推しへの愛で人生を乗り切るアイドルオタクの5人の女たち──ドラマ『婚外恋愛に似たもの』

推しへの愛で人生を乗り切るアイドルオタクの5人の女たち──ドラマ『婚外恋愛に似たもの』

オタク趣味は、一昔前は平穏な日常生活を送るためには、ひた隠しにせねばならないものでした。最近では、ネットの発達にも助けられてか、オタク趣味を公言している人も少なくありません。オタクには暗いイメージが付きまとっていたのも昔の話、オタク趣味が市民権を勝ち取りつつある社会になってきました。

とはいえ、まだまだ社会の理解は完全に浸透したとは言えない時代です。生活の上ではなるべく隠さねばと考えている人も多いでしょう。

ドラマ『婚外恋愛に似たもの』は、そんな人が多いに共感できるドラマです。境遇も生活環境もまったく違う、5人の男性アイドルオタクが友情を育み、それぞれの人生の難題に、推しへの愛を支えに立ち向かっていく物語です。

原作は『校閲ガール』の宮木あや子の同名小説。とてもリアルにアイドルオタクの生態が描かれており、思わずニヤリとしてしまう人も場面もあります。

アイドル好きだけが共通点の女たち

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このドラマに登場するアイドルオタクたちは、生活環境も性格も異なる5人の35歳の女性。TVプロデューサーの夫を持つセレブ妻、コンサルタント会社を経営するバリバリのキャリアウーマン、シングルマザーでスーパーのパートタイムで働く元ヤン、売れないBL小説家に、普通が一番だと育てられた専業主婦と、普段はまったく交わることのない5人ですが、そんな彼女たちがアイドルの前では格差も何もなくなり、かけがえのない絆を築き上げていく様が感動的です。

セレブ妻の美佐代(栗山千明)とバリキャリの雅(平井理央)は、実は犬猿の仲なのですが、推しへの愛とその愛をなかなか周囲に理解してもらえない境遇がよく似ています。ハイソな生活をする2人ですが、そういう上流社会だからこそ、アイドルというものがなかなか周囲に理解されにくく、悩みを抱えています。

2人と違い、経済的には正反対の貧困層の昌子(江口のりこ)は、中学生男子の息子の素行に悩まされています。働かない元夫と息子の面倒など、つらい現実に直面しながらも推しへの愛を糧になんとか乗り越えています。

「普通」の専業主婦・真美(安達祐実)は、継母やママ友、娘の友達の母親との関係に悩みを抱えています。さらには夫が人気塾講師としてタレント転身し、近所からも注目されることに。複雑な人間関係に悩みつつ、娘と一緒にアイドルグループ「スノーホワイツ」を応援しています。

売れないBL小説家の真弓(富山えり子)は、かつて一冊だけBL小説を出版した実績がありますが、その後は鳴かず飛ばず。ついには時代遅れと言われ、出版社からも切られてしまいます。そんなつらい時期に「スノーホワイツ」に出会い、勇気づけられ、ほそぼそと「スノーホワイツ」のBL創作小説をネットにアップし続けているのです。

アイドルという共通点がなければ仲良くすることはなさそうなこの5人が、それぞれの人生を助け合うようになっていくのです。この5人が仲良くなるなんて、オタク趣味がなければ考えられないことですよね。

秀逸なタイトルの意味

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この作品のタイトルは『婚外恋愛に似たもの』ですが、非常に秀逸なタイトルだと思います。例えば、職場などでアイドルが好きと言うと、「でも結婚できないじゃん」みたいなことを言われることがあります。アイドル好きだからといって、即座に恋愛対象や結婚対象に考えているわけではないのに。

他のオタク趣味ではあまりそう言われることはないと思いますが、アイドルという実際に存在しているものが好きだと恋愛ごとや、異性への理想が高いとよく誤解されるんですよね。

でも、このドラマの女性たちは、アイドルへの愛はあります。が、誰一人として、実際の恋愛には結びつけていません。それは「婚外恋愛」ではなく、「似たもの」なんです。

アイドルへの愛の、その微妙な感覚をこのタイトルはすごく的確に表現していると思います。

ドルオタの人はもちろん、そうでない人も推しを見つけたくなる素敵な作品です。ぜひ一度観てみてください。

動画配信サービスのdTVでは、『婚外恋愛に似たもの』の全話が見放題です(2018年8月24日時点)。

構成・文:杉本穂高

編集:アプリオ編集部