愛は偽りの関係から生まれる? スパイの恋愛描いた2大スター共演の映画『マリアンヌ』

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「嘘から出た真」という言い方があります。嘘だったはずのことがいつの間にか本当のことになってしまう。この映画にぴったりの言葉です。

『マリアンヌ』は、ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの2大スター共演のラブロマンス映画です。しかし、ただ甘く官能的なだけでなく、スリリングな愛の物語でもあります。第二次大戦中、スパイとして出会った2人は偽の夫婦を演じるうちに愛が芽生えますが、その愛は果たして本物なのか、最後まで手に汗握る展開で観る人の目を釘付けにさせる作品。

スパイという職業と、夫婦という関係の中で揺れ動く2人の熱演が心に響く珠玉のラブストーリーです。

偽の夫婦から本物の夫婦へ

1942年、第二次大戦中にモロッコのカサブランカに送られたカナダ人工作員のマックス(ブラッド・ピット)は、フランス人工作員のマリアンヌ(マリオン・コティヤール)と偽の夫婦になりすまします。彼らの任務はドイツ大使の暗殺。お互い初見にもかかわらず仲睦まじい夫婦を見事に演じてみせ、大使館で開かれるパーティーに招待されることに成功します。命がけの任務に挑んだ2人には、やがて本当の愛が芽生え、ロンドンで本当の夫婦となり、子どもも授かります。

幸せな家庭生活を築く2人ですが、ある日マックスは軍部に呼び出され、衝撃的な通達を受けます。なんと妻のマリアンヌに二重スパイの疑いがあるとのことで、マックスに始末をつけろと告げられるのです。妻の愛を信じて疑わないマックスはマリアンヌの素性を知ろうと奔走しますが、彼女の過去を知る人間を辿り、真実に迫るにつれ、自分の信じてきたものに自信がなくなってきます。

スパイとして偽の夫婦を演じるうちに愛が芽生え、本物の夫婦となるわけですが、その後にスパイ容疑が浮上してくるのが本作の物語のポイントで、夫はすでに本物の夫婦になったと信じているのに、妻のほうはもしかして違うのかもしれない、観客の興味をそこに集中させ、最後までハラハラさせる展開が見事。男女の愛は、ただでさえ互いに本心を知るのが大変なのに、こうした状況ではさらに混沌としていきますね。

カサブランカでの任務中、スパイとして振る舞う秘訣をマリアンヌは「気持ちは偽らないこと」と言っているのが印象的です。任務であっても気持ちは本物であればそう簡単にはばれない、ということは自分への愛は本物でも本当に彼女は二重スパイなのかもしれない。マックスは彼女の愛が本物かどうかだけでなく、スパイではないことの証明をしなければいけないのです。

名作『カサブランカ』の引用がたくさん

この映画は、モロッコのカサブランカから始まるのですが、カサブランカで恋愛と言えばハンフリー・ボガートとイングリット・バーグマン主演の名作『カサブランカ』(1942年)です。本作には衣装や小道具、ロケーションなど『カサブランカ』を意識しているであろうものがたくさん出てきます。

最も重要なのは『ラ・マルセイエーズ』という歌に関するエピソードでしょう。フランスの国家として有名な曲ですが、『カサブランカ』では酒場で合唱するシーンが有名です。本作ではこの曲がマリアンヌの存在を示す重要な要素になっています。

「嘘から出た真」の物語として、これほど見事な作品はなかなかないかもしれません。愛とはそもそも不確かなもの。信じなければ愛は育ちません。信じるためのハードルがあればあるほど愛も強くなる。2人の愛は嘘から始まり、その後も嘘がまとまり続けるのですが、それ故に本物の愛なのです。

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