世界は謎だらけだからこそ楽しい、映画『ペンギン・ハイウェイ』は好奇心に満ち溢れた青春ファンタジー

世界は謎だらけだからこそ楽しい、映画『ペンギン・ハイウェイ』は好奇心に満ち溢れた青春ファンタジー

世界には解き明かされていない謎が、まだたくさんあります。

アニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』はそんな未知に向き合う楽しさを、年上のお姉さんへの淡い恋心とともにさわやかに描いた作品です。

頭が良くて好奇心旺盛な小学生・アオヤマ君の住む街に突如ペンギンが大量発生することから起こる不思議なひと夏の体験を、新進気鋭のアニメ作家・新井陽次郎と石田祐康が率いるスタジオ・コロリドが見事なSFジュブナイル映画として作り上げています。

ペンギン大量発生から始まる大騒動

小学校4年生のアオヤマ君は、何事にも研究熱心で、身の回りのことを何でも調べて研究ノートにまとめています。ある日、彼の住む街でペンギンが大量発生し、この不思議な現象をアオヤマ君は友人のウチダ君と研究することに。しかし、ペンギンがどこからやってくるのか皆目手がかりがつかめせん。

アオヤマ君には、もう一つ大きな研究対象がありました。それは歯科医院に勤めるお姉さん。なぜお姉さんのおっぱいは大きいのか、そして、それを見ているとなぜドキドキするのかを不思議に思うアオヤマ君にとって、お姉さんはミステリアスな存在です。そして、ある日、その2つの謎がつながるのです。

お姉さんは、アオヤマ君の前でコーラの缶をペンギンに変えてしまいます。しかし、お姉さん自身にもその原理は謎。アオヤマ君はお姉さんとともにその謎を研究することに。

さらにアオヤマ君の周りには謎が集まるようになっていきます。クラスメイトの女子・ハマモトさんから、森を抜けた草原に浮遊する不思議な水のかたまりを見せられます。「海」とハマモトさんが呼んでいるその物体は、吸い込こまれたものは戻ってこず、ペンギンに攻撃されると消えてしまうのです。

お姉さんが出すペンギンの謎、そして海と呼ばれる球体の謎、様々な謎が重なり、アオヤマ君は未知の世界への答えを求めて研究を続け、一つの仮説を得ます。しかし、それはお姉さんとの別れを意味するものなのです。

突如現れるペンギンや浮遊する水の塊など、ファンタジー要素も強い作品ですが、現実の世界でも未解明の謎も散りばめられているのが本作のポイント。例えば、アオヤマ君はお姉さんのおっぱいに興味津々ですが、それが性的な興味だけではなく、実際に女性の胸が膨らむ理由は未だ解明されていないことにも起因しています。女性の胸の膨らみは現実でも本当に謎であり、おっぱいネタは、ただの下ネタというわけではなく、それは本作において、世界に存在する未解明の謎の象徴でもあるのです。

世界は折りたたまれている?

本作に登場する謎の水の球体「海」は、物質を吸い込んでどこか別の世界に転送します。この「海」のモチーフはおそらくブラックホールでしょう。ブラックホールと言えば、未知の代名詞のような存在ですが、あらゆるものを吸い込み、どこか別の世界とつながっている穴というのが一般的なイメージでしょう。本作の海もそのような存在として描かれています。

この「海」の不思議な現象に悩むアオヤマ君に、アオヤマ君のお父さんが「世界の果ては折りたたまれて内側に入り込んでいる」と説明するシーンがあるのですが、これは宇宙の謎を解き明かすかもしれないと期待される「超弦理論」の応用と思われます。

超弦理論とは、物理学の理論の一つで、ブラックホールの解明にも援用できることが期待されている理論です。この理論では、世界は9つの空間次元と時間という次元の10次元があるとされ、人間が認識できるのは3次元と時間をあわせた4次元まで、残りの6次元は量子レベルでコンパクトに折りたたまれ、人間には見ることもできなければ観測することもできないものとされています。現段階では観測不可能なため、理論止まりの世界ですが、裏返せばこの世界にはまだ未知の領域がたくさんあるのだということです。文章ではイメージがつかみにくいかもしれませんが、本作ではそれを映像で直感的にわかるように描いています。

本作を鑑賞すると、そんな世界の未知をもっと知りたくなるでしょう。大人になって忘れかけていた好奇心を持つことの大切さを取り戻させてくれる素晴らしい作品です。

動画配信サービスの「Amazonプライム・ビデオ」と「FOD(フジテレビオンデマンド)」、「Netflix(ネットフリックス)」では、『ペンギン・ハイウェイ』が見放題です(2020年5月9日時点)。

構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部