スマホの「急速充電」とは? おすすめ対応充電器・ケーブルまとめ

スマホの「急速充電」とは? おすすめ対応充電器・ケーブルまとめ

スマホの充電速度は規格によって大きく変わります。各メーカーが販売している充電器やケーブルを見ると「急速充電対応」と表記されている製品があるため、早く充電するには何となくそれらの製品を使ったほうがよさそうに思えます。

とはいえ、急速充電の表示には「USB PD」や「Quick Charge」などさまざまな種類があり、「そもそも急速充電とは何なのか」「どの製品を買えば急速充電ができるのか」といった疑問が湧いてきます。

そこで、いまいちわかりにくい急速充電について、スマホ向けの充電器やケーブルなどを製造・販売するアンカー・ジャパン社に取材して話を聞きました。急速充電に対応する充電器やケーブルの選び方やおすすめ製品なども紹介します。

急速充電とは?

まずは「急速充電」の定義について伺いました。

「急速充電という言葉に『何V(ボルト)/何A(アンペア)以上で充電できる』や『何分以下でフル充電できる』といった明確な定義はありません。たとえば、充電器のパッケージを見ると『18W(9V/2A)で急速充電可能』などと書いてある製品がありますが、すべてのスマホが18Wで充電できるわけではありません。なぜなら、スマホの充電性能は機種によって異なるからです」(アンカー・ジャパン社)

iPhone 急速充電

つまり、18Wで充電できる充電器やケーブルを買ったとしても、仮にスマホの充電性能が5Wであれば、18Wでは充電できないということです。逆に、それ以上の速度で充電できるスマホにとっては、18Wでも足りないということになります。その場合、使用する充電器やケーブルに関係なく、「急速充電はできない」ということでしょうか。
 
「そもそも『急速充電とは何か』ということになりますが、アンカーでは、各スマホが受け入れられる上限まで性能を上げて充電できる状態を『急速充電』と定義しています」(同)

たとえ充電速度が5W(5V/1A)しかないスマホでも、しっかり5Wで充電できているのであれば、「急速充電ができる」という判断になります。また、仮に60W(20V/3A)で充電できるスマホがあれば、「18W(9V/2A)で急速充電可能」と書いてある製品を使っても「急速充電はできない」ということになります。

このように、急速充電ができているか否かという判断は、各スマホの充電能力や充電製品の選び方によって変わってきます。自分が持っているスマホで急速充電をするためには、購入した機種に合った充電製品を選ぶことが重要です。

本記事の後半で、おすすめの充電器ケーブルを紹介しています。

各社が提供する急速充電関連のテクノロジー

急速充電にはさまざまな規格があります。ここでは、各規格の仕様や対応している主なスマホを紹介します。

Quick Charge(クイックチャージ)

急速充電 Quick Charge

「Quick Charge」はQualcommが開発した充電器の規格です。いくつかのバージョンがあり、最新は5となっています。現在の最新スマホには主に3.0や2.0が搭載されており、4+や5に対応する製品はまだ多くはありません。なお、4.0は後述するUSB PDにも対応しています。

Quick Charge 3.0や2.0は、最大18Wで電流を流すことにより、充電スピードを速くしています。アンカー社の検証によると、Quick Charge 3.0対応の充電器は非対応の製品に比べて約4倍のスピードで充電できるそうです。各バージョンの充電速度は以下の通りです。

バージョン 充電速度
Quick Charge 1.0 最大出力10W(電圧5V / 電流2A)
Quick Charge 2.0 最大出力18W(電圧5V、9V、12V、20V / 電流3A、2A、1.67A)
Quick Charge 3.0 最大出力18W(電圧3.6V〜20V<200mV単位で最適な電圧を適用> / 電流2.6A、4.6A)
Quick Charge4 最大出力27W(電圧3.6V〜20V<200mV単位で最適な電圧を適用>/電流2.6A、4.6A)
Quick Charge 5 最大出力100W(電圧3.6V〜20V<200mV単位で最適な電圧を適用>/電流2.6A、4.6A)

Quick Chargeを利用するには、スマホと充電器が対応している必要があり、Androidスマホの多くにはQuick Chargeが搭載されています。対応スマホは、Qualcomm社のページ(PDF)でチェックできます。

Quick Chargeを搭載している主なスマホメーカーは以下の通りです。それぞれ最大18Wで充電することが可能になっています。

  • ソニー(Xperia XZ3、XZ1など)
  • 富士通(arrowsシリーズなど)
  • HP(Elite x3など)
  • ASUS(ZenFone 3など)
  • Samsung(Galaxy S8+など)
  • LG(G6など)
  • Motorola(New Moto X by Motorolaなど)
  • HTC(HTC U11など)

USB PD(ユーエスビーピーディー)

「USB PD」は、USB Power Deliveryの略で、USB Type-Cを使用して充電します。最近は最新機種に搭載するスマホメーカーも増えてきました。充電するには、スマホと充電器、USB Type-CケーブルがUSB PDに対応している必要があります。

