猫になって人生の大切なことに気づく、『メン・イン・キャット』は可愛いだけの映画じゃない

猫になって人生の大切なことに気づく、『メン・イン・キャット』は可愛いだけの映画じゃない

猫は可愛いですよね。ネットでも猫の動画や写真は大人気です。

そんな猫人気は映画業界にも波及していて、近年、猫をフィーチャーした作品がいくつか製作されています。そんな中でも本作『メン・イン・キャット』は有名監督と、一流の俳優を起用したメジャーなハリウッド作品です。

猫嫌いの実業家が、ひょんなことから猫と心が入れ替わってしまい、家族と暮らすことになるのですが、人間だった時には家族を顧みずにいたことを猫になって思い知らされ、家族への愛を深めるという物語。ケビン・スペイシーやクリストファー・ウォーケンといった名優が出演しており、可愛い猫と渋いおじさんのギャップを楽しめる作品です。

名優ケビン・スペイシーが猫役に挑戦?

一代で財産を築いた実業家のトム・ブランド(ケビン・スペイシー)は仕事一筋に生きており、いつも家族との約束は二の次。彼は、街で最も高いビルの建設に情熱を燃やしており、会社の部下や役員を振り回しています。

ある日、娘に誕生日プレゼントとして猫が欲しいとせがまれ、猫嫌いのトムはイヤイヤながらもペットショップに向かいます。彼は怪しげなペットショップ「パーキンス」に立ち寄り、そこの主人(クリストファー・ウォーケン)に一匹の猫を勧められます。

その帰り道、トムは部下にビルの屋上に呼び出され、会社の乗っ取りを企む部下に転落させられそうになります。一命はとりとめたものの、意識不明の重体となってしまうのですが、目覚めた時、彼は自分が猫の身体になってしまっていることに気が付きます。

病院には、なぜか先ほどのペットショップの主人もおり、彼だけはトムの身に何が起きたか知っている様子。しかし、トムには元に戻る方法はわからず、家族の元に猫の姿で戻ることになります。

トムはなんとか自分のことを伝えようとしますが、しゃべることもできないので伝わるはずもありません。電話帳を破いたり、マジックペンでメモを書こうとしてみたり、挙句の果てには、スコッチを飲んだりとおよそ猫らしくない行動を取り、妻にも不審がられます。

しかし、トムは今まで仕事一筋で、娘や妻に寂しい想いをさせてきたことに、猫になって初めて気づくのです。家族を幸せにするにはどうすればいいのか、トムは考え始めます。

一方、会社では自分のいない間に、部下がビルの増築を潰し、会社を乗っ取ろうと画策しています。前妻との間にできた息子のデヴィッドは、なんとかそれを阻止しようとしますが、トムも猫の姿のままでもできることを考え、行動し始めます。

猫の姿になった後のトムの心の声は、ケビン・スペイシーがそのまま演じており、可愛い猫の姿からおじさんの声がするという、非常にシュールな光景になっています。物語の主軸は、家族の絆の大切さというオーソドックスなものですが、猫になってみたり、クリストファー・ウォーケン演じるペットショップの主人が猫と会話できたり、奇想天外な発想で描いています。

猫には9つの命がある

この映画の原題は「Nine Lives」。これは英語のことわざ「猫には9つの命がある」から取られており、猫はそう簡単には死なないという意で用いられます。それに対応することわざとして「好奇心は猫を殺す」があります。そう簡単に死なない猫でも、好奇心で首を突っ込みすぎると生命を落とすこともあるという意味で、不用心な好奇心は身を滅ぼすことの隠喩として用いられます。

猫は、古来から人間の側で暮らしてきましたが、気ままな性格もあってか不思議な生き物として語られることが多い動物です。西洋では魔女の使い魔としてのイメージもありますし、日本には化け猫の伝承などもあります。このことわざもそういう猫のイメージに連なる物があるように思います。その他、輪廻転生を繰り返す猫を描いた佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』などもありますね。

この映画も、猫のそんな不思議なイメージを下敷きにした作品と言えるでしょう。この映画を観ると、身近な猫という動物を見る目が変わるかもしれませんよ。

動画配信サービスの「Amazonプライム・ビデオ」では、『メン・イン・キャット』が見放題です(2019年7月14日時点)。

構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部