ドコモのスマホ販売戦略の転換
2013年5月15日のドコモのスマートフォン夏モデル発表会で非常に注目されたのが、加藤社長が打ち出した「ツートップ」戦略だ。
ツートップに据えられたのは、「GALAXY S4」(Samsung)と「Xperia A」(ソニーモバイルコミュニケーションズ)の2機種。これら2機種は、実質負担額の大幅引き下げやドコモ主導のプロモーションなどによって、他機種と明確に差別化される。2013年春モデルでは、ドコモ自身が「Xperia Z」をイチオシ機種として紹介していたが、販売・プロモーション面でここまでの差別化は行われなかった。
実質負担額の大幅引き下げ
実質負担金だが、既に発売済みの「Xperia A SO-04E」は最低5,040円、5月23日に販売開始の「GALAXY S4 SC-04E」は最低15,120円となる。一方、5月24日に販売が開始される「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」(シャープ製)は、実質負担金が42,000円となっている。
なぜ、ここまで価格に差が生じるのか。
まず、ツートップ機種については、10年以上ドコモを利用しているユーザ向けに「ありがとう10年スマホ割」、フィーチャーフォン等から機種変更するユーザ向けに「はじめてスマホ割」が適用されるため、最大20,160円の値引きが行われるからだ。
さらに、ツートップ機種は月々サポートが他機種より増額されているため、仮に割引が適用されない場合でも他機種より低価格で購入することができる。月々サポート額は以下のとおり。
- Xperia A…52,920円
- GALAXY S4…47,880円
- AQUOS PHONE ZETA…32,760円
プロモーション
また、ツートップ機種はプロモーション面においても、明確に差別化され優遇されている。
夏モデル発表会においても、それは顕著だった。加藤社長が実機でデモンストレーションしたのはツートップ機種のみだったし、実機体験コーナーにおいてもツートップ機種のブースが中央に大きく配置され専属コンパニオンもつけられていた。
広告プロモーションにも2機種の特別扱いがはっきり現れている。
ツートップ戦略をユーザーは支持するか?
Google+において編集部がアンケートを取ったところ、結果は以下のとおりとなった。
ユーザーの声
支持する
ツートップでiPhoneに強烈に勝つためにはもっと大胆に。
また、Xperia A を選んでいる点など、「ツートップ」が合っていると思う。
マニアは勝手に調べて勝手に買うしね。
正直に言うと、国内メーカーは技術力をアピールしたいことだけに執心して安定性というのをないがしろにしている感があるので、安心して使えると言うことをアピールするためにやる施策なのだから外れた話でもないと思う。
むしろ、それくらい国内メーカーの作る端末が酷いのだという反省を感じて欲しいモノです。特に某FT社とかね。キャリアだって買い取りで端末を買っているんだから修理対応だの無償交換だのしていてメリットがあるはずがない。
むしろ、キャリアの保護に甘えていた当然の結果ではないのか?今や、技術よりも、ソフトウェア力の方が重要だと言うことを国内メーカーはもっと真剣に考えるべきだとおいらは思う。
また、たくさんの機種が並ぶことは、選べる人には好都合だけど、ライトユーザーには選択肢を絞って提示したほうがより選びやすい。
支持しない
最終的にどの機種を選ぶのかはユーザーが決めるのであり、ドコモが決める物ではない。
販売価格差を付けることにより、販売員はそれらを当然強く推せば良いので販売面では楽かも知れないが本当にユーザーのことを考えている対策には到底思えない。
買い手無視の売りたいツートップにしか見えない。
例えば、docomoがiPhoneを扱って「iPhone戦略」ならなんとかわかりますが、他にもAndroid端末機を扱っているのに、「ツートップ」。
意味がわかりません。
他のメーカーに失礼だし、もっと良い機種を扱っているメーカーがあると思います。だから、支持しません。
編集部コメント
ケータイウォッチによれば、ドコモ加藤社長は発表会後の囲み取材で次のように語った。
「これまでドコモファミリーとも呼ばれていた国内メーカーとの関係が崩れても良いと考えたのか」という問いに対して、加藤氏は「誤解のないようにお願いしたい。ドコモでは、国内メーカーと特別なことをやってきたわけではない。特にスマートフォンでは、国内外から良い商品を提供するメーカーから調達してきた。これまでの結果があるなかで、今回は、これが強そうだとして選定した。結果として売れるものと売れないものは出てくる。それは甘受しなければならない」とコメントした。
加藤氏によれば、ドコモでは、社内のアンケート調査などを通じてツートップを選定したとのこと。冬モデルでも、そうした推奨機種を用意する方針だが、販売数など夏モデルの成績、あるいはメーカーで判断するのではなく、冬モデル候補の中から良い商品を見出してプッシュしていくという。
加藤社長の語ったように、スマートフォンそのものの「強さ」や「良さ」を考慮してプッシュする製品を選別することは、必ずしも間違いとは言えないだろう。
しかし、今回のツートップ戦略のように価格面で大幅に差別化を図るとなると、問題はそう単純ではなくなる。現段階でスマホに移行していないユーザー層が、大胆な価格差別化戦略によってどのように動いていくのか、ドコモは周到に計算しているはずだ。
既に「NTTドコモはサムスンとソニーに、それぞれ100万台以上の発注をしたようだ」という国内メーカー担当者の声があるように、ツートップ機種とその他の機種との販売台数の差は相当な開きが出てくることが予想される。
実際に、販売台数にどこまでの影響が出てくるのかは、この夏を待てばはっきりするだろう。
その結果、秋モデルまたは冬モデルにおいてもツートップ戦略が継続されるとすれば、選別されるのはいずれのメーカーになるのか。そして、ドコモの次の選択を国内メーカーが「甘受」できるのだろうか。