USB PDは、最大100W(20V/5A)という高速充電が可能となっています。USB PDに対応したUSB Type-Cケーブルには、3A出力と5A出力の2種類があります。USB PDの供給電圧は、5V、9V、15V、20Vの4種類なので、3A出力のケーブルを購入すると、最大60Wでしか充電できません。

USB Type-Cケーブル

USB Type-Cケーブル

ただし、アンカーによると、後述するスマホメーカーが開発した独自の充電規格に対応するスマホを除き、18Wあれば大抵のスマホは急速充電が可能ということです。60W以上で充電できるUSB PD対応のノートパソコンなどと兼用する人は、5Aのケーブルも検討しましょう。

また、最新規格のUSB PD 3.0では、電力供給を細かく調整できる「PPS」という機能が追加されています。通常は充電すると、充電器はスマホの受電可能な能力より高い電圧・電力を供給し、受け取ったスマホ側で適切な電力に調整しますが、変換ロスが発生して充電スピードが落ちたり発熱する原因になります。PPSでは、スマホが受電可能な電圧になるまで100mV・50mA単位で充電器側が少しずつ上げるため、ロスなく最短スピードで充電できます。

USB PDに対応している各メーカーの主なモデルは以下の通りです。

  • ソニー(Xperia 5 IIなど)
  • シャープ(AQUOS R Compact、R2など)
  • 富士通(arrows NX F-01K、arrows Tab F-02Kなど)
  • 京セラ(Android One X3など)
  • Google(Google Pixel 5、Google Pixel 4(5G)、Google Pixel 4など)
  • HTC(Android One X2、HTC U11など)
  • HUAWEI(Mate9、Mate10、P10、P20など)
  • ASUS(ZenFone Max、ZenFone 7 Proなど)
  • Samsung(Galaxy A51 5G、Galaxy Note20 Ultra 5G、Galaxy S10など)
  • Apple(iPhone 8以降)

なお、iPhoneではiPhone 8以降であれば、USB PD対応のアダプターとApple USB-C - Lightningケーブルを利用することで急速充電がおこなえます。

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Super Charge(スーパーチャージ)

「Super Charge」は、HUAWEI(ファーウェイ)が独自に開発した急速充電技術で、最大40W(10V/4A)での高速充電が可能となっています。

ただし「Super Charge」が利用できるのはHUAWEI純正の充電器のみで、サードパーティの製品はありません。HUAWEI P40 ProやHUAWEI P40 lite 5Gなどの最新機種だけでなく、HUAWEI Mate9やHUAWEI P10などの旧モデルまで幅広く対応しています。

BoostMaster(ブーストマスター)

「BoostMaster」はASUSの急速充電の独自規格で、最大18W(9V/2A)での給電が可能です。ASUS ZenFone 7だけでなく、ZenFone 6や5など、旧モデルも対応しています。

PowerIQ(パワーアイキュー)/Voltage Boost(ボルテージブースト)

「PowerIQ」はアンカーが開発したテクノロジーで、最大18Wのスピードで充電が可能です。Ankerの充電機器に接続されたスマホの機種を自動的に検知して、機器毎に適した最大のスピードで急速充電をおこなうというものです。

急速充電 PowerIQ

Image:Anker

PowerIQと同じような機能として、モバイルバッテリーなどを製造・販売するcheero社の「Auto-IC」やバッファロー社の「AUTO POWER SELECT」などがあります。

「Voltage Boost」もアンカーが開発しています。充電器に接続されているケーブルの抵抗を平衡に保ち、給電能力を最適化することで充電スピードを上げています。

Super Fast Charging(スーパーファストチャージング)

「Super Fast Charging」は、Samsungが開発した独自の充電規格です。機種により最大45W/25W/15Wのいずれかで充電が可能となっており、Galaxy Note 10+やGalaxy S20 Ultraは45W、Galasxy S20・S20+、Galaxy Noto 10・20・20 Ultraなどは25Wでの充電に対応しています。

前述した通り、Galaxyシリーズの最新モデルはUSB PDにも対応しており、Super Fast Chargingと両方の急速充電規格を採用しています。

TurboPower(ターボパワー)

「TurboPower」はモトローラの急速充電規格です。moto g8 plusやmoto g8 powerがTurboPowerに対応しており、同梱する充電器を使用して最大18Wで充電できます。

なお、モトローラの最新機種でもTurboPowerに対応していない機種もあります。

SuperVOOC(スーパーヴォーク)

「SuperVOOC」はOPPO独自の充電規格です。最大65Wでの充電が可能で、OPPO Find X2 ProやOPPO Reno3 5Gなどの最新機種が対応しています。

まだ対応機種は登場していませんが、4000mAhのバッテリーを20分でフル充電できる125Wの急速充電テクノロジー「OPPO 125W flash charge」も発表されています。

80W Mi Wireless Charging Technology(80ワット ミ ワイヤレスチャージングテクノロジー)

「OPPO 125W flash charge」と同様に製品化の発表はされていませんが、「80W Mi Wireless Charging Technology」は、中国のスマホメーカーXiaomi(シャオミ)が開発した80Wのワイヤレス充電システムです。

充電スピードは4000mAhの場合、19分で100%まで充電できます。さらに、日本では購入できませんが「Mi 10 Ultra」は最大120Wの高速充電に対応しており、4500mAhのバッテリーが23分でフル充電できます。

