友情・努力・勝利、ジャンプの王道を詰め込んだ傑作青春映画『バクマン。』

少年ジャンプと言えば、「友情、努力、勝利」の三大原則が有名です。『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』など有名作品に共通する物語の要素であり、ジャンプのどの作品にも、この3つのキーワードのうち最低1つは含まれていると言われています。

映画『バクマン。』は、そんなジャンプの漫画連載に夢をかける高校生2人の物語。原作はやはり週刊少年ジャンプに連載されていた同名漫画で、「友情、努力、勝利」の三原則がすべて詰まった作品です。

監督は『モテキ』や『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を手がけた大根仁氏。漫画原作の実写化を手がけるのに定評のある監督で、原作へのリスペクトを強く感じさせながら、実写ならではの映像を作ることに成功しています。

友情、努力、勝利のバランスよい配合

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絵だけは上手いが将来の目標もなく毎日を過ごしていた真城最高(佐藤健)は、ある日、同級生の高木秋人(神木隆之介)から2人で漫画家になろうと誘われます。漫画家だった叔父が過労で亡くなった過去を待つ真城は乗り気ではありませんでしたが、声優志望の憧れの女子・亜豆美保(小松菜奈)と約束を交わし、漫画を目指すことになります。

はじめは女の子目当てに漫画を始めた真城ですが、編集部に持ち込んだ漫画が高評価を受け、2人の夢は徐々に現実のものになっていきます。しかし、そこに同年代の天才漫画家・新妻エイジ(染谷将太)が現れ、2人の前に立ちはだかります。

映画は真城と高木の友情を軸に、強大なライバルに打ち勝つための努力と、勝利の瞬間を描いています。見事にジャンプの三大原則がバランス良く物語に組み込まれています。

友情に関しては、主人公の真城と高木の関係はもちろん、同じ夢を持ち、競争相手でもある漫画家たちが、2人のピンチに駆けつける熱い展開もあります。かつて競い合った相手が、後に仲間になってより強い相手と戦うという展開は少年漫画の王道ですよね。その展開を映画は見事に利用しています。

そしてライバル・新妻エイジに勝つために主人公たちは血の滲むような努力を重ねます。連日徹夜で体調も崩した真城は、突然家を訪れたエイジに触発され、限界を超えて力を発揮します。これも少年漫画でよく見るパターンです。そういうお約束的な展開が、漫画制作の裏側でも起きているというのが本作の面白いところです。

努力の結果、訪れた勝利。しかし、2人が勝ち取った勝利の代償はとても大きなものでした。少年ジャンプの名作『スラムダンク』を彷彿とさせる、原作とは異なるその幕引きは、ほろ苦いけれど、2人が再び夢に向かって突き進む姿を予感させます。

実写ならではのダイナミックな演出

本作の原作は漫画で、漫画の実写化は常に難しいものですが、大根監督は見事に漫画的要素を実写の映像に落とし込むことに成功しています。

映像ならではの演出で、本作で最もユニークなのは、プロジェクションマッピングを用いて漫画の執筆シーンをダイナミックに描いたところ。執筆作業は通常、黙々と机に向かう地味なものですが、本作では描かれている最中の漫画をプロジェクションマッピングで背景に映し出すことによって、地味な執筆シーンを躍動的に見せています。

夢を持つ若者の姿、さらには夢を追うのは若い人だけの特権じゃないこともこの映画は描いており、幅広い世代が楽しめる作品です。

動画配信サービスのHuluとU-NEXT、Netflix、Amazonプライム・ビデオでは、『バクマン。』が見放題です(2020年3月10日時点)。

構成・文:杉本穂高

編集:アプリオ編集部