一口に「SDカード」といっても、さまざまなメーカーから多種多様な製品が販売されています。
安いからと適当に選んでしまうと、後々「正常に動作しない」「容量が足りない」といったトラブルを引き起こしかねません。逆に、ハイスペックなSDカードを買ったもののスマホでは使いこなせず無駄に高い買い物になってしまった、というのも初心者にありがちな失敗です。
この記事では、SDカードにあまり詳しくない初級ユーザー向けに、スマホ向けSDカードの選び方や必要スペック、おすすめ製品を紹介します。
スマホに最適なSDカードとは?
スマホに最適なSDカードの選び方は後述しますが、手っ取り早く「これを買っておけば大丈夫」という製品が知りたい人には、Transcend(トランセンド)300Sシリーズの64GBもしくは128GBタイプをおすすめします。
64GB | 128GB | |
---|---|---|
価格 | 1290円 | 2200円 |
SDスピードクラス | 10 | 10 |
UHSスピードクラス | 1 | 3 |
UHS規格 | UHS-I | UHS-I |
アプリケーションパフォーマンスクラス | A1 | A1 |
ビデオスピードクラス | - | V30 |
同シリーズは、価格と機能性を両立している高コスパなブランド。抜群の安さでありながら、耐久性や耐熱性に優れ、長く使用できるSDカードです。
このスペックなら、内部ストレージのデータをまるごと保存できますし、高画質動画の撮影や写真の連写なども問題なくこなせます。また、5年保証がついているのも嬉しいポイント。保証期間内に壊れた場合は無償で交換してくれるため、安心して購入できます(保証条件 - トランセンド)。
実際にAmazonで購入したTranscendのSDカードです。手持ちのGalaxy A20、OPPO reno3A、Xperia 5、AQUOS sense 5Gに挿入してみましたが、いずれも問題なく使えました。
ちなみに、Amazonで購入すれば無料で「変換アダプタ(写真右)」が付いてくるので、SDカードスロットがあるデバイス(パソコンなど)にデータを転送する際に便利です。
スマホの機種によっては、64GB・128GBのSDカードに対応しない場合があります。2015年以降に発売されたスマホであれば対応しているものがほとんどですが、念のため説明書やメーカーのサイトなどで仕様を確認してから購入してください(詳しくは後述)。
スマホ用SDカード選び、初心者向け5つのポイント
ここからは、スマホ用のSDカードを買うときに知っておきたいポイントを、初心者向けにわかりやすく解説します。
ポイント1:「microSDカード」を選ぶこと
SDカードは、その大きさ(サイズ)から主に「SDカード」「microSDカード」の2種類に分けられます。現在スマホで使用されるのは、「microSD」カードです。購入する際は、必ずmicroSDカードを買ってください。
上の画像のように、サイズによって適応するデバイスが異なるので購入する際は注意しましょう。
ちなみに、SDカードとmicroSDカードは互換性があります。microSDカードに変換アダプタを付ければ、SDカードとしても利用することも可能です。
ポイント2:自身のスマホの仕様を確認しておくこと
SDカードを選ぶ前に、自分のスマホの取扱説明書やメーカーの公式ページでメモリのスペックを確認してください。
SDカードは容量によって「SD」「SDHC」「SDXC」の3つに分けられ、デバイスごとに対応している規格が異なります。対応していないSDカードを入れた場合、認識されない、もしくは正常に動作しない恐れがあるので注意が必要です。
- SD:最大2GB
- SDHC:2GB超~最大32GB
- SDXC:32GB超~最大2TB
とはいえ、ここ6〜7年で発売されたスマホであれば、全規格(SD・SDHC・SDXC)に対応しているものがほとんどです。32GB〜126GBまでの容量を選択するぶんには、さほど意識しなくても問題ないでしょう。
ただし上述したXperiaでの例のように、最大容量は機種ごとにまちまちです。256GB以上のSDカードを選ぶ場合は、必ず端末の仕様を確認してください。
ポイント3:できれば64GB以上を購入すること
SDカードは、容量が大きければ大きいほどたくさんのデータを保存できます。どの機種で利用するのかにもよりますが、最低でも32GB、できれば64GB以上のものを選ぶことをおすすめします。
容量 | 平均価格 |
