『ロザライン』ロミオとジュリエットを大胆にアレンジしたコメディ

ジュリエットの従姉妹・ロザラインを主人公にした物語

世界中で知られている不朽のラブストーリー『ロミオとジュリエット』。シェイクスピアが描いた悲恋の物語として有名なこの戯曲は、世界中の舞台で上演され続け、何度も映画化されています。

そんな名作を大胆にアレンジし、現代的な感覚で味付けしたのが、2022年10月からディズニープラスで独占配信されている『ロザライン』です。

本作は、『ロミオとジュリエット』で序盤のみ登場するジュリエットの従姉妹・ロザラインを主人公にした物語です。ジュリエットに出会う前のロミオはロザラインに言い寄っていたのですが、ジュリエットに出会ったとたんに乗り換えてしまい、悔しいロザラインは2人の仲を裂こうとするという筋書きです。

典型的なラブストーリーなら、ロザラインは恋の邪魔をする「悪役」とも言えるポジションですが、この絶妙なポジションにスポットを当てたからこそ、本作はユニークな作品に仕上がっています。

ロミオの元カノ・ロザラインは現代的な女性?

モンタギュー家のロミオは、家同士が敵対同士の関係にあるロザラインの元に忍び込み、愛を語り合っています。詩的な表現で愛をささやくロミオに対して、「なんでそんな芝居がかっているの?」とつっけんどんなロザラインですが、隠れて育む愛の物語にまんざらでもない様子。

しかしある日、キャピュレット家の娘であり、自身のいとこであるジュリエットが屋敷に戻ってくると、事態は一変します。仮面舞踏会の日、ロザラインは父親にむりやり押し付けられた見合いの相手とボートで遭難している最中、ロミオがジュリエットに出会って恋に落ちてしまうのです。

その日以来、ロミオがロザラインに会いに来ることはなくなりました。悔しいロザラインは2人の仲を引き裂こうと画策しますが……。

本作は『ロミオとジュリエット』が作られた当時の時代を反映した作品。ロザラインは極めて現代的な主張する女性として描かれます。それが、当時の貴族社会では反抗的でなまいきな女に写るのでしょう、鼻持ちならない奴と扱われています。

そんな女性が2人の恋路を邪魔するという展開になるので、普通の恋愛映画では確実に「悪役」です。しかし、悪役だからこそ理不尽な社会構造に反逆できることもあるわけです。

ロザラインと日本の悪役令嬢ものの類似点

本作は、脇役の女性を主人公にすることで、古典の再解釈を試みています。そして、登場人物の運命を変えていきます。

こうした物語構成は、実は近年ライトノベルやマンガの分野で「悪役令嬢もの」というジャンルでよく見られるものです。悪役令嬢ものは、現代人が乙女ゲームの世界の、主人公のライバル的な悪人の令嬢に転生してしまい、ゲームの展開の中で死んでしまう運命を頑張って変えるというストーリーが典型です。

転生先の乙女ゲームの世界は貴族世界が多く、ゲーム中のメインヒロインは誰からも好かれそうな素敵な女の子として描かれます。一方で悪役令嬢は、目上の男にも盾突くし、やたらと行動的で、しきたりも運命も自分で変えてみせるという態度で描かれます。悪役というポジションだからこそ、当時の社会の因習をぶっ壊すエネルギーを持っているのです。

本作の物語は、ロザラインがメインヒロインのジュリエットの邪魔をする存在で、本来なら恋敵ポジション。そして、勝気な性格ゆえに貴族社会の慣習にとらわれず、ずけずけと男相手に物申すキャラクターとして描かれています。ロザラインの物語上のポジションとキャラクター付けは、悪役令嬢ものの主人公と多くの共通点を持っています。

本作の原作小説は2012年にアメリカで発表されています。その頃、ちょうど日本では「小説家になろう」などのサイトで悪役令嬢もののジャンルが活性化しだした時期ですので、日本とアメリカ両方で似たような想像力が発揮されていたのですね。

決められた運命をものともせずに突き進むエネルギッシュな主人公の姿は、現代人にとって共感を呼ぶ存在と言えるでしょう。

『ロザライン』を見る(ディズニープラスで配信中)

『ロザライン』のストーリー

シェイクスピアの古典的なラブストーリーをジュリエットのいとこのロザラインの視点から、新鮮かつコミカルに描く。

ロミオがジュリエットを追い始めたことに心を痛めたロザラインは、有名なロマンスを阻止しようとする。

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