・ボンドの児童文学作品『くまのパディントン』。ペルーからロンドンにやってきた、しゃべるクマを主人公に、クマと人間という違う種族が家族の絆と築き上げていく姿をハートフルに描いたファンタジー映画です。
ペルーからやってきた知性あるクマが起こす大騒動
あるイギリスの探検家が、ペルーの奥地で知性を持ったクマの夫婦に遭遇します。探検家とクマ夫婦は友情を育み、いつかロンドンにきたら歓迎すると約束して別れ、40年の月日が過ぎました。
クマ夫婦の甥は、その話を聞いてロンドンへの憧れを抱いていました。ある日、ペルーの森で大地震が襲い、叔父が亡くなったことをきっかけに甥は新たな生活を求めてロンドンに行くことを決意します。
密航船にのってロンドンについたクマは、パディントン駅でブラウン一家と出会い、彼らの家に一時だけ住まわせてもらうことになります。出会った駅の名前からパディントンと名付けられたクマは、人間との生活習慣の違いから様々なトラブルを引き起こして、家族に迷惑をかけるのですが、ある日、財布泥棒を捕まえ、新聞に取り上げられることをきっかけに、一家にも認められ、徐々にロンドンの生活にも馴染んでゆきます。
しかし、パディントンを狙う剥製師が現れ、ブラウン家に火事を起こしてしまい、パディントンは家を出ていかなくてはならなくなります。クマである彼に手を差し伸べる人はおらず、パディントンは住処を求めて探検家の家を1人で探すことになるのです。
本作の魅力は、なんと言ってもCGで描かれたパディントンの可愛らしさ。リアルなクマの造形でありながら、帽子にダッフルコートの出で立ちと仕草が可愛らしく、ちょっと抜けた性格だけど穏やかで紳士的な口調で話すパディントンには子供だけでなく、大人も魅了する可愛さがあります。
パディントンの声は英語版では「007」シリーズのQ役で知られるベン・ウィショー、日本語吹替版では松坂桃李が演じており、その可愛らしい外見から男前な声を発するギャップも魅力的です。
しかし、本作は可愛いだけでなく、クマと人間という種族の違いを乗り越えて家族の絆を育んでいく様を通じて、違いを持った者同士が共生することの難しさと大切さを描いた作品でもあります。ブラウン一家のメンバーですら、最初はクマのパディントンにはなかなか心を開けないのですが、他のロンドン市民はなおさらよそ者である彼に冷たくする様子も描かれるなど、移民問題に揺れるヨーロッパの切実な一面もこの映画には描かれているのだと思います。
そんな社会状況だからこそ、子どもにもわかりやすい形で違いを持った者同士が共生していくことの大切さを訴えるこの物語が必要だったのではないでしょうか。
会いに行けるパディントン
物語の重要な舞台となるパディントン駅は、ロンドン中心部に位置する駅で、鉄道と地下鉄が乗り入れる主要駅の一つ。ヒースロー空港からも特急で行けるため、観光客も多く訪れます。駅の近くには『シャーロック・ホームズ』シリーズや『ジキル博士とハイド氏』などでも有名なハイドパークもあります。
この駅構内には実際にパディントンの銅像も立っており、映画の大ヒット後、観光客が多く訪れる場所になっているようです。
また、神奈川県の複合レジャー施設「さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト」には世界初のパディントンのテーマパークもあります。
パディントンの可愛さに魅せられた人は、こういう場所を訪れて、パディントンに会いに行ってみるのもいいのではないでしょうか。
動画配信サービスの「dTV」、「U-NEXT(ユーネクスト)」、「Amazonプライム・ビデオ」、では、『パディントン』が見放題です(2020年3月11日時点)。
構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部