---|---|
16GB | 1248円 |
32GB | 1550円 |
64GB | 2562円 |
128GB | 3307円 |
256GB | 5680円 |
512GB | 1万2320円 |
Amazonで販売されている「SanDisk」「Transcend」「キオクシア」「Samsung」のSDカードの価格を参考に編集部で算出
最大の理由は、大容量のSDカードが手頃になっていること。ここ数年でSDカードの値段が大幅に下がり、かつては1万円以上した128GBのSDカードも、現在は3000円程度で購入できるようになっています。
もうひとつの理由は、スマホのカメラ性能が向上していること。3万円台のスマホでも4K動画を撮れるようになった今、一つひとつのファイル容量は肥大化しています。スマホのストレージ容量を圧迫しないためにも、多めの容量を購入するほうが賢明でしょう。
保存できる写真枚数の目安
画質が上がるほど1枚あたりのファイルサイズも大きくなります。高性能カメラを搭載したスマホの場合、多めの容量を選択したほうが安心かもしれません。
500万画素 | 1000万画素 | 1800万画素 | |
---|---|---|---|
8GB(SD) | 5080枚 | 2375枚 | 1200枚 |
16GB(SDHC) | 1万160枚 | 4750枚 | 2400枚 |
32GB(SDHC) | 2万330枚 | 9510枚 | 4810枚 |
64GB(SDXC) | 4万670枚 | 1万9020枚 | 9620枚 |
128GB(SDXC) | 8万1350枚 | 3万8050枚 | 1万9250枚 |
258GB(SDXC) | 16万2710枚 | 7万6100枚 | 3万8510枚 |
512GB(SDXC) | 32万5420枚 | 15万2210枚 | 7万7030枚 |
キオクシアのSDカード紹介ページより引用
保存できる動画の目安
最近発売されたスマホの多くは、フルHD(フルハイビジョン)動画を撮影できます。4K動画対応のスマホも少なくありません。動画を撮影する機会が多い人は、大容量タイプのSDカードだと安心です。
HD動画 | フルHD動画 | 4K動画 | |
---|---|---|---|
8GB(SD) | 1時間20分 | 45分間 | 14分 |
16GB(SDHC) | 2時間40分 | 1時間30分 | 19分 |
32GB(SDHC) | 5時間20分 | 3時間 | 39分 |
64GB(SDXC) | 10時間50分 | 6時間10分 | 1時間18分 |
128GB(SDXC) | 21時間50分 | 12時間20分 | 2時間37分 |
258GB(SDXC) | 43時間40分 | 24時間50分 | 5時間14分 |
512GB(SDXC) | 87時間15分 | 49時間50分 | 10時間29分 |
キオクシアのSDカード紹介ページより引用
保存できる楽曲数の目安
無圧縮のいわゆる「ハイレゾ音源」の場合、1曲あたりかなりの容量を消費します。すべてハイレゾ音源で揃える場合、128GB以上のタイプも検討したほうがいいかもしれません。
圧縮音源 | ハイレゾ音源 | |
---|---|---|
8GB(SD) | 680曲 | 30曲 |
16GB(SDHC) | 1365曲 | 63曲 |
32GB(SDHC) | 2730曲 | 126曲 |
64GB(SDXC) | 5461曲 | 252曲 |
128GB(SDXC) | 1万922曲 | 504曲 |
258GB(SDXC) | 2万2016曲 | 1016曲 |
512GB(SDXC) | 4万3690曲 | 2016曲 |
- 圧縮音源:1曲4分で12MB (AAC-LC/320kbps)
- ハイレゾ音源:1曲4分で260MB (FLAC/96.0kHz/24bit)
WALKMAN®公式ミュージックストア「mora」のダウンロードサイズを参考に算出
ポイント4:スペック面はあまり気にしないこと
容量以外でSDカードを選ぶ指標となるのが、書き込み速度・読み込み速度といったスペック面です。
SDカードの読み書き速度は、表面の「C」や「U」に囲まれた数字、「V」「A」横の数字、またローマ数字(Ⅰ〜Ⅲ)で示されます。ざっくり、記載されている数字が大きいほどデータの保存や読み込みが素早くできる、と考えてもらえればよいでしょう。
