大杉漣さん率いる名脇役6人のおちゃめなおじさん合宿──ドラマ『バイプレイヤーズ』

大杉漣さん率いる名脇役6人のおちゃめなおじさん合宿──ドラマ『バイプレイヤーズ』

「俺さ、今事件3つ追ってるからわけわかんなくなっちゃうんだよね」「刑事もの多いとね~」「俺も3つ。犯人と被害者の父親役」「俺は3つなんだけど、先週殉職やってるから2つになっちゃったの!」

超有名な強面達の緩い役者トーク。カッコイイおじさん達の格好つけない姿に脱帽です。

ドラマ『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』は、日本の演劇界を支える名脇役、遠藤憲一・大杉漣・田口トモロヲ・寺島進・松重豊・光石研の6人が館山で共同生活をする様を描いた、おじさん版『テラスハウス』。

俳優が自分自身を演じる面白さと、お互いを「ちゃん」付けで呼び合う仲良し名優達の絶妙な渋い笑いは、放送終了後に「バイプレロス」なる喪失感さえ生み出しました。テレ東のこだわりがギュッと詰まった、大人による大人のための傑作コメディーです。

とにかく豪華すぎるハウスメート。渋さと笑いが共存する、またとない共同生活

バイプレイヤーズ 見逃し 動画配信

「バイプレイヤー」とは、映画やドラマの脇役の事。ただの脇役ではなく、主役と渡り合える程の存在感を発揮する名脇役のことを指します。

ある日、中国の動画配信サイトが制作する『七人の侍』リメイク作品への出演依頼を受けた6人。巨額の制作費に破格のギャラ、監督は中国映画界の巨匠・張芸謀(チャン・イーモウ)で主演は尊敬する役所広司。滅多にない内容のオファーに、当初乗り気じゃない6人も出演を決意します。

ところが、6人を待っていたのは一風変わった出演条件。「クランクインまでの三ヵ月はこのシェアハウスで暮らし、他現場へもここから行くこと」。

「家事できる?」「俺、ぜんっぜんできない……」。館山にある大杉漣の別荘で始まった男だらけの不慣れな共同生活。終始和やかな雰囲気の中に、どこか微妙なくすぶりを感じさせる6人には、10年前『バイプレイヤーズ』という映画での共演中に意見の衝突を起こし、撮影を中断させてしまった苦い経験がありました。

そんな中、遅れて合流するはずの役所広司に映画出演の話が通っていないことが判明。意気消沈する6人でしたが、リーダーである大杉の、芝居やメンバーの一人ひとりに対する熱い思いを知った5人は、シェアハウスでの共同生活を続行することに。

一方、暗室で監視カメラの映像をチェックしながら「ようやく全員揃ったか。この中に裏切り者がいる」と一人呟く大杉。彼はなぜ5人を監視しているのか。闇に葬られた映画『バイプレイヤーズ』の事の真相とは。主演不在の6人の共同生活は今後どうなっていくのでしょうか。

見どころはそれぞれの芝居愛と、笑いの中にある温かい本音

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「俺、主役やってるよ!」「テレ東だろ~」「あんたBSだろ!」と、とにかく役者漫才さながらの会話劇にニヤニヤが止まりません。

中年同士、なぜかのプレゼント交換。全員高校の制服を着てのプロモーションビデオ撮影。皆が揃っては、やたらスイーツを食べる。「渋い役者陣がこれやったら面白いよね」というシーンのオンパレードでありながら、さすがはバイプレイヤーズ。彼らの功績を顧みると、いくらふざけていてもやっぱりカッコイイのです。

寺島進は会話の語尾がすべて「てめえコノヤロー!」だったり、遠藤憲一は顔は怖いけど実は繊細で傷つきやすかったり、世間の役者に対するイメージを本人自身が演じるユニークな試み。

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その中でも印象的だったのは、2018年2月21日に急逝した大杉漣さんの第3話でのセリフ。「こうやって40何年ってやってこれたのはさ、支えっていうか、カミさんだったりあとはスタッフだったり共演者だったりって、いろんな方の支えがあってさ。それはすごい感謝の気持ちがないといけないな、と」。

光石研の女癖をたしなめるこのシーンで、演技とは思えない本人の自然な発話が、そこだけまるでドキュメンタリー映像のように見えます。

さらに、役所広司はじめ、池松壮亮、滝藤賢一、野村周平、竹中直人など、毎話異なる豪華なゲストも全員自分自身を演じており、ゲストとレギュラー陣との絡みにも注目です。

本編終了後、その回のテーマについて全員が飲みながら素で語り合う「バイプレトーク」は必見。「共演NG」「かぶる」「ラブシーン」など、ここでしか聞くことのできない本音トークに加えて、知り合いの俳優にその場で電話をしてしまう、などのイレギュラーな演出も見逃せません。

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好評だった本作に引き続き、第2弾となる『バイプレイヤーズ ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』は、寺島進を除く5人が、テレビ東京の朝ドラ『しまっこさん』撮影の為訪れた無人島でサバイバル生活を余儀なくされるという、再び前代未聞な設定。

この作品の撮影中に急性心不全で亡くなった大杉漣さん。テレビ東京の「代わりを探すという議論はありえません」という社長直々の会見に、役者大杉漣の存在の大きさを改めて感じさせられました。

名実ともにリーダーとして作品をまとめ上げた大杉さんに、キャスト・スタッフ全員がぴったり寄り添った、何度見ても味のあるドラマです。

動画配信サービスのHulu(フールー)とでは、『バイプレイヤーズ』の全話が見放題です(2018年8月1日時点)。