愛国者だった青年はなぜ米国政府に背いたのか、映画『スノーデン』が描く驚愕の監視社会

愛国者だった青年はなぜ米国政府に背いたのか、映画『スノーデン』が描く驚愕の監視社会

ジョージ・オーウェルの小説『1984』は国家が国民を監視し、検閲する究極のディストピアの未来を描いた小説として今日も有名な作品です。

そんな国家による国民の監視が現実のものになっていることを知らしめたのが、2013年の「スノーデン事件」です。映画『スノーデン』は、その中心人物であるエドワード・スノーデンの半生を描いた作品です。

映画は、保守的な愛国者だったスノーデンが、なぜアメリカ政府に反旗を翻し、アメリカ国家安全保障局(NSA)の実態を暴露するに至ったのかがよくわかる内容になっています。さらに、恋人リンゼイとの関係の変化を通じて、生身のスノーデンがどんな人物だったのかに迫っています。

アメリカ政府による個人情報収集の恐るべき実態を映画は赤裸々に見せており、ネットワーク社会の恐怖をまざまざと突きつけてきます。まさにすべての行動が筒抜けになっており、『1984』のディストピアが現実になっていることに気づかされます。

メールもメッセンジャーも電話も筒抜け

エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、保守的な愛国者でした。9.11の後、対テロ戦争へとアメリカ社会が傾く中、スノーデンはアメリカ軍に志願入隊しています。祖国と自由のために戦う意欲が強かったスノーデンですが、両足骨折の重症を追い除隊を余儀なくされます。

それでも国家を守ることに貢献したいと願う彼は、コンピュータの知識を活かしてCIA職員として雇用されます。しかし、ジュネーブや日本での勤務を経て、彼はCIAやNSAの国民監視の実態を見て驚愕することになります。NSAは裁判所命令なしで個人のメールや電話、フェイスブックのメッセンジャーに至るまで、自由に閲覧できてしまうシステムを持っており、プライベートな領域で書かれた大統領への暴言なども読めてしまうという事実を知ってしまうのです。それどころか、オフになっているPCのカメラを遠隔でオンにして操作することも可能で、国民のプライバシーが丸裸である実態に慄きます。

それらはすべてテロを未然に防ぐという名目で行われているものでした。愛国者であるスノーデンはそのことに理解を示しながらも、どう考えてもテロリストではない人物の情報まで収集している政府のやり方に疑問を待ち始めます。やがて、彼は体調を崩すようになり、気候の良いハワイのNSAの拠点に移ることになるのですが、そこで彼は自らが作成したシステムが爆撃に利用されていることを知り、恋人のリンゼイすら上司に監視されている事実を目の当たりにし、告発する決意を固めるのです。

スノーデンは、ジャーナリストにコンタクトを取り、情報を持ち出して香港のホテルで秘密裏に落ち合います。そこから世界を震撼させた情報が明らかにされたのです。

どこにでもいる青年だったスノーデン

スノーデンが恋人のリンゼイと出会ったのは、出会い系サイトがきっかけ。押井守の『ゴースト・イン・ザ・シェル』が好きだというメッセージのやり取りから2人の恋は始まります。

少し前にイーロン・マスクが『君の名は。』が好きだというツイートにスノーデンが反応して、『言の葉の庭』が最高だ、と返しているのが話題になりましたが、スノーデンは日本のアニメや漫画が大好きなのです。日本語にも精通しており、日本勤務を希望したのもアニメ好きで日本に住んでみたかったというのが理由のようです。

映画は、そんな彼の人となりがわかる作品となっており、等身大のスノーデンを実感できる内容です。天才的な頭脳を持っているけれど、本当にどこにでもいそうなオタク青年で、そんな人が世界を変えようと1人でアメリカ政府に戦いをいどんだのかと思うと感慨深いものがあります。

スノーデンは、ごく普通の、当たり前の神経を持った青年です。仕事で監視されている国民を見すぎて、カメラ恐怖症になってしまったというエピソードも出てくるのですが、それほどNSAによるプライバシーの侵害は常軌を逸しており、守秘義務もある中で恋人のリンゼイにもすべての事情を話せないことなど、様々な要因でスノーデンの私生活はボロボロになっていきます。

そして、彼は素朴な愛国者でした。しかし、政府の実態を見て彼は告発する意思を固めるのですが、愛国精神に変わりはないのです。いえ、真の愛国者だからこそ、この間違った行為が許せなかったのでしょう。

スノーデンに関する映画は、本作の他にも『シチズンフォー スノーデンの暴露』というドキュメンタリー映画があります。こちらは、本作にも登場する、香港でスノーデンから情報を受け取ったジャーナリストのローラ・ポイトラスが監督で、スノーデンと香港のホテルで接触していた時の映像を基に作られています。実際にスノーデンが情報を暴露した瞬間を収めた大変貴重な作品で、本作と合わせて観ると、スノーデン事件についてより理解が深まるでしょう。

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構成・文:杉本穂高

編集:アプリオ編集部