スマホ用なら上記3つのマーク(SDスピードクラス・UHSスピードクラス・UHS規格)が確認できれば十分だといえます。高速のSDカードを買ってもスマホではオーバースペックになってしまい、無駄にコストがかかる恐れがあるからです。
かといって、上記3つの記載がないSDカードだと、最新スマホでの動画撮影時にコマ落ちや停止などが起きる可能性があります。また、SDカード自体が少し古い製品(型落ちや在庫処分など)の場合もあるので、避けるのが無難でしょう。
「SDスピードクラス」について詳しくチェック
2006年に策定された、一番古い規格が「SDスピードクラス」です。現在、10GB/秒を満たすことはもはや当たり前になっているため、カードへの記載を省略する製品も多くなっています。
最低書き込み速度 | スピードクラス |
---|---|
10MB/秒 |
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6MB/秒 |
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4MB/秒 |
![]() |
2MB/秒 |
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SDカード書き込み/読み出しの「最低速度」を保証するものです。Cの中にある数字がそのまま1秒間あたりに転送できるデータの大きさを示しており、この数字が大きくなるほど転送速度が速くなります。たとえば「C10」と書かれている場合、そのSDカードは最低でも1秒間に10MBのデータを転送できることが保証されています。
「UHSインターフェース/UHSスピードクラス」について詳しくチェック
カメラの性能が上がるにつれ、高速連写や高画質撮影に対応する速度のSDカードが求められるようになりました。それを受けて2010年に登場したのが、「UHS(Ultra High Speedウルトラハイスピード)」規格です。現状、32GB以上のSDカードのほとんどが「UHS-I」に対応しています。
UHSインターフェイス | UHSスピードクラス | 転送速度(最低) | 転送速度(最大) |
---|---|---|---|
UHS-I |
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30MB/秒 | 104MB/秒 |
![]() |
10MB/秒 | ||
UHS-II |
![]() |
30MB/秒 | 312MB/秒 |
![]() |
10MB/秒 |
※他にUHS-III(624MB/秒)があるが、実際に市場に出回っていないため割愛
大別すると、最高速度を保証する「UHSインターフェイス(バスインターフェーススピード)」と、最低速度を保証する「UHSスピードクラス」から成ります。
前述した「SDスピードクラス」との違いは、デバイス側(スマホ)の適応を前提とした規格であること。たとえば「UHS-I」「U3」の性能があるSDカードでも、スマホ側が「UHS-I」に適応していない限り、上表の速度は出ません。
現状、UHS-Ⅱに対応しているのはデジタル一眼レフカメラの一部のみですが、UHS-Iへの対応を明記するスマホは増えています。UHS-Iに対応しているSDカードを選んでおけば間違いないでしょう。
「ビデオスピードクラス」について詳しくチェック
4Kや8Kといった高解像度映像の撮影が可能になったことで、2016年に「ビデオスピードクラス」規格が策定されました。比較的新しい規格で、対応しているSDカードはあまり多くありません。
SDスピードクラス | UHSスピードクラス | ビデオスピードクラス | 対応動画フォーマット | |
---|---|---|---|---|
90MB/秒 |
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8K/4K/フルHD/HD/スタンダード | ||
60MB/秒 |
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4K/フルHD/HD/スタンダード | ||
30MB/秒 |
![]() |
![]() |
フルHD/HD/スタンダード | |
10MB/秒 |
![]() |
![]() |
![]() |
スタンダード |
6MB/秒 |
![]() |
![]() |
||
4MB/秒 |
![]() |
|||
2MB/秒 |
![]() |