急速充電におすすめの充電器

充電器を購入する時は、1ポート当たり何Aで充電できるかチェックしましょう。なお、アンカーによると、2.4A以上で充電できる製品を選べば、現在販売されているほぼすべての機種で急速充電ができるそうです。

Quick Charge対応

Quick Chargeに対応している充電器は、アンカーから数多く販売されています。主な違いは、Quick Chargeのバージョンとポート数です。自分が持っているAndoroidスマホの対応バージョンや、タブレットを併用しているなど、状況に合わせて選ぶとよいでしょう。

Anker PowerPort Speed 4

Anker PowerPort Speed 4

「Anker PowerPort Speed 4」は、Quick Charge3.0ポートが1つと、Power IQ対応のポートが3つの構成です。スマホと一緒とモバイルバッテリーを同時に充電できます。

cheero USB AC Charger QC3.0 ACアダプター(CHE-315)

スマホ 急速充電 充電器 ケーブル おすすめ

cheero社からもQuick Charge対応の充電器(CHE-315)が発売されています。ポートは1つですが、43×42.7×37.5mmのコンパクトなサイズになっています。

USB PD対応

USB PDで充電をする場合は、対応するアダプターとケーブルを選ぶ必要があります。

Anker PowerPort I PD - 1 PD & 4 PowerIQ

Anker PowerPort I PD - 1 PD & 4 PowerIQ

「Anker PowerPort I PD - 1 PD & 4 PowerIQ」は、最大30WのUSB PDに対応したUSB Type-Cポートを1つと、PowerIQに対応した最大2.4A出力のUSB Type-Aポートを4つ搭載しています。

スマホの他にも、タブレットやモバイルバッテリーなど複数の製品を同時に充電したい人におすすめです。このほか、ポート数やサイズの異なる商品がいくつか用意されているので、利用用途や台数によって選んでください。

Quick Charge非対応

iPhone 7以前を持っているユーザーは、Quick ChargeやUSB PDに対応した製品を購入する必要はありません。もちろんQuick Charge対応の充電器も使えますが、値段が高いので非対応の製品で十分です。

Anker PowerPort2 Elite(A2023111)

スマホ 急速充電 充電器 ケーブル おすすめ

「Anker PowerPort2 Elite(A2023111)」は2ポート合計4.8Aまで出力可能です。

RAVPower 40W 4ポート USB充電器(RP-PC026)

スマホ 急速充電 充電器 ケーブル おすすめ

多数のポートを搭載している製品(RP-PC026)もあります。スマホやタブレット、モバイルバッテリーなど複数の機器を持っている人におすすめです。

急速充電におすすめのケーブル

ケーブル選びも重要です。充電スピードに影響するのはもちろんですが、安いケーブルは流れる電流や電圧をコントロールできず、スマホが壊れる原因になるおそれもあります。

USB PD対応ケーブル

ケーブルは、3A出力と5A出力のUSB PD対応ケーブルをチェックしましょう。5A出力のケーブル2999円なのに対して、3A出力のケーブルは999円と、およそ3分の1の価格になっています。

Anker PowerLine III USB-C & USB-C 2.0 ケーブル(3A出力 PD対応)

急速充電 おすすめケーブル

Anker USB-C & USB-C Thunderbolt 3 ケーブル(5A出力 PD対応)

Anker USB-C & USB-C Thunderbolt 3 ケーブル

Lightningケーブル(iPhone向け)

Anker iPhone充電ケーブル PowerLine II ライトニングケーブル

急速充電 おすすめケーブル

iPhoneを充電するスタンダードなLightningケーブルです。LightningケーブルはApple社の認可が出たMFi認証製品が各メーカーから販売されており、Ankerも取得しています。また、Ankerのケーブルは丈夫なことでも知られており、5000回以上曲げても傷がつきません。

Anker PowerLine+ III USB-C & ライトニングケーブル

急速充電 おすすめケーブル

USB Type-Cコネクタを搭載したLightningケーブルもあります。USB Type-C対応の充電器を持っている人は、こちらのケーブルを購入しましょう。

AUKEY USB-C Lightning ケーブル

急速充電 おすすめケーブル

Lightningケーブルは様々なメーカーから発売されています。「MFi認証済み」と記載されたAppleが承認しているケーブルが安心です。

microUSBケーブル(Androidスマホ向け)

Anker PowerLine Micro USBケーブル(A8132021など)

スマホ 急速充電 充電器 ケーブル おすすめ

microUSBケーブルも何種類か用意されています。0.9m、1.8m、3.0mの3種類があるので、用途を考えて選ぶのがよいでしょう。

その他

cheero 2 in1 Retractable USB Cable with MicroUSB & Lightning(CHE-241)

スマホ 急速充電 充電器 ケーブル おすすめ

microUSBとLightningの両方を接続できる2 in 1タイプのケーブルもあります。iPhoneとAndroidスマホを2台持ちの人なら、荷物を減らすことができます。

構成・文:藤原達矢

編集:アプリオ編集部

取材協力:アンカー・ジャパン

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