自宅などで無線LAN親機(Wi-Fiルーター)を使えば、パソコンやスマホをはじめとした様々な機器をワイヤレスでインターネット接続できるだけでなく、通信容量を節約することもできます。
すでにWi-Fiルーターを利用している人も、古くなってきた機種を適切に買い換えれば、動画配信が高画質で見られたり、アプリのアップデートやファイルのダウンロードが短時間で終わるなど、快適なスピードで使えるようになります。
Wi-Fiルーターは、新しい規格のモデルに買い換えるとより快適に使えるようになります。とはいえ、パソコンやスマホが新規格に対応していないと意味がないので、およそ3〜4年の買い換えが目安になります。
Wi-Fiルーターも機械なので、長期間使うほど壊れる可能性は高くなります。故障したら修理に出せばよいのですが、その間インターネットに接続できなくなるのはいただけません。3〜4年で買い換えて、古い機種も一応取っておけば、最悪の事態に備えられます。故障してから、買い換えるのはあまりおすすめしません。
Wi-Fiルーターは3000円〜2万円程度で購入できますが、驚くほど多くの種類があります。外観はどれも似たりよったりなうえ、ほとんどが型番ばかりの名前なのでわかりづらく、各種規格への対応などチェックするべきポイントも少なくないため、自分に最適なものを選ぶのが大変です。
そこで本記事では、家庭向け(マンション/戸建て等)のWi-Fiルーターの選び方について、2020年最新のおすすめ製品を具体的に挙げながら、知識ゼロの人から少し詳しく知りたい人にまで、わかりやすく情報をまとめました。買い換えるべきか判断するためにも、また引っ越しなどで新たに無線LANルーターを使いたい場合も必読です。
【初級向け】難しく考えず無難にWi-Fiルーターを選ぶ
自宅の間取りやWi-Fiルーターを置く位置を基準にすると、失敗は少ないでしょう。
部屋の間取りを目安の一つに
難しいことを考えずにWi-Fiルーターを選びたい人は、部屋の間取りを目安に考えるとよいでしょう。
メーカーのカタログページを見ると、「3LDK向き」など対応する部屋の広さが表記されています。間取りはあくまでも参考の広さなので、目安と考えてください。Wi-Fiルーターは、性能が高いほど遠くまで電波が飛び、速度も落ちにくくなります。性能は基本的に大は小を兼ねます。つまり、4LDK向きのルーターを2LDKに使うぶんには何の問題もありません。
しかし、広い部屋に対応するルーターほど価格も高くなるので、バランス良く選択するのが肝心です。
バッファローの無線LANルーター親機のカタログページ。製品ごとに最適な部屋数が記載されている
ルーターを置く位置を検討しよう
メーカーが部屋の広さの目安としているモデルケースは、Wi-Fiルーターを自宅の中心部分に置いた場合だと考えるのが無難です。
たとえば3LDK対応モデルでも、家の隅に設置すると逆側の端まで電波が届かないケースも出てきます。こんな時には、4LDK用など広い範囲に届くモデルを選ぶのがおすすめです。一戸建てでも、建物全体のなるべく真ん中に置くように考えてください。3階建てなら2階の中央に設置してこそ、隅々まで電波が届きます。
ただ実際には、家の中央に置けるケースはほとんどありません。また、ガレージやベランダでも使いたいなど、自分の利用方法を考えて、推奨している間取りよりも少し大きめの家に対応するモデルを選びましょう。
また、無線の電波は親機から離れるほど弱くなります。3LDKのマンションに3LDK向けのモデルを買って部屋の隅まで届いたとしても、部屋の(逆側の)端では速度に満足できないことはよくあります。
木造住宅でも、壁やドアを隔てると通信速度が落ちる可能性が高くなります。洋服ダンスや棚なども通信の妨げになるので、部屋のレイアウトを考えて余裕を持って親機を選んでください。親機から離れた部屋に高速通信をしたい機器を置くケースでも、電波の強い上位モデルを選んでおくと安心です。
部屋の端に置くと反対側の端には電波が届かなかったり、速度が遅くなったりすることがある
