「ザテレビジョンドラマアカデミー賞」で6冠達成、最終回目前にはツイッターで2週連続「世界トレンド」1位を獲得するなど、大反響を巻き起こしたドラマ『おっさんずラブ』。このタイトルに惹かれる人も、そうではない人も、単純な好奇心や嫌悪感を超えた一歩先の次元で作られたこの作品は、私たちをいい意味で裏切る展開が待ち受けています。
尊敬する上司から突然の告白を受け、さらにはイケメンの後輩からも思いを寄せられてしまう、異例のモテ期を迎えたサラリーマン・春田創一(田中圭)。その想定外すぎる恋の物語には、「最高しか出てこない」「気づけばイッキ見」など、放送終了後もネット上に熱い声があがっています。
人望があってダンディで仕事もできる。そして、ずっと春田に片思いの上司・黒澤武蔵を演じるのはベテラン俳優・吉田鋼太郎。第1話でほとばしる思いを告白した黒澤は、春田の返事を待たずに突っ走ってしまったり、手作りのお弁当を持ってきたり、やることなすことすべてが乙女チック。吉田鋼太郎の貫禄あるルックスとかわいいふるまいとのギャップは、冒頭からもはや不意打ちにあったような面白さです。
そして、このドラマを牽引したのはなんと言っても「はるたん」こと、春田を演じた田中圭。「春田は基本みんなのことが好きなんです」。田中圭自身もそうコメントしている通り、ドラマを観ていると春田は自分が愛されるのと同じ熱量で、周りにいる人のことがひたすら好きなことがよくわかります。
主演男優賞は田中圭! 続編の鍵は貴島Pのゴーサインと『好きになった気持ちのその先』(NewsWalker)
「好きならいいじゃん」。ズバリそう言いたい。これまでにないほど純粋なラブストーリーです。
春田とおっさん達の切なくてオトナな恋の行方
日々合コンに励むもまったくモテない33歳、不動産会社勤務の春田創一。ある日、彼が勤める営業所にイケメンの後輩・牧凌太(林遣都)が異動してきます。部長の黒澤に自分のパソコンから必要な資料を牧に提供するよう指示を受けた春田。そこで彼が見たものは、上司のパソコンに大量に保存された自分の隠し撮り写真。
「え?え?なんだこれ、嘘だろ……」。動揺する春田の元に黒澤がやって来ます。「見た?見たよね?っていうか何を?」とグイグイ迫ってくる黒澤に挙動不審になってしまう春田。その傍ら、後輩の牧は真面目一貫で、春田に付いて懸命に現場の仕事を覚えようとしています。
30歳を過ぎて実家暮らし、自分のことは何もできない春田。愛想を尽かした母親にも家出されてしまった彼は、異動したばかりで住まいが落ち着かない牧にルームシェアを提案します。掃除・洗濯・炊事、すべてを完璧にこなす牧と楽しく共同生活を送る中、突然黒澤に呼び出された春田。バラの花束を手にして現れた黒澤が放った言葉はなんと、「はるたんが、好きでーす!!!!」。
さらに、混乱する春田に牧が投げかけたのは「好きだ。春田さんが巨乳好きなの知ってます。巨根じゃだめですか」という信じられない一言。希望していたのとはだいぶテイストの違う恋に動揺しまくる春田ですが……。
はるたん、だけじゃない。ナイスキャラな登場人物達
はるたんの短所といえば「可愛すぎる。存在が罪」としか思いつけない黒澤部長。ずっと好きだったのに思いをひた隠しにしてきた切ない表情や、はるたんが笑った時に見せる本当に嬉しそうな笑顔、はるたんに毛筆でラブレターを書いてしまうあたりもなんとも言えません。
さらに、思い切ってした告白もジョークだと嘘をつき、春田のために度々身を引こうとする献身的な牧にも注目です。春田に「男同士でキスとか、マジでねーから!」と断言された時に見せる笑いながらの悲しい目も印象的。そして、春田の幼なじみ・ちず(内田理央)と春田の微妙な関係や、第3の男の存在、黒澤の妻・蝶子が夫の真実と向き合う姿も気になるところ。
なんと言ってもこのドラマの「視聴熱」を支える要因は、嫌な奴がいないことです。個性の強いキャラクター揃いですが、嫉妬や自己満足のために誰かが誰かを貶めることが絶対にない安心感は、全話を見終わった後に心がほわっと温かくなります。
見えない壁やルールに疲れた日常からほんの少し開放してくれる、たくさんの「好き」が詰まったハートフル・コメディです。
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