イーロン・マスクの買収でTwitterに何が起きる?

「言論の自由」のために何をするか

2022年4月25日(米国時間)に、Twitter社がイーロン・マスク氏による買収提案を受け入れて最終合意にいたったとの発表がありました。マスク氏はTwitter社のすべての株式を取得するため、買収手続き完了後にTwitter社は非公開化されます。マスク氏はかねてよりTwitterのあり方について、数々のコメントを残しており、今回の買収の発表にも今後取り組みたい内容をコメントとして発表しています。

それらのコメントから、マスク氏によるTwitter改革の方向を、可能な範囲で予測します。

Twitterによるアカウント凍結や投稿規制の緩和

マスク氏は、「言論の自由」を重視していることを繰り返し強調しており、Twitterに対してはアカウントの凍結や投稿規制などの措置を踏まえて「言論の自由を守れていない」として批判をおこなってきました。たとえば、2021年1月にドナルド・トランプ前米国大統領のTwitterアカウントが凍結された際も、企業が言論の自由のジャッジをおこなうことに懸念を示すツイートを投稿しています。

また、マスク氏自身に対して厳しい内容を言う批評家にも「Twitter上に残ってほしい」としており、あらゆる意見を「言論の自由」のもとに認めたい考えを示しています。

Twitterで凍結の対象となっているアカウントには、スパムアカウントやセキュリティに問題のあるアカウント(乗っ取り被害など)以外にも、攻撃的なツイートや行動でTwitterルールに抵触するとされたアカウントも含まれます。マスク氏は、Twitterルールに基づくツイート監視・規制を緩和することで、一方向の意見だけでなく多様な意見の入り乱れる「言論の自由」の場を実現させたいものとみられます。

ただし、「言論の自由」と差別やヘイトクライムが紙一重であるのも事実です。Twitterによるモデレーションが弱くなった結果、Twitterが人種やマイノリティへの差別が公然とおこなわれる場になってしまうことだけは避けなければなりません。

スパムや詐欺ボットの排除

Twitter上に無数に存在するスパムボットや詐欺ボットについて、マスク氏は最も迷惑な問題と断言しており、スパムボットへの苛立ちをさまざまなインタビューやツイートで明らかにしています。Twitterによる買収合意のプレスリリースに掲載されているマスク氏のコメントでも、今後取り組みたい内容にスパムボットの排除が取り上げられています。

ただ、Twitter上のボットはすべてがスパムボットや詐欺ボットというわけではなく、有益な情報をもたらしてくれるボットも数多くあります。実際にTwitterは、ボットの信頼性を担保するために「Goodbots」機能を追加し、ボットアカウントのプロフィールからボット作成者の情報が確認できるようになっています。

どのような手法をとるかは不明ですが、スパムボットや詐欺ボットと、有益なボットを区別して排除する機能の開発を早期に進めるものとみられます。マスク氏は、人間の操作するアカウントによる発言への寛容さに反して、悪質なボットに対しては存在さえも許さない厳しい立場を表明しています。

Twitterのアルゴリズムのオープンソース化

Twitterのタイムラインでは、新着順にツイートを閲覧できる「最新」表示と、ユーザーの関心度が高いと判断されたツイートが優先的に表示される「ホーム」表示を用意しています。Twitterは、おすすめツイートを優先表示する「ホーム」表示のエンゲージメントの高さを重視しており、これまでもユーザーに「ホーム」表示を使わせようとデザインの変更などを実施してきた経緯があります。

一方でマスク氏は、「言論の自由」を担保したい立場から、ツイートがどのような機序で優先的に表示されるよう評価されているのか、または評価されていないのかという点を、アルゴリズムをオープンソースとすることで明らかにする必要があるとしています。アルゴリズムのオープンソース化についても、買収合意時のコメントで述べているため、マスク氏の中でも優先順位の高いタスクであるものとみられます。

EDITED BY
TOKIWA