最近はテレビにWi-Fiが内蔵され、動画配信サービスを利用できるモデルが増えてきました。また、GoogleのChromecastやAmazonのFire TV Stickを接続するなどして、動画配信サービスを楽しんでいる人も少なくありません。動画転送は通信が遅いと、画質が落ちてストレスになるので気をつけてください。
難しいことを考えずに最適な無線LANルーターを選びたい人は、部屋の間取り+1を目安にするとよいでしょう。自宅がワンルームや1LDKなら2LDK用モデルを、3LDKなら4LDK用モデルを選んでおくと失敗は少ないはずです。
【中級向け】無線LANの規格からWi-Fiルーターを選ぶ
無線LANの規格をある程度理解してWi-Fiルーターを入手したいなら、新規格の「Wi-Fi 6」をチェックしておきましょう。実際に購入する際には「ac対応」モデルをおすすめします。
無線LANの規格は「11ac」と「11ax(Wi-Fi 6)」をチェック
無線LANには、周波数や帯域の違いでいくつもの規格があります。まず最初にチェックしておきたいのが、最もベースになる無線LANの通信規格です。
正式には「IEEE802.11b」などと表記されますが、11と最後のアルファベットだけを取り出して書くこともあります。「11b対応」といった具合です。アルファベットの部分が規格の違いを示しており、「11b」「11g」「11a」「11n」「11ac」「11ad」と多くのバリエーションがあります。こんなに種類が多いのは、年々進化して新しい規格が追加されているからです。さらに、最近追加されたのが「11ax」(Wi-Fi 6)で、詳しくは後述します。
それぞれの細かい解説は省きますが、実はすべてを知っていてもあまり意味がありません。現在入手できる無線LANルーターは、ほぼ2種類に分けられます。「11ac」モデルは中上位機で、11ac/n/a(5GHz帯)および11n/g/b(2.4GHz帯)に対応しています。さらに最新モデルとして、Wi-Fi 6対応製品が登場しています。
「AirStation WSR-2533DHPL-C」は11acに対応する
「5GHz」と「2.4GHz」も通信規格の一種です。5GHz帯は障害物に弱いものの干渉に強く、2.4GHz帯は障害物には強いのですが電波干渉が苦手です。11acモデルは最新のルーターで、かつ古い規格にも対応していますから、ほとんどの機器が問題なくつながります。つまり、この機種を買っておけばまず問題ありません。
なお、最近は11acに対応していない製品は極めて少なくなりました。たとえば、バッファローでは1機種しかありません。11acのモデルも安くなっているので、価格的な優位性も乏しくなっています。
「Wi-Fi 6」とは?
Wi-Fiは、数年ごとに新しい規格がリリースされます。これまでは、IEEE 802.11ac(以下すべてIEEE802.を略します)が最新の規格でした。いま店頭で売っている多くのパソコン、スマホ、Wi-Fiルーターが11acに対応しています。
次の規格として登場したのが「11ax」です。ただし、この名前がわかりづらいので、規格の名前を連番にしています。それが「Wi-Fi 6」です。つまり、11axとWi-Fi 6は同じものです。ちなみに、11acを同じ連番で考えるとWi-Fi 5になります。
Wi-Fi 6は新しい規格らしく、従来の11acに比べて4〜10倍高速で通信ができます。さらに、同時にたくさんのデバイスを接続して通信できます。
いいことづくめに感じられますが、実は子機の側もWi-Fi 6に対応していないとその恩恵を受けられません。最新のパソコンやスマホを手に入れてこそ、Wi-Fi 6のメリットが感じられるのです。ただWi-Fi 6は、従来の11ac、n、a、g、bなどの規格も包括しています。子機が古い規格にしか対応していないケースでも、その規格で通信ができるわけです。
Wi-Fi 6対応モデルはいつ買うべきか?
