iPhoneで容量を増やす方法のひとつに「外付けストレージ」の利用が挙げられます。写真や動画、音楽などのデータをSDカードやUSBメモリといった外部ストレージに移行して、iPhoneの容量不足を解消するというものです。
しかし、「iCloud」や「Googleフォト」といったオンラインストレージが主流となっている現在、わざわざ「外付けストレージ」を利用する価値はあるのでしょうか。
iPhone用の外付けストレージを購入するかどうか迷っている人向けに、そのメリット・デメリットや、具体的なおすすめ製品を紹介します。
外付けストレージとは?
iPhoneにはじめから内蔵されている記憶領域が「内部ストレージ」であるのに対して、「外付けストレージ(外部ストレージ)」は、iPhoneに取りつけて使う記憶媒体のことを指します。
一方、iCloudやGoogleドライブなどインターネット上にデータを保存しておけるサービスを「クラウドストレージ(オンラインストレージ)」と呼びます。
iPhone向け外付けストレージの種類
iPhone向けの外部ストレージは、大きく分けて「Lightningコネクタで接続するタイプ(コネクタ型)」と「Wi-Fiを利用するタイプ(ネットワーク型)」の2種類があります。

左:Lightningコネクタに差し込みデータを転送するタイプ、右:Wi-Fi通信でデータを転送するタイプ
ネットワーク型の製品の多くはモバイルバッテリーのような外観をしており、利用するには充電が必要です。500GB〜数TBの大容量を備えている物が多く、コネクタ型よりも価格は少し高い傾向にあります。

左:ストレージを内蔵しない 接続専用のリーダータイプ、右:USBメモリなどのストレージを搭載したタイプ
コネクタ型の製品は、さらに「ストレージ内蔵型」と「リーダー型」の2つに分けられます。ストレージ内蔵型の多くはUSBメモリとLightningコネクタが一体になっており、写真(右)のような形状をしています。
一方、リーダー型は接続専用なので、SDカードやUSBメモリなどの記憶媒体を別途購入する必要があります。ストレージを内蔵していない分、他のタイプよりも価格は安めです。
汎用性の高い「SDカードリーダー」がおすすめ
iPhoneで外付けストレージはさまざまなタイプがありますが、筆者は「SDカードリーダー」と「SDカード」を組み合わせをおすすめします。
- 他デバイスとのデータ共有がしやすい
- Wi-Fiタイプ/メモリ内蔵タイプよりコストが低め
- 標準の「ファイル」アプリ経由でデータを転送できる
- コンパクトでかさばらない
SDカードは多種多様なデバイスに対応した、非常に汎用性の高い記録媒体です。
SDカードひとつあれば、Androidスマホ/パソコン/デジカメ/プリンター/ドローン/ニンテンドースイッチなど互換性のあるさまざまなデバイスで利用できます。コンパクトなので、保管にも場所を取りません。
ストレージを内蔵していない分、価格も他のタイプより手頃です。また、Wi-Fiタイプやストレージ内蔵タイプは、規定の容量を使い切ったらそれ自体を買い換えなければなりませんが、SDカードリーダーなら中身のSDカードを交換すればいつまでも使い続けられます。
SDカード自体は128GBで3000円程度ですし、ランニングコストもそこまで高くないでしょう。

