フリーでライターをするようになって、心がけていることの一つは、なるべく仕事を断らないことです。
とにかく仕事を受けないことには、自分がどんなライターなのか知ってもらうことはできませんので、お声がけいただいた仕事はスケジュールが許す限りやることにしています。
チャンスはどこにでも転がっているわけではないので、自分に向いてないかもと思っても、受けてみて自分なりのやり方を探すことにしています。やっていくうちに楽しくなってくることもありますしね。
面倒くさがっていると、断ることが自分の中で習慣になりがちです。映画『イエスマン "YES"は人生のパスワード』は、そんな「断りグセ」から抜け出して幸せを手に入れた男の物語です。
映画の主人公は、とりあえず何でもイエスと答えるという、結構過激なやり方をしますが、断りグセがついてしまっている人はそれぐらいの荒療治を必要とするのかもしれません。
どんな無茶なお願いにも全力で「イエス」!?
銀行員のカール(ジム・キャリー)は、友人の誘いも同僚との付き合いも常に断ってしまう性格。離婚した元妻のことを引きずり、親友ピーター(ブラッドリー・クーパー)の婚約も素直に喜べず、パーティの出席もなんだかんだと理由をつけて断ろうとします。
会社での出世の話も流れてしまい、なにもかもが上手くいかないカールですが、ある日、知人のニックから、何でもイエスと言えば幸せになれると謳う怪しいセミナーに誘われます。そこでカールは、セミナーの代表のテレンスに強引にすべての選択にイエスと答えるように誓約させられます。
それ以来、カールはホームレスに助けを請われたり、休日出勤にOKしたりと、どんな頼みでもイエスと答えるようになります。
その結果、カールは素敵な女性アリソン(ズーイー・デシャネル)と出会い、仕事も順調で出世を果たし、イエスというクセがついてから彼の人生は好転することになるのです。
しかし、何でもかんでもイエスと言っていたことでツケも回ってきます。アリソンとでかけた旅行から帰ってくると、なぜかテロリストの容疑をかけられてしまいます。理由は、スパムメールで届く出会い系サイトの誘いにも片っ端からイエスを繰り返し、イラン人と出会ったり、朝鮮語を習ったりなどの行動が怪しいと当局に思われたから。アリソンは、カールがなんでもイエスということを義務づけていたことを知り、自分への興味もただの条件反射だったのかと失望します。
コメディ映画なので、かなり戯画化されているのですが、社会でチャンスを得るには、断ってばかりではやはり駄目。出会いも仕事のチャンスもより多くイエスを言った人に転がり込んできやすいのは確かです。この映画は、そのことをよく描いています。
反面、きちんと考えた上で決断することも大事だということも伝えていて、荒唐無稽なストーリーの中でもきちんとバランスを取っているのが好感が持てるところです。
豪華キャストの共演
本作の主人公を演じるのはジム・キャリー。表情筋の柔らかさは相変わらずで、ずっこけるアクションなどもさすがの身のこなしで笑わせてくれます。本作は、一歩間違えると胡散臭い新興宗教じみた物語になってしまいそうな題材ですが、ジム・キャリーの説得力あるコミカルな演技がそれを上手く解消しています。
主人公の親友の弁護士役には、ブラッドリー・クーパーが起用されています。今ではアカデミー賞の常連俳優となり、『アリー/ スター誕生』では監督も務めたハリウッドのトップ俳優が、ここでは脇役としていい味を出しています。
ヒロインのアリソンを演じるのは、『(500)日のサマー』などで知られるズーイー・デシャネル。彼女はとにかくクールで可愛いですね。
怪しげなセミナーの主催者テレンスを演じるのは、イギリス出身の大物俳優、テレンス・スタンプ。彼が演じると貫禄十分で、怪しげなセミナーも説得力が段違いです。
俳優たちの見事なアンサンブルにより、人生を前向きに楽しむことの大切を描いた一作です。前向きになった上で、きちんと自分の頭で物事を検討できるようになった時、人は幸せをつかめるのだということですね。
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