死んだ恋人から手紙が届く、宇宙と愛の謎を解き明かす壮大なラブロマンス映画『ある天文学者の恋文』

死んだ恋人から手紙が届く、宇宙と愛の謎を解き明かす壮大なラブロマンス映画『ある天文学者の恋文』

このミステリアスな愛の物語にあなたはついてこれますか。

『ニュー・シネマ・パラダイス』で知られるイタリアの巨匠、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『ある天文学者の恋文』は、死んだはずの恋人からメールや手紙が届き続ける奇妙な状況に巻き込まれた女性の、愛の葛藤を描いた作品です。著名な天文学者であり、妻子ある立場でありながら、教え子と不倫関係にある教授エドをジェレミー・アイアンズが、その不倫相手である女性をオルガ・キュリレンコが演じています。

単純なロマンティックな愛や、死別の悲しみを描く作品ではなく、宇宙の謎や別次元の存在など、まるでSF映画のような話も登場し、人の死や命、そして愛という感情の不思議さを大きなスケールで捉えた作品です。

死んだ恋人からの手紙

著名な天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)は、妻子があるにもかかわらず、大学の教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)と不倫関係にあります。エイミーは大学に通うかたわら、映画のスタントマンの仕事もしており、「生の実感を得るため」に命がけの生活をおくっています。

ある日、大学の授業に出席したエイミーは、エドの代理で授業にきた教授にエドが死んだことを知らされます。突然の訃報に悲しみに暮れるエイミーですが、そんな彼女のもとに死んだはずのエドから毎日のように、メールや手紙、動画メッセージが送られてきます。エドが生前に時間差でエイミーに届けるように多くの知人に渡していたのですが、それらの手紙は何を意味するのか、エドはなぜこんな回りくどいことをするのかを知るために、エイミーはエドの家があるエジンバラや、2人で過ごしたイタリアのサン・ジュリオ島などを訪れます。

エドの遺した言葉の意味を探るうちに、エイミーは父を失ったトラウマなどをビデオに納めていきます。それはまるで手紙やビデオの中だけに存在するエドに語りかけるかのように。

エドは生前、エイミーにこの宇宙には別次元があって、別の10人の自分が存在するという話をしていました。エドの死後、エイミーの元に届く手紙はまるで別の次元のエドが届けているかのようにエイミーは感じ始めます。そう思えた時、エイミーはエドの死の悲しみから解放されはじめ、自らの人生に前向きになれるようになっていくのです。

宇宙の謎と愛という感情の謎

別の次元なんて、なんだかSF映画のように聞こえますね。しかし、多言宇宙論というのは実際の学者によって提唱されたこともあり、解明が進んでいるとは言い難いですが、宇宙には人類にはわからないことがたくさんあります。

しかし、世の中にはわからないものは、宇宙の他にもたくさんありますよね。愛という感情もその一つではないでしょうか。そんな宇宙の不思議と愛の不思議をつなげて語っているのが、本作のユニークなところ。

もし1人の恋人が亡くなったとしても、何らかの形で別次元の恋人と繋がることができるなら、死という喪失を乗り越えていけるのかもしれません。そう考えると、宇宙について考えるのはとてもロマンティックなことで、恋愛映画と実は相性がいいのかもしれません。今までにあまりなかった視点の、大人のラブストーリーであり、観終わった後、ふと夜空を見上げたり、望遠鏡を除きたくなる映画です。

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構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部