プロカメラマンに訊く、スマホ写真の撮り方 これだけは押さえたいテクニック

プロカメラマンに訊く、スマホ写真撮影 これだけは押さえたいテクニック

家族スナップや食べ物、旅先の風景など、最近はもっぱらスマホで写真の撮影をしている人が多いのではないでしょうか。撮ったらすぐInstagramLINEなどSNSにアップし、友だちと共有できるので便利です。

本記事では、スマホの写真撮影をワンランクアップするテクニックを紹介します。iPhoneで数々の作品を生み出し、「iPhonegrapher」として有名なプロカメラマンの三井公一さんに撮影ワザを教えてもらいました。

スマホカメラで写真撮影する際の基本

被写体ごとの撮影のコツを説明する前に、どの被写体を撮る時でも共通する基本ポイントを紹介します。

レンズの汚れを取る

撮影以前の問題ですが、レンズはきれいにしておきましょう。スマホを使っていると指でレンズを触ってしまい、皮脂が付着して汚れやすいもの。レンズが汚れていれば当然、画像がぼやけてしまいきれいに撮れないので、事前に拭いておきましょう。

被写体が一番よく映るように気を配る

人物であれば乱れた髪や服装を整える、料理を撮影する時は周りにあるナプキンや伝票といった不要な物を避けるなど、少し気を遣うだけで写真の出来栄えが変わってきます。ときには、自分がカメラを持って動いても良いでしょう。何気なくシャッターを切るのではなく、被写体の見栄えが良くなるように配慮してください。

デジタルズームには注意

遠くの被写体を大きく写すズームには、「アナログズーム」(光学ズーム)と「デジタルズーム」の2種類があります。使い方に気をつけたいのがレンズを動かさずに被写体を大きく写すデジタルズームです。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

スマホのデジタルズームは画質が落ちるのでNG。構図はできるだけ被写体に近づいて調整を

撮影した画像を引き延ばして被写体を大きくする方式なので、拡大するほど画質が落ちてしまいます。iPhone 7 Plusなど、アナログズームを搭載しているスマホもあります。自分が使っているスマホのスペックを確認してみてください。

スマホを固定して写真のブレを防ぐ

スマホのカメラは気軽に起動できるせいか、片手で持ってパシャパシャ撮っている人をよく見かけます。しかし、ブレを防ぐためにも、スマホはしっかり両手で構えて撮影しましょう。食事の席などテーブルがある場所では、肘をついて固定するのもおすすめです。

グリッド表示をする

グリッド表示をするとディスプレイに縦横の線が引かれて、被写体を収める位置の目安になります。構図のポイントはスマホもデジカメと変わらないので、表示しておくと便利です。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

iPhoneでは「設定」アプリから[写真とカメラ]と進んで、[グリッド]にオンにすればグリッド線が表示できる

被写体ごとの撮影のコツを知ろう

被写体に応じて、より具体的な撮影のポイントを解説します。

人物の撮影

「首切り」や「串刺し」に注意

人を撮影するときに注意したいのが、「首切り」や「串刺し」と呼ばれる構図です。首切りとは、背景の橋や水平線などが、首のラインにかかってしまうこと。縁起が悪く、写真を見る人の視線も橋などにいってしまいがちになるので避けましょう。

また、串刺しとは、頭のてっぺんから木や鉄塔が生えているように見える構図のこと。こちらも格好悪く見えるのでNGです。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

背景の橋で首を切ったり、頭から何かが生えているように見えたりしていないか要チェック

光源の位置がポイント

友達でも彼氏・彼女でも、撮影をする時は話しかけて自然な笑顔を引き出しましょう。雑談をしながらすばやく何枚か撮ることで、ベストな1枚を収めることができます。

また人を撮影する時は、光(太陽やライト)の位置が重要です。光源の位置によって、様々な効果が期待できます。最もスタンダードなのは、被写体の正面に光源がある「順光」です。顔や体の正面に光が当たり、明るくはっきりとした写真が撮れます。また、スマホのカメラによっては「ポートレートモード」が搭載されています。使うと背景をぼかして、被写体をより際立たせることができます。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

ポートレートモードを使うことで、背景ボケがきれいな写真を手軽に撮影できる。笑顔を引き出すことも忘れずに

反対に「逆光」の状態で撮ると、人物が暗くなり迫力のある写真が撮れます。もし人物が真っ黒になってしまう場合は、露出を調整しましょう。iPhoneの場合、ピントを合わせたい場所をタップすると太陽のマークが表示されます。その状態で画面をスライドすると、露出を変更することができます。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニックスマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