Apple純正のLightning SDカードリーダー
SDカードリーダーは、税込3850円のApple純正品から1000円〜2000円程度の非純正品までさまざまなものが販売されています。
筆者の検証では非純正品も使えないことはありませんでしたが、やはり動作の安定性や書き込み速度に不安が残ります。安全性や確実性を考えるとApple純正品、もしくはMFi認証品のSDカードリーダーの購入をおすすめします。
「PhotoFast CR-8710+」はAppleの正規MFi認証を取得し、最大512GBのSDカードに対応するSDカードリーダー(外部ストレージ)です。
画像や動画ファイルからOffice系の拡張子、PDFファイルまで対応するほか、デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラのRAWデータの読み込みもサポートします。ただしカタログスペック上、iPhone Xまで、iOS 9〜11までの対応となっている製品です。
AppleのMFI認証済みで、鮮やかなオレンジが目を引くSDカードリーダー(microSDのみ対応)です。USB-AとLightningの両端子を搭載しており、iPhoneだけでなく、Windows PCでも利用できます。
iOSデバイスにおける読み込み・書き込み速度は最大でそれぞれ35MB/sと15MB/s。PCにおける読み込み・書き込み速度は最大 80MB/s と35MB/sで、スピード転送に対応。スペック上、iPhone Xまでのサポートとなっています。
iPhoneで外付けストレージを使うメリット・デメリット、iCloudとの比較
ここからは、iPhoneで外付けストレージ(主にSDカード)を使うメリット・デメリットを、iCloudやGoogleフォトなどのクラウドストレージと比較しながら紹介します。
メリット:長く使うなら意外とコスパは悪くない
まず気になるのがコスト面です。クラウドストレージと比べて、どちらが費用を抑えられるのでしょうか。

例えば「iCloud」の無料で使える容量は5GBまで。これ以上は、有料プランへのアップグレードが必要です。
- 5GB〜50GBまで:130円
- 50GB〜200GB:400円
- 200GB〜2TB:1300円
最も安い50GBプランであっても、年間1560円の費用がかかります。一度容量を増やすと途中で5GBに戻すのは難しくなるので、半永久的に支払い続けることになるでしょう。
この点、外付けストレージは最初に購入すれば、月々の利用料などは発生しません。特にSDカードの値段は128GB以上の大容量タイプでもかなり手頃になっていますし、SDカードリーダーは「Lightning端子」対応のものを買えば、機種変更に関わらず使い続けられます。
初期導入コストこそかかるものの、長い目で見ると意外とコストパフォーマンスに優れた面もあるといえるでしょう。
メリット:パソコンやプリンターとのデータ共有が簡単
冒頭で紹介したように、SDカードは使用できるデバイスが圧倒的に多い記録媒体です。
パソコンやプリンターなど、他デバイスに差し込めばサッとデータのやりとりができます。OSや通信環境に左右されないのも利点でしょう。

セブンイレブンのプリンター
個人的に便利だと思ったのが、コンビニのプリンターに直接挿し込めること。コンビニのネットプリントは、アプリのインストールや会員登録、予約登録などが必要です。印刷するまでの工程の多さがネックでした。
その点、SDカードにあらかじめデータを保存しておけば、コンビニのプリンターに差し込むだけで簡単に印刷できます。頻繁にコンビニプリントを利用する人は、重宝するでしょう。
デメリット:iPhoneと一体化できない
iPhoneはSDカードを本体に収納できません。そのため、普段から保存先として利用したい場合は、SDカード、およびSDカードリーダーを持ち運ぶ必要が出てきます。

いくらコンパクトといっても、上画像のような状態でiPhoneを扱うのはかなり煩わしいはず。
また、後述する故障や紛失などのリスクを考えると、持ち運ぶこと自体あまり適していないといえます。基本は自宅や会社に置いておき、必要に応じて持ち出す程度に捉えていた方がいいかもしれません。
デメリット:紛失・故障するリスクがある
すべての外付けストレージに共通するデメリットが、それ自体が壊れたり紛失したりするリスクがあることです。
水没や衝撃などで外付けストレージが壊れてしまった場合、中のデータを取り出すのは困難です。また、もし外出先でSDカードを紛失したら、プライバシーの塊である写真や動画が第三者に見られてしまうかもしれません。

この点では、インターネット上にデータを保存しておけるiCloudのほうが、安全性は高いといえます。iCloudに保存しているデータを閲覧するにはApple IDによるログインが必要ですし、Apple社のサーバーに致命的なトラブルが発生しない限り、保存中のデータが壊れる心配もないからです。
一方で「クラウドサービスにデータを預ける」=「運営側にデータの生殺与奪の権を握られている」とも捉えられます。紛失や故障のリスクがあったとしても、自分の手元でデータを管理しておきたいという人は外付けストレージの利用をおすすめします。