テロとの戦いは21世紀になって以降、アメリカの最も重いテーマの一つです。9.11以降、テロとの戦いには終わりが見えず、アメリカを悩ませ続けています。
『HOMELAND(ホームランド)』は、そんなテロとの戦いを丹念に描いた物語です。主人公のCIA職員・キャリー(クレア・デインズ)を中心に、彼の上司、イラク戦争から帰還した海兵隊員、そしてテロリストや中東の政府の役人など、多くの人間の思惑が交錯するサスペンス・ドラマです。
シーズン8まで制作されており、一貫してテロリストとCIAの戦いを描いています。延々と続くテロとの戦いがネタ切れすることなく続いているわけですが、テロとの戦いは現実でもアメリカは止めることができていません。このドラマを観ると、それがなぜなのかわかる気がします。
双極性障害の主人公というユニークな設定
この作品のユニークな点は、主人公が優秀でありながら、双極性障害という精神疾患を患っているという点です。中東情勢に詳しく、独自の視点で難事件の突破口を見出す能力を持っているのですが、障害のせいで気分の波が激しく、妄想にとらわれることもあります。
そんなキャリーの姿を見ていると、視聴者も果たして彼女の判断が正しいのかどうか確信を持てなくなってきて、ドラマが一層スリリングになるように仕掛けられています。
本作の物語は、イラク戦争で捕虜となっていた海兵隊員・ブロディ(ダミアン・ルイス)が奇跡的に帰還するところから始まります。彼は英雄として扱われますが、キャリーだけが独自の情報源から、海兵隊員に裏切り者がいるということを知っているというシチュエーションで、それもキャリーの障害のせいで信憑性が今ひとつという展開が見事です。
テロリストもただの悪人じゃない
この作品はテロリスト側の事情もかなり描かれる点が特徴的です。テロは許せない行為ですが、それが起きる原因はアメリカ側にも責任があるという形で描かれていて、テロリストのリーダー格なども、ただの悪人として描かれていません。子どもを米軍の爆撃で殺された過去を持つなど、なぜテロという争いが無くならないのかを考えさせてくれる内容になっています。
シーズンを重ねるたびに、CIAが戦う相手は変わっていきます。最初はアルカイダ、そしてイラン、さらにISISなど。相手が変わっても変わらないのは、テロをする連中の憎悪です。
むしろ、テロに対応するためにCIAが何か行動を起こすたびに、テロリストたちは反感を覚え、その行動自体がテロの原因になっている面もあります。お互いの攻撃が、さらなる憎悪を生んで攻撃される恐怖を増やしてしまっているような、イタチごっこになっている点は否めません。
「祖国(ホームランド)」を守るためにやっていることが、さらに祖国を攻撃する動機を作ってしまっているかもしれない。でも、目の前に脅威があれば対処するしかない。終わりの見えないテロとの戦いの構造問題をこのドラマはわかりやすく見せてくれます。
一筋縄では正解を出せない問題を、わかりやすく娯楽作品として完成させている見事なドラマです。
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