「私は、お金に勝ちたいんです」。幼い頃、お金と男に苦労する母の背中を見て育った主人公・原口元子(武井咲)は、まさにお金を支配するが如く銀座の街を翻弄し、また翻弄されていきます。
これまで何度も映像化されてきた、松本清張原作の『黒革の手帖』。一世一代の悪女がもつ強さと弱さ、お金を取り巻く人間模様と愛の形、銀座で飛び交う会話の妙味──見始めたら止まらない最高の悪女エンターテインメントは、キャストや微妙な設定が変わるごとに、さらに面白さを増幅させています。
お金が重要なテーマとして扱われているように見えて、主人公の眼差しから「あなたはどう生きるのか」と真っ直ぐに問いかけられているような気持ちにさせられる本作。元子の問いに、あなたはどう答えるのでしょう。
元子の執念と見事なセリフ回しに注目
原口元子は、昼は銀行の派遣社員として働く一方、夜は銀座でホステスをし、亡くなった母が残した父の借金を返済し続けます。
銀行で、脱税目的に用意された借名口座のリストを密かに「黒革の手帖」に記録していた元子は、上司をゆすって1億8千万円を横領。銀座にクラブ「カルネ」をオープンさせます。
注目の若いママの周りに政財界の大物、医者、理事長といった裕福ながら脛に傷を持つ面々が集います。凄まじい執念の元、「黒革の手帖」を切り札に次々と邪魔者を排除し、大金を手にのし上がっていく元子ですが、裏切った連中の恨みや予期せぬトラブルに弱さを見せる場面も……。
果たして元子は本当に自分自身の夢である「銀座で一番のママ」になれるのでしょうか。
武井咲が新境地ながら迫力満点に演じている主人公の野望に対する執念と、心を許した相手にふと見せる本音の部分。セリフと表情から伝わる元子の強さと弱さは人間の本質を映すと同時に、思わず「自分が元子ならどうする!?」とハラハラドキドキしてしまう視聴者も多いでしょう。
豪華俳優陣が演じる銀座の人々のキャラクターも見どころの一つ。主人公の元同僚・山田波子(仲里依紗)や元上司・村井亨(滝藤賢一)の迫力もさることながら、元子が心を寄せる衆議院議員秘書・安島富夫(江口洋介)の動向も目が離せません。
また、セリフに見る夜の銀座特有の会話の流れ、特にしつこく口説く男性を上手にあしらうママの会話術は必見です。
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