家族を目の前で殺され、呆然としている9歳の女の子。その目の前には強面のマフィアが座り、ある物を渡せと要求。女の子は言われた通りにマフィアの男の手に物を差し出す、かと思いきやナイフで男の手を突き刺す。
こんな衝撃の展開から始まる映画『コロンビアーナ』は、家族を殺された女の子が殺し屋として成長し、単身復讐に挑むバイオレンス・アクション映画です。
男の手を鮮やかな手口で刺すだけでなく、身軽に窓から脱出し、数人のマフィアの追っ手から1人で逃走を成功させるなど、9歳とは思えない機転と運動能力を見せつけます。物語は至ってシンプルな構成で、成長した女の子がマフィアを壊滅させるために戦いを挑むというもの。主人公のカトレアを『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』などで知られるゾーイ・サルダナが演じています。
制作を務めたのは、『レオン』や『ニキータ』を作り上げたリュック・ベッソン。またしても強烈な印象を残す女の復讐者をスクリーンに誕生させました。
美しい女殺し屋がFBIやマフィアと死闘を繰り広げる
1992年、コロンビアのボゴタに暮らす9歳のカトレアは、マフィアの幹部の父と母との3人暮らし。ある日、カトレアの一家はマフィア組織の大物ドン・ルイスに命を狙われ、自宅を襲撃され、カトレアの父と母は殺されてしまいます。カトレアは父に託されたマイクロチップを渡すようにマフィアの男に迫られますが、見事なナイフさばきで撃退し、一人で逃走。アメリカ大使館に逃げ込み、情報を提供する代わりに亡命を許されます。
アメリカの空港に到着したカトレアは逃亡し、シカゴの叔父の家を訪ねます。復讐を誓うカトレアは「殺し屋になりたい」と叔父に告げます。
そして15年後、美しく成長したカトレアは一流の殺し屋に成長していました。警察の留置場にいるターゲットを仕留めるために、わざと飲酒運転で捕まり、鮮やかに潜入して敵を仕留めます。カトレアは、それらのターゲットの遺体に、自身の名前の由来であるカトレアの花を描き、マフィアたちへの警告を送っています。
全米で起こる同様の連続殺人にFBIも本腰を入れて捜査を進めるようになり、カトレアはFBIの追跡とマフィアとの戦いの両面で孤独な戦いを強いられることになります。
本作の主演、ゾーイ・サルダナがとにかく美しくて格好よい作品で、彼女の魅力を余すところなく堪能できる作品です。通気孔などに侵入する時に見せるしなやかな体捌き、男相手に動じず見せる肉体アクションの力強さ、愛する男性の前で見せる可愛らしさなど、様々な魅力を発揮しています。
彼女は『アバター』や『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』など特殊メイクを多用している作品で知られていますが、そんな彼女が素顔で魅力を振りまいている貴重な作品でもあるのです。
物語の背後にあるコロンビアの麻薬戦争
本作の物語の背景になっているのは、コロンビアの麻薬カルテルの存在です。近年、中南米の麻薬組織を巡る物語がアメリカでは盛んに制作されており、アメリカの麻薬汚染の深刻さをうかがわせます。
Netflixのオリジナルシリーズ『ナルコス』は実在のコロンビアの麻薬王、パブロ・エスコバルとアメリカの麻薬捜査官との攻防の物語で、麻薬組織が軍や警察にも食い込んでいる実態が描かれています。ここで作られた麻薬の多くはマイアミやフロリダなどを経由してアメリカに流れ込んでいます。2015年公開の映画『潜入者』では、その密売ルートを壊滅させるための潜入捜査を描くなど、様々な形で映画やドラマの題材になっているのです。
潜入捜査官と麻薬組織幹部の禁断の友情、驚くべき実話を映画化した『潜入者』
その他、パブロ・エスコバルを描いた『エスコバル 楽園の掟』やメキシコとの国境付近での麻薬組織とFBIの戦いを描いた『ボーダーライン』など数多くの麻薬ものの作品が存在します。そうした作品を見て、本作の背景を知っておくとより緊張感を持って楽しめるようになるでしょう。本作でもCIAとコロンビアマフィアがつながっている描写がありますが、そのこれらの映画を観ると、その犯罪ネットワークは驚くほど広範で深く入り組んているのがわかります。
本作は、一時期続編制作の噂も流れるなど、この女殺し屋の活躍をもう一度観たいと熱望しているファンも多いはず。それだけ魅力あるキャラクターですので、一度は観てみることをオススメいたします。
動画配信サービスの「Amazonプライム・ビデオ」では、『コロンビアーナ』が見放題です(2020年4月20日時点)。
構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部