Google製のスマートフォンが久々に日本でも発売されます。5.5インチの「Pixel 3」と6.3インチの「Pixel 3 XL」です。今回はPixel 3(ピクセルスリー)をiPhone XSと比べながらレビューしていきます。
価格は64GBモデルが9万5000円、128GBモデルが10万7000円となっています。これはSIMフリー版のプライスですが、他にもNTTドコモとソフトバンクで取り扱われます。なおiPhone XSの価格は、64GBが11万2800円、256GBが12万9800円、512GBが15万2800円ですから、Pixel 3は64GBモデルで2万6000円ほど割安です。
「Pixel 3a」レビュー、4万円台から買える注目モデルを上位のPixel 3やiPhoneとも比較
本記事では、Pixel 3のSIMフリーモデルをレビューします。価格はすべて税込表示です。
サイズは頃合い、iPhone XSよりやや細い
まず気になるサイズですが、手にしてみると非常にスリムです。iPhone XSと比べてもやや細いので、持つとスマートな印象を受けるでしょう。さらに、148グラムと最近の高級スマホの中ではかなり軽いほうです。手の小さな人、iPhone XSでさえ大きいと思うユーザーには魅力的なデバイスとなっています。
ディスプレイ | サイズ | 重量 | |
---|---|---|---|
Pixel 3 | 5.5インチ | 145.6×68.2×7.9ミリ | 148グラム |
iPhone XS | 5.8インチ | 143.6×70.9×7.7ミリ | 177グラム |
ただし実際に使い比べてみると、Pixel 3は「画面が狭いな」と感じるかもしれません。スペック上のサイズは、5.5インチと5.8インチであまり変わりません。また、ディスプレイ自体の横幅を定規で測ると、どちらも約62ミリと同様なのです。
ところがiPhone XSは、ワイド液晶なだけでなく上下左右の縁(フチ)を極限まで削って画面を大きく配置しています。この違いは小さくありません。見た目にもiPhone XSのほうが先進的ですし、また画面が広く感じるでしょう。
Pixel 3は久しぶりに登場のGoogle製スマートフォン
iPhone XSと比べるとやや細くて長さのあるボディだ
iPhone XSのほうが地図を広く見られる
写真を拡大して比べるとその差は小さくない。iPhone XSのほうが先進的なデザイン
非常に質感のよい本体だが手から滑りやすい
Pixel 3は、極めて薄くスマートなだけでなく、抜群の高級感を醸し出しています。本体背面はガラス製ですが、エッチング加工によってメリハリのあるデザインにしています。ガラスに砂などを吹き付けたり、薬品で腐食させることで表面を荒らす加工により、ガラスの一部分がすりガラスのようになるのです。
見た目にツヤ有りとツヤ無しの部分があり、手で触れてみると感触も大いに違います。つや消しの部分は高級な素焼きのような印象を受けます。また、ガラスパネルのスマートフォンは光沢があって派手なものが多いのですが、Pixel 3はシックで素敵です。傷の付きづらさは、他のガラス製モデルとほぼ同じはずです。つや消しの部分は指紋が目立たないメリットがあります。
ただし、非常に滑りやすいので、持ち歩く際には気をつけたほうがよいでしょう。筆者は、ケースに入れないと危なくて持ち歩く気になれません。ケースに入れることを考えると、指紋センサーが背面なのはちょっと残念です。センサーの位置がケースの奥になってしまうので使いやすくないからです。
背面はガラス製で、下部はつや消しになっている
光沢とつや消しのコントラストが非常に美しい
ボディサイドから連なる光沢感も素敵。ボディはアルミ製で特殊なコーティングを施している
iPhone XSと比較。デザインは好みだが、iPhone XSはスッキリしている
ディスプレイの明るさではiPhone XSに及ばない
Pixel 3のディスプレイは5.5インチで、OLED(有機EL)を採用しています。解像度はフルHD+で2160×1080ドットです。くっきりと明るく、黒の締まりがよいので、非常に見やすいディスプレイです。特に文字を読む際には液晶との差が大きく感じるでしょう。
iPhone XSも同じOLEDですが、5.8インチで2436×1125ドットとより高解像度になっています。さらに非常に明るいので、並べて比べるとかなり違います。とはいえ、iPhone XSのディスプレイは明るすぎるために、普段から最大輝度にしている人は多くないはずです。差が付くのは、明るい屋外などで画面が見づらい時です。
左のPixel 3よりiPhone XS(右)のほうが明るい
左:Pixel 3、右:iPhone XS。斜めから見ても、どちらも画質がさほど変化しないのは素晴らしい
左:Pixel 3、右:iPhone XS。文字のキレはどちらも文句なしだ
付属品を使ったデータ移行にも対応する
付属品は盛りだくさんです。Pixel 3にはイヤホンジャックがないので、USB-C接続のイヤホンと変換アダプターが付属します。
