『ゴールデンスプーン』貧乏高校生と金持ち高校生の立場が逆転、リアルで切実なファンタジードラマ

人を幸せにするのは金か、家族愛か

人類みな平等と言われますが、生まれによる経済格差は現実に存在しています。そんな格差社会の現実を、韓国ドラマはエンタメとして提示するのを得意としています。ディズニープラスで独占配信されているドラマ『ゴールデンスプーン』は、とある不思議な力を持つスプーンによって、貧乏高校生と大企業経営者の息子が入れ替わってしまう、一風変わった立場逆転ドラマです。

人を幸せにするのは金か、家族愛か。持たざる者と持てる者が入れ替わった時、何が起こるのか。ファンタジックな設定ながら、富と幸福をめぐる極めてリアルで切実な物語が展開する作品です。

金と家族愛、大切なのはどっち?

借金だらけの家庭に生まれたスンチョンは、努力の塊。彼は貧しいながらも進学校に進み、家計を助けるためにバイトしながら勉強に励んでいます。クラスメイトはほとんど金持ちばかり。そんな環境下で理不尽な出来事が起こり、スンチョンは世界のあまりの不公平さにくやしさを募らせていきます。

ある日、スンチョンは奇妙な老婆と出会います。その老婆は金のスプーンを見せ、ある条件を満たせば立場が入れ替わることをスンチョンに伝えます。

半信半疑だったスンチョンですが、大企業経営者の息子であるテヨンの宿題を手伝った縁で彼の家で過ごし、条件を達成すると、本当にテヨンと立場が入れ替わり、自分がテヨンとして大金持ちの息子になっていたのです。

反対にテヨンは、スンチョンの家の子となります。そして、2人の間にテヨンの幼馴染でスンチョンを好きになるジュヒなどが関わり、複雑な人間関係を形成していくのです。

本作のポイントは、学歴と格差です。韓国トップクラスの進学校には金持ちばかり。本作は、スンチョンのような若者はそもそも高い水準の教育を受ける機会が限られてしまい、格差が固定化されている現状を前提にしています。

もう1つのポイントは家族愛です。テヨンは実母を亡くし、父からも愛されていません。彼は父の過大な期待に応えられず、なんとか父に関心を向けてもらおうと、投資の課題をスンチョンにやってもらうのですが、それがばれてさらに見放されてしまいます。彼は富は持っているけれど、親の愛を知らないのです。それゆえ、貧しい家庭の子に入れ替わってはじめて、彼は親の愛を知ることになるのです。

人を幸せにするものは、金か家族愛か。これは古典的な二者択一ですが、今ほどその問いかけが切実な時代もないかもしれません。

韓国で経済格差をテーマにした作品が量産される理由

アカデミー賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』や一世風靡したNetflixドラマ『イカゲーム』など、韓国で経済格差を題材にした作品が量産されています。もはや定番のテーマと言っていいでしょう。

こうした作品が多い背景は、実際に韓国社会が大きな経済格差に悩まされているからです。韓国の相対的貧困率は、OECD加盟34カ国の中で5番目に高い16.7%です。

加えて、韓国は元々超学歴社会でした。日本も学歴を重視する社会と言われますが、韓国は日本以上の学歴社会と言われます。そこに格差の問題が重なり、学歴を積むにはお金が必要なので、経済階級が固定化されてしまっている現状が生まれているのです。

本作のタイトルの由来は、韓国の固定化された階級を皮肉るスラングからきていると思われます。「スプーン階級論」と言って、英語の「銀のスプーン=裕福な家庭に生まれる」から生まれたものです。こうした言葉が流行するほど、韓国では一般的な感覚として格差問題が捉えられているということでしょう。

格差に苦しむ韓国の若者の姿は、日本人にとっても他人事ではなく切実な問題として胸に迫るでしょう。社会のあり方を考えさせるだけでなく、一級のエンタメとしても面白い、秀作ドラマです。

『ゴールデンスプーン』を見る(ディズニープラスで配信中)

『ゴールデンスプーン』のストーリー

金持ち(通称:金のスプーン)だけが通うと言われているソウル第1高校。その中でただ1人貧乏な(通称:土のスプーン)イ・スンチョンは道端で偶然、金のスプーンを売る老婆に出会い、金持ちになる方法を聞くことになる。

スンチョンは苦労しながらもその方法をやり遂げ、韓国一の大富豪であるトシングループの御曹司ファン・テヨンと入れ替わる。イ・スンチョンがファン・テヨンになり、ファン・テヨンがイ・スンチョンになったのだ。スンチョンは、あれほど夢見ていた金持ちの人生を送ることになったが、財閥の御曹司として生きるのも容易ではない。

そんなある日、スンチョンは父親のチョルが大ケガをして危篤状態だとの知らせを聞く。 両親を取り替えたという罪悪感と父親に対する切ない気持ちで、スンチョンは再び老婆を訪ねて行くのだが…。

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