熟年夫婦に大事なものとは? 映画『31年目の夫婦げんか』が描く夫婦円満の秘訣

熟年夫婦に大事なものとは? 映画『31年目の夫婦げんか』が描く夫婦円満の秘訣

長年連れ添った円満夫婦を見かけると幸せな気分になりますよね。でも、はたから見れば問題なんて何もなさそうな夫婦も、実はいろんな問題を抱えているかもしれません。映画『31年目の夫婦げんか』は、そんな一見円満そうな熟年夫婦の、愛と性生活についての物語です。

成人済みの息子2人を育てたソームズ夫妻が、性生活を失い、心が離れてしまいそうな現状を打破しようとカップルセラピストに通う物語で、長い夫婦生活で誰もが直面する危機をコミカルに描いています。

円満な夫婦も実は誰かが我慢している

結婚生活31年目の熟年夫婦、ケイ(メリル・ストリープ)とアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)。長年連れ添った2人は、寝る時は別々のベッドになって久しいのですが、ケイにはそれが不満でした。ある日、ケイが一緒に寝ることを提案すると、アーノルドはきょとんとした表情で拒否してしまいます。

もう若いカップルではないので、ベタベタしたくないと考えているアーノルドですが、ケイはもっと自分に触れてほしいと内心思っていて、長年不満を溜めていました。ケイはある日、メーン州にある滞在型のカップルカウンセリングを知り、アーノルドに相談せず申し込みます。渋々ながら参加することにしたアーノルドですが、カウンセラーのフェルド医師(スティーブ・カレル)の立ち入った質問に苛立ってばかり。しかし、フェルド医師の巧みな誘導により、アーノルドの心も徐々に開き始め、夫婦生活を取り戻させるために、様々な課題に挑戦していきます。

最初は1つのベッドに寝るところから始め、課題をクリアしていく2人は徐々に若い頃の情熱を取り戻し始めます。しかし、性的に保守的な2人はなかなか一線を越えることができません。そうしたやりとりの中で、普段の生活に対するお互いの不満も噴出したりなど、本音が漏れ始めるのです。

性生活は夫婦にとってとても重要なものです。セックスレスが理由で離婚を選ぶ夫婦も少なくありませんが、結婚31年目の熟年夫婦にだって、愛を確かめ合う時間は必要です。しかし、現実には年をとるとそうした行為自体を気恥ずかしく思う人は多いのではないでしょうか。

「これじゃ2人の労働者が共同生活しているだけ」という台詞が出てくるのですが、実際に夫婦生活がそういう状態になっている家庭も世の中にたくさんあるのでしょう。この映画はそんな夫婦にこそ観てほしい作品です。

そして夫のアーノルドは、夫婦の関係に何も問題がないと考えているのに、妻のケイは多くの不満を持っていることが描かれていますが、夫婦円満に見える家族も実はどちらかの我慢によってそれが成り立っているというのもよくあることのように思います。本作は、そういう偏った状態に置かれている夫婦の関係を是正する物語なのです。

パートナーを観るのに最適な映画?

夫婦を演じるのは、トミー・リー・ジョーンズとメリル・ストリープ。トミー・リー・ジョーンズがロマンティック・コメディに出演するのは珍しいですが、お固いイメージを上手に活用して、堅物な夫を好演しています。そして、メリル・ストリープは貞淑な主婦として振る舞っているものの、実は不満を抱えている中年女性を軽やかに可愛らしく演じています。彼女は、何を演じさせても本当に上手いですね。

どんなに長く一緒にいる夫婦も、ときめきを無くしては愛を見失ってしまうことがあります。結婚されている人は、ぜひパートナーと観てほしい作品です。素敵な結婚生活を営む上で、多くの学びがある作品です。

動画配信サービスの「Amazonプライム・ビデオ」では、『31年目の夫婦げんか』が見放題です(2019年10月11日時点)。

構成・文:杉本穂高
編集:アプリオ編集部