露出を調整して好みの明るさでシャッターを切ろう

モノ・料理などの撮影

食べ物を撮る時は「シズル感」を意識

「シズル感」とは、食材の瑞々しさや新鮮さ、ツヤといった、人がおいしそうだと思う感覚のこと。食べ物や飲み物を撮影する場合には、ぜひ意識してほしいポイントです。たとえば、夏にうれしい冷たいドリンクなら、氷が光に当たってキラキラ反射している様子を撮影してみましょう。食事なら、タレやドレッシングのテカりや野菜に付いている水滴などを意識して撮るのもおすすめです。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

氷やミントについた水滴を写して、清涼感を感じるように表現

食事が一番美味しそうに見える位置を探す

モノや料理を撮影する場合は、構図や奥行きを意識してみてください。料理写真なら、主役はどの食材で、どんな角度から撮影するのが一番おいしそうかを、お皿を回して考えてみましょう。

また、お皿全体を取ろうとするのではなく、素材の一部分だけにグッと寄ることで、よりインパクトのある写真になり、主役の素材が際立ちます。複数のお皿を並べて、手前の料理だけにピントを合わせるのも良いでしょう。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック
スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

構図やピントを合わせる部分を意識し、料理が美味しく見えるように工夫したい

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

お皿全体を撮ろうとするよりも、食材をしっかり目立たせることを考えよう

ズームで撮影する

ほとんどのスマホカメラは、広角レンズが採用されています。意識しないと気づきにくいですが、ズームせずに撮影するとモノやお皿が歪んで写るので注意しましょう。ズームで撮影することで、歪みを解消することができます。画質が落ちない範囲で倍率を調整してください。また、自分の手やスマホの影が映りこむことも防げます。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

丸いはずの時計が少し歪んでいる。モノを撮る時はできるだけズームで撮影しよう

風景の撮影

タテ構図とヨコ構図の両方で撮影

風景写真は、ぜひタテ構図とヨコ構図の両方を撮ってみてください。同じ景色でも、構図を変えるだけで印象は大きく変わります。複数枚撮っておくと後でトリミングがしやすく、InstagramなどのSNSにアップする時もより良い写真を選べます。

また、HDR機能も活用しましょう。HDRとはHigh Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略で、シャッターを切ると異なる明るさ(露出)の写真を自動で複数撮影して、自然な明るさになるように合成してくれます。HDR機能を搭載しているスマホで撮影する場合は、設定をオンにしておきましょう。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック
スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

構図や角度を変えて何枚か撮り比べると、空の広さや手前を流れる川のダイナミックさなど、どちらか一方の構図を見ているだけでは気づかなかった発見がある

余計なものは写さずシンプルな構成に

風景を撮る時は、余計なモノや人が写り込んでいないかよく確認してください。色や明るさは撮影した後に編集で変えられますが、写ってしまったものを撮影した後に取り除くのは大変です。またシャッターを切る前に、何を撮りたいのかをはっきり意識して、それ以外のものはできるだけ写さないほうがよいでしょう。

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

写真の手前は河原になっていたが、この風景には不要と考えて排除している

撮影した写真の編集に便利なアプリ

構図や設定も大事ですが、撮影した写真は編集することで、より自分好みに仕上げることができます。写真は撮りっぱなしにせず、ぜひ編集をしてみてください。三井さんのおすすめアプリは「Snapseed」です。

編集操作をできるかぎり縦横のスワイプでおこなえるように設計されており、初心者でも編集メニューに従って、彩度や明るさなどを簡単かつ直感的に変えることができます。また、編集したい場所をタップして、選択した部分だけを調整することも可能です。

写真加工・画像編集:iPhoneアプリおすすめ6選
写真加工・画像編集:Androidアプリおすすめランキング

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニックスマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

各種ツールを使って編集できる。今回は「画像調整」から、コントラストや彩度などを変更した

スマホ 写真 カメラ撮影 テクニックスマホ 写真 カメラ撮影 テクニック

時計やテーブルの色が濃くなって見栄えが良くなった

まとめ

スマホでも基本的な撮影手法を押さえるだけで、見違えるような写真が撮れるようになります。今回紹介したポイントを参考に、撮影の腕を磨いてみてはいかがでしょうか。写真撮影が上達することで、SNSのいいねも増えるかもしれません。

構成・文:藤原達矢

取材協力:三井公一

編集:アプリオ編集部