韓国ドラマ『私たちの映画』は、そのタイトル通り映画製作にまつわる物語です。俗にいう「バックステージもの」というやつで、華やかな世界の裏側の複雑な人間関係や、映画に賭ける情熱などが描かれることが多い題材といえます。
本作は、高名な映画監督を父に持つ若き才能が、余命わずかの女優と出会い、スランプに陥っていた青年が恋と夢を取り戻していく様を情熱的に描く、ラブロマンスです。
映画やドラマにおいて「余命もの」は数多く作られており、今では「安易な設定」とか「安っぽいお涙頂戴もの」などと言われることもあります。しかし、現実に余命わずかな生をおくっている人を目の前に、それは本当に安っぽいだけのものなのか、再考を迫る迫力を持った作品です。
人生の時間を失った男と、時間がない女の運命の出会い
デビュー作が高い評価を得た上に観客動員500万人を記録した若き映画監督のイ・ジェハ(ナムグン・ミン)は、スランプに陥ります。数年間仕事ができず、家に引きこもって次回作の準備中ということにしてごまかしているのです。
一方、その彼のデビュー作で頭角を現したプロデューサーや俳優たちは、業界で華々しく活躍しています。プロデューサーのスンウォンはそんなジェハを見かねて新作映画の試写に招待し、旧友や元恋人の女優・チェ・ソヨンとも再開。2人とも様々な感情が混じりつつも、ジェハの才能を認めており、このままくすぶっていていい人材とは考えていないようですが、ジェハは新作を作れる気がしていません。
そんな折、スンウォンのもとにジェハの父の代表作『白い愛』のリメイクの企画が舞い込んできます。これを撮れるのはジェハしかいないと白羽の矢を立てるのですが、ジェハにとって『白い愛』は、ある出来事から受け入れるのが難しい作品でもありました。しかし、ジェハが断れば、濡れ場だけが見せ場の安っぽい監督に回ってしまうということで、ジェハはそのリメイク企画に取り組むことに決めるのです。
『白い愛』の主人公は余命宣告を受けるという設定であり、昔ならいざ知らず、現代では手垢のついた内容です。これを現代的にするために、ジェハはアドバイザーを求めます。そうして、彼の前に現れたのが、実際に余命宣告を受けた女性、イ・ダウムでした。
ダウムはジェハのデビュー作のファンのようで、折に触れてジェハや出演者のソヨンに偶然を装って会っていました。彼女はそればかりか、残り少ない人生で女優に挑みたいと決意、『白い愛』リメイクのオーディションを受けることにするのです。
「余命もの」は、映画やドラマでは陳腐なネタとされます。ジェハも最初はそう思っていました。このネタを現代的にどうアレンジするのかと悩んでいたところに、実際に今を生きる末期患者と出会ってしまうという展開が秀逸です。
演技派ナムグン・ミンとチョン・ヨビンの共演に注目
本作で主人公・ジェハを演じるのは、演技派ヒットメイカーとして名高いナムグン・ミン。「2020 SBS演技大賞」、「2021 MBC演技大賞」と2年連続で演技大賞を受賞した彼の実力は折り紙付き。強烈な悪役を演じた『リメンバー〜記憶の彼方へ〜』からラブコメディ『恋のトリセツ〜フンナムとジョンウムの恋愛日誌~』まで幅広い作品と役柄を演じてきました。今回、彼が演じるのは偉大な父の名前のプレッシャーに押しつぶされそうな繊細な青年監督。今回は影のある繊細な演技で、また新しい顔を見せてくれています。彼の落ち着いた佇まいと静かに燃やす情熱が作品を牽引しています。
ヒロインのダウムを演じるのは、『ヴィンチェンツォ』の個性的な弁護士役で、一気にファンを増やしたチョン・ヨビン。彼女もまた演技力に定評のある役者で、「千の顔を持つ」と言われる多彩な役を演じることができる存在です。そんな彼女が、女優になるのが夢の女性を演じるのは、ある意味ではユニーク。女優になりたい、女優未満の存在をいかに実力派が演じるのかも、本作の注目ポイントです。
脇を固めるイ・ソル(ソヨン役)やソ・ヒョヌ(スンウォン)といった実力派に加えて、ソ・イソといった若手の注目株も出演。キャストのアンサンブルがどんな化学反応を起こすのかも注目です。
時間を無駄にしてきた監督と、時間がないヒロイン。 対照的な2人が出会い、限られた時間の中で紡いでいく、一本の映画と一つの恋。彼らがどんな映画を完成させ、そして、2人の恋はどんな結末を迎えるのか、最後まで目が離せない展開が続きそうです。
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ジェハは巨匠である父親の影から抜け出せず、デビュー作以降5年もスランプに陥っていた。ダウムは俳優として成功できず、余命いくばくもない。ジェハとダウムの人生にはロマンチックな愛も映画のような瞬間も訪れそうになかった。2人が出会うまでは。
ジェハは父の代表作のリメイクをオファーされるが断る。そんなジェハの前に妙な女が現れた。諮問を求めようとしている時に出会ったイ・ダウムだ。彼女は余命宣告されていた。しかも彼女はオーディションにまで現れて、主役を演じたいと言いだす。
死を前に一度だけでも主人公になりたいダウム。ダウムに出会い、ジェハの止まっていた時間が動きだす。
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