Mr.ビーンのあの人がジェームズ・ボンドに? 007のパロディ映画『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』

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スパイ映画と聞いて誰もが思い浮かべるのは、やはり『007』シリーズでしょう。

英国の諜報機関「イギリス秘密情報部(MI6)」で活躍するジェームズ・ボンドを描いた超有名シリーズは、1962年から現在も続く超人気シリーズで、主人公のボンドは格好いい英国紳士の代名詞でもあります。

『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』は、そんな007シリーズのパロディ映画の第2作目。「気休めの報酬」という邦題は、ダニエル・クレイグがボンドを演じた2作目『007/慰めの報酬』をもじったものです。主演は『Mr.ビーン』でお馴染みのローワン・アトキンソン。英国を代表する男のパロディを、同じく英国を代表するコメディ俳優が演じているのがなんとも面白いです。

彼ならではの身体を張ったギャグが満載で、5分に一度は見せ場が訪れるような痛快アクション・コメディです。

イギリス諜報部が東芝に買収された?

イギリスの諜報機関「MI7」所属のジョニー・イングリッシュは、モザンピークの大統領警護の任務を、ハニートラップに引っかかり失敗してクビになってしまったところから物語は始まります。その後、ジョニーはなぜかチベットの山奥で精神修行をしているのですが、そんな折、MI7から復帰要請が届き、ジョニーは喜び勇んでロンドンへと戻ります。

しかし、久しぶりに訪れたMI7は、なぜか日本の東芝に買収されています。なぜ東芝なのかという説明は本編にはまったくないのですが、とにかく「東芝英国情報局」という名称の元、活動しているようです。

ジョニーに与えられた任務は、中国の首相暗殺計画の阻止。情報を提供した人物に近づくも、殺されてしまい、ジョニーは手がかりを求めて助手のタッカーともに捜査に乗り出します。暗殺計画にはボルテックスという暗殺チームが関わっていることを突き止めたジョニーは、そのメンバーの1人と接触するのですが、またしても死なせてしまい、遂には自分が暗殺チームのメンバーだと疑われ、MI7に追いかけられる立場となってしまいます。

勘違いが雪崩のように立て続けに起き、事態を複雑にするばかりのジョニーですが、持ち前の行動力でしのぎながら、真相に近づいていきます。

ジェームズ・ボンドであれば、華麗なアクションと推理力でもっとスタイリッシュに事を運ぶだろうなというところを、ジョニーはむしろシッチャカメッチャカにしてしまうのですが、ローワン・アトキンソンのキャラも手伝ってか憎めない印象になっているのは流石の一言。失敗続きで自らピンチを招き寄せているにもかかわらず、なんとなく事件の真相にも近づいている展開も笑いを誘います。

本家007のようなアクションシーンの見せ場もふんだんにあり、スパイ映画らしいハイテク機器も多数登場します。中でも時速100キロの車椅子でロンドン市街を爆走するチェイスシーンは大きな見どころとなっており、パロディとはいえ非常に大掛かりな作品となっています。

実は007に出演経験があるローワン・アトキンソン

イギリスのコメディといえば、『モンティ・パイソン』など過激でやりたい放題なブラックな笑いが魅力です。本作にもその伝統が受け継がれています。

例えば、ローワン・アトキンソンはナイトの称号を持っていますが、その彼が映画の中でとはいえ、イギリス王女を勘違いでボコボコにしてしまうなど、日本では考えにくいことを平気でやっています。

ローワン・アトキンソンと言えば身体を使ったギャグが秀逸。本作ではしゃべりでも魅せてくれますし、キレのある身体能力ももちろん健在。特に洗脳されたジョニーが操られているところを、拳銃を持った右手を左手で止めるシーンなどは彼じゃないと面白くならないだろうなと思わされます。

ところで、実はローワン・アトキンソンは本家の007シリーズにも出演経験があります。実は彼の映画デビュー作は1983年の007シリーズ『ネバーセイ・ネバーアゲイン』で、バハマの英国大使館駐在員を演じています。

本家の、しかも初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリーが特別に復帰した作品でデビューした彼が、時を経てそのパロディ映画シリーズで人気者になっているというのは、なかなかユーモアの効いた運命だなと思います。

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