人はどれだけ年をとってもポジティブに生きられる──映画『最高の人生のつくり方』

人はどれだけ年をとってもポジティブに生きられる──映画『最高の人生のつくり方』

人は誰でも老いるもの。年を取った時にどんな人生を送りたいか、誰と過ごしたいかを考えるのは大切なことです。高齢化社会を迎えている日本にとってそれは、個人の問題を超えて社会全体の課題と言っていいのかもしれません。

長年ハリウッドでトップスターとして活躍してきたマイケル・ダグラスとダイアン・キートン主演の『最高の人生のつくり方』は、年のとり方や老後を迎えた時の人生の過ごし方について、とても考えさせられる映画。

人生には失敗がつきものであり、人間60歳代にもなれば、後悔もたくさん抱えているでしょう。そんな人生でもやり直せるチャンスは訪れるし、人はいくつになっても夢を持って生きられることを爽やかに描いた感動作です。

心を閉ざした男と夢を見続ける女

偏屈な性格のオーレン(マイケル・ダグラス)は、敏腕不動産エージェントとして長年活躍してきましたが、妻を亡くして以来、1人で生活しています。息子とは疎遠になり、長年住んだ豪邸を売りに出して今は自分の所有するアパートに暮らしています。隣に住むリア(ダイアン・キートン)や、上の階に住む家族に悪態をつくこともしばしば。アパートの住民も彼のことを煙たがっています。

そんなある日、音信不通だった息子が突然彼の前に現れ、9歳の孫のサラを預かってほしいと頼まれます。存在さえ知らなかった孫との共同生活にオーレンは途方に暮れながらも、リアの助けを借りて3人での奇妙な共同生活が始まります。

最初はサラをやっかいに思って母親を探し出して預けようとしていたオーレンですが、薬物依存に苦しむ母親を観て面倒を見ることを決意。妻を亡くして以来、誰にも心を開かなかったオーレンは、サラだけでなく、リアや周囲の人間とも打ち解けるようになっていきます。

そしてリアもまた、夫を亡くしています。彼女はかつて夫とともに俳優になる夢を追いかけていましたが、1人になってからは歌手になろうとがんばっています。オーレンはそんな彼女の夢を後押しすることを決めます。そして縁を切ってしまっていた息子との関係も見直すことにするのです。

リアは年をとってから新たな夢を見つけたわけですが、人生をやり直そうとする彼女と接していくうちにオーレンもまた、自分の人生を見つめ直します。そんな風にお互いに良い影響を与えるようになった2人は人生のパートナーになっていくのです。

年を取るほど魅力が増し続ける2人の名優

主演のマイケル・ダグラスは1944年生まれで現在74歳、ダイアン・キートンは1946年生まれの72歳。2人とも年齢を感じさせないエネルギッシュさに満ちています。

マイケル・ダグラスはダンディな男らしさに溢れているし、ダイアン・キートンは本当にチャーミング。2人とも本当に理想的な年のとり方をしているなと感じさせます。リアが歌手にオーディションに行くシーンでは、普段と違う若々しい黒の水玉模様のスカートを着て臨むのですが、まったく違和感はなく、すごく似合っています。

ダイアン・キートンは「いくつになっても学習することはできる」と語っており(「VOGUE」より)、演技以外にも写真や建築などにも詳しく、興味のあることはなんでも前向きに取り組むことを信条にしています。そんな彼女自身のパーソナリティが、この映画の役柄にも影響を与えているように思えます。

人生はいくつになってもやり直せるし、夢を追うことだってできる。この映画の2人は、映画を観るすべての人をそうやって励ましてくれているかのようです。この映画を観ると、年を取ることは決して怖いことじゃないと思えてきますね。

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構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部