現状の機器で通信が遅いと感じているなら、乗り換えを検討してもよいでしょう。ところが、実際には多くの人が十分だと感じているはずです。Wi-Fiルーターに対する不満は、速度よりもエリアに関するケースが多くなるでしょう。親機から離れた位置で高速な通信ができないことです。この場合、Wi-Fi 6よりも中継機やメッシュを導入したほうが快適な環境になります。
Wi-Fi 6に対応したスマホやパソコンが揃ってきた頃には、Wi-Fi 6対応のルーターも数が増え、価格も落ちてくるでしょう。具体的には、2021年当たりから導入を検討すれば良さそうです。
なお、ゲームや動画配信のために10Gbpsの高速なインターネット回線を導入する人は、併せて購入を検討してもいいでしょう。しかし、10Gbpsの速度を生かせるのは有線接続になります。スイッチングハブやLANケーブルなども揃える必要があり、Wi-Fi 6対応ルーターを購入すべきユーザーはまだ限られているのが現状です。
「WXR-5950AX12」はWi-Fi 6に対応した新しいモデルだ
アンテナ数もチェックしておこう
11nや11acでは、アンテナの数によって理論上の通信速度が変わってきます。アンテナが2倍の本数になれば速度も倍になります。ストリーム数と通信速度は、基本的に比例していると考えていいのです。もちろんカタログの通信速度を見て、高速なモデルを選べばアンテナも多くなります。
上位モデルが搭載しているのが「MU-MIMO」で、複数の通信を同時に処理して速度が落ちにくくなります。11acから搭載された規格で、家族が多くても快適に利用できるのでおすすめです。ただし、スマホやパソコン側にも対応が必要になります。
またアンテナが動かせるモデルは、家や部屋の形に合わせて最適な方向に電波を飛ばすことができます。特に縦に電波を飛ばしたい3階建ての一軒家などに適しています。
家が広いなら「メッシュ」がおすすめ
新しい規格「メッシュネットワーク」は、広い家の中でも快適にインターネットが利用できるとして注目されています。これまでにも、Wi-Fi(無線LAN)中継器を利用して通信できるエリアを増やすことができました。ところが中継器は、中継器に届いた電波をそのまま遠くに飛ばす仕組みのため限界があり、中継器までの経路も1本しかありません。
メッシュネットワークでは、設置したルーターが相互に通信して網の目のように電波を飛ばします。それぞれを接続する経路も複数あり、より通信速度が向上します。この仕組みを理解するのは大変なので、中継器に対するメリット・デメリットをユーザー目線でまとめておきましょう。
メリット | デメリット | |
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中継器 |
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メッシュ |
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メッシュ対応製品がおすすめなのは自宅が広いユーザー。さらに、無線LAN親機から離れた位置にテレビを設置して動画配信サービスを見たり、ゲームを楽しんだりするために高速な通信が必要なユーザーです。初心者でも、こうした使い方をするなら迷わずメッシュを選んでください。設定で特に難しいことはありません。
メッシュWi-Fiルーターの選び方を独断と偏見で紹介、実機の購入レビューも
バッファローのメッシュ対応ルーター「WTR-M2133HP」
【まとめ】結局どのWi-Fiルーターがおすすめ?
基本的には、コスパに優れる11ac対応の親機がおすすめです。今回は家の広さを踏まえておすすめモデルを紹介します。
3階建てもしくは4LDKの場合
AirStation WSR-2533DHPL-C(バッファロー)
コスパの高い、3階建て対応モデルです。ただし家族が多いなら、MU-MIMOに対応する上位機の「WSR-2533DHP2」シリーズをおすすめします。
Aterm WG2600HS PA-WG2600HS(NEC)
MU-MIMOに対応する3階建て対応モデルです。価格も手ごろなので、買い換えにもおすすめします。
2階建てもしくは3LDKの場合
Aterm WG1200CR PA-WG1200CR(NEC)
とても手ごろなモデルで、ワンルームなどでも余裕を持って使えるのでおすすめします。最適な利用人数は2〜3名です。
AirStation WSR-1166DHPL(バッファロー)
2階建てもしくは3LDK対応モデルですが、MU-MIMOにも対応しています。最適な利用人数は4名で、一般的な家族にも十分です。
メッシュ対応モデル
Deco M9 Plus(TP-Link)
Decoシリーズの上位モデルですが、2ユニットのセットで1万円台半ばで買えるのが魅力の製品です。セットアップも簡単で、他にも3台セットも販売されています。
AirStation connect WRM-D2133HP/E1S(バッファロー)
バッファローのメッシュモデルとしては、中級のラインアップです。親機と子機1台がセットになっており、実勢価格で2万円を切っています。
メーカーの選択に迷ったら、初心者にはバッファローをおすすめします。製品が最も安いわけではありませんが、サポートの良さで推奨します。特に他社より秀でているのが、LINEによるサポートです。電話がつながるのを待つ必要がなく、LINEで質問し、回答を得られます。
なお本記事の内容に関連して、動画でもWi-Fiルーターの選び方を紹介しています。是非ご覧ください。
構成・文:戸田覚
編集:アプリオ編集部