Videoを表すアルファベットVの横にある数字が、そのまま最低保証速度を示します。8Kなら「V90」、4Kなら「V60」、フルHDなら「V30」が目安ですが、あくまで参考です。規格に対応していなくても録画はできます。
最近は4K対応のスマホも増えており、クオリティの高い作品の撮影が可能になっています。動画を撮影する機会が多い人は、少なくともV30以上を目安にするといいでしょう。
「アプリケーションパフォーマンスクラス」について詳しくチェックする
アプリケーションパフォーマンスクラスは、唯一スマートフォン向けのスピード規格です。Aの横に数字をあしらった記号で示されます。
ざっくり言えば、スマホアプリをSDカードに保存したときに快適に操作できる速度を規定したものです。
A1 | A2 | |
---|---|---|
ランダムリード | 1500 IOPS | 4000 IOPS |
ランダムライト | 500 IOPS | 2000 IOPS |
シーケンシャル | 10MB/秒 | 10MB/秒 |
IOPS(Input/Output Per Second)=1秒間に何回のデータ書き込み/読み出しが可能かを表す指標
SDカードはスマホの外部ストレージとして写真や動画・音楽の保存用に使用されますが、一部のAndroidスマホでは、アプリのインストール先にSDカードを指定できる仕様になっています。
通常、SDカードに保存したアプリは起動が遅くなったり、不具合が生じたりといったトラブルが発生しがちですが、A1/A2が記載されたSDカードはデータのやりとりがスムーズであることが保証されているので、アプリを快適に操作できるのです。
しかし2022年2月現在、SDカードへのアプリ移動を標準機能として搭載しているのはGalaxyシリーズなど一部機種に限られます。ほとんどのAndroidスマホにとってはあまり意識する必要のない規格です。
ポイント5:信頼できるメーカー・ブランドの商品を選ぶこと
SDカードは有名メーカーからノーブランドまで膨大な種類が販売されていますが、その品質は本当にピンキリです。
さらに、SDカードは見た目で製品の良し悪しを判断するのが難しく、実際に使ってみるまで本当の品質は分かりません。粗悪品を掴まされないためには、多少高くても信頼できるメーカー・ブランドのSDカードを選ぶのが確実です(後述)。
特に異常な割安価格で大容量・高性能を謳っている商品には要注意。明らかに表記されている容量より少なかったり、転送速度が遅かったりすることが少なくありません。なかには、SDカードの形をしただけのプラスチックが届くケースもあるようです。
また、作りに難がある場合、保存エラーや接触不良などのトラブルを引き起こします。最悪、データが破損・消失するリスクも。大切なスマホデータを守るためにも、信頼できるSDカードを選ぶことが重要です。
具体的には、冒頭で紹介した「Transcend(トランセンド)」、世界シェア/日本国内シェアともに1位を誇る「SanDisk(サンディスク)」、国内唯一のフラッシュメモリ製造・開発メーカー「キオクシア(旧東芝メモリ)」などを選んでおけば間違いないでしょう。
ポイント6:並行輸入品/海外リテール品/バルク品には注意すること
SDカードは製造メーカーも大事ですが「どこで買うか」という点も重要。というのも、Amazonなどの通販サイトでは、まれに有名メーカーの名前を表記しただけの偽造品や粗悪品が紛れ込んでいることがあるのです。
また、これらのサイトを閲覧していて気になるのが「並行輸入品」「海外リテール品(海外パッケージ品)」「バルク品」などと記載された商品。これらは、同じ商品でも価格が安くなる傾向にあります。
- 正規品:メーカーが認めた正規の流通経路で販売する
- 並行輸入品:個人や業者が海外から商品を買い付けて販売する
- 海外リテール品(海外パッケージ品):海外向けにパッケージされた製品。外箱や説明書、保証書の表記はすべて外国語
- バルク品:業務用に大量に仕入れた商品をばらして販売したもの。外箱や説明書、保証書といった付属品がない
「並行輸入品」や「バルク品」「リテール品」として売られていても、SDカード自体には問題がないケースが多いです。ただし「絶対に偽物がない」とも言い切れません。並行輸入品やバルク品を購入する場合は、口コミや評価などをしっかりとチェックした上で購入してください。
また、基本的に「正規品」以外は保証を受けられないと考えたほうがよさそうです。初期不良があったり、すぐ壊れたりしても対応は難しいでしょう。