ケーブルや充電器などはすべて白に統一されています。充電器は18Wで急速充電に対応します。iPhoneは急速充電するために別売のケーブルと充電器が必要なことを考えると、だいぶ差があります。
また、クイックスイッチアダプターが付属します。通常のUSBポートとUSB-Cの変換アダプターですが、専用アプリと組み合わせることで、いま使っているスマホからアプリやデータをコピーできます。とても便利な仕組みで、データ移行は簡単です。
付属品が充実しており、とても親切
イヤホンはゴムの突起で外れにくいタイプ
急速充電器と対応するケーブルが付属する
右がクイックスイッチアダプターで、左がイヤホンの変換アダプター
データの転送に対応
専用の充電スタンドがスタイリッシュ
Pixel 3には、専用のワイヤレス充電スタンド「Pixel Stand」が別売されています。価格は9504円と少し高いのですが、素晴らしいデザインと各種の機能が使える点が優れています。平置きタイプではなく起立式のスタンドなので、充電位置もピタリと決まります。
充電しながらGoogleアシスタントで情報を調べたり、写真をスライドショーにしたりできます。10Wの急速充電に対応しているのもポイントです。ただし、ケーブルからの充電のほうが高速なので、現実的には両者を使い分けることになりそうです。
ワイヤレス充電スタンドは別売
底面がこんなオレンジ色をしているなど、デザインが素晴らしい
全機能を使うためにはセットアップが必要だ
Googleアシスタントがスタンド上で使える
天気予報を表示した
充電はUSB-Cでおサイフケータイに対応
充電は、上位モデルらしくUSB-C端子で行います。本体はコンパクトですが、バッテリーは2915mAhと大容量で、なかなか持ちがよいのが嬉しいポイントです。
性能も文句なしで、現時点で最速のSnapdragon 845を採用しています。メモリーは4GBと若干物足りない気もしますが、普通に使うには十分です。ベンチマークのスコアも最高クラスで、コンパクトな外観からは想像できないほどパワフルです。
ストレージが64GBと128GBしか選択できず、microSDカードの増設にも対応しないのは残念です。iPhone XSは最大512GBのストレージを用意しているのです。4Kビデオをどんどん撮影すると、128GBではとても足りません。
おサイフケータイと防水にも対応。残念なのは、iPhone XS、Pixel 3ともにテレビが視聴できないことです。東京オリンピックを出先でも見たいと考えている人は、スマホ選びの際に気をつけてください。
なお、OSは最新のAndroid 9 Pieを採用し、3年間はOSとセキュリティのアップデートに対応することが約束されています。Androidスマホでは珍しい保証ですが、iPhoneはもっと長くサポートされています。iOS 12はiPhone 5sでも利用可能なので、今後も末永く使えるはずです。
ベンチマークのスコアは素晴らしい限り
充電はUSB-C端子を利用する
SIMトレーはナノSIMが1枚のみだ
カメラには優れた機能が盛りだくさん
Pixel 3のカメラには、楽しい機能、便利な機能が多く盛り込まれています。Googleレンズはカメラで製品などを表示して、そのまま検索できる機能です。いろいろと試してみましたが、精度は上々でした。ただしアプリとしても提供されているため、今後は日本語化が進めば、他のスマホでも使えるようになるかもしれません。
また「Playground」では、ARでカメラの中にキャラクターやイラストなどを表示できます。アニメーションで動くのでとても楽しめます。この手のAR機能は他のスマホでも以前からありましたが、驚くべきはそのレスポンス。ボタンをタップした瞬間にアニメーションが表示されました。
Googleレンズは、カメラを使って検索ができる
Playgroundはレスポンスの良さも素晴らしい
シングルカメラでも写りは大満足
最近は3万円クラスのスマホですら、デュアルカメラを搭載しています。高級モデルでは、3つのカメラさえ珍しくありません。そんな中、Pixel 3はシングルカメラにとどまってます。
少し心許なく感じますが、実際に撮影してみると写りは大満足で、iPhone XSにも勝っていると感じるほど。自然に背景を美しくぼかすことも可能です。たくさんの写真を自動的に撮影しておき、誰も目をつむっていない写真を提案するといった、AI機能で失敗しにくい撮影ができるのも秀逸です。
通常撮影

どちらも美しく撮れていて、違いがほとんど感じられない
近接撮影

花を近くから撮影しても、色合いまで似ている
背景ぼかし

背景をぼかして撮影しても、甲乙付けがたい
暗所撮影

暗い部屋で撮影すると、iPhone XSのほうが明るく写った
色合い

木を撮影すると、Pixel 3は空がきちんと青く写ったが、iPhone XSは白飛びした。どちらも木の同じ部分に明るさを合わせ、HDRも標準の有効状態だ
まとめ
Pixel 3はとても完成度の高いスマホで、使ってみて感激しました。iPhone XSとの比較は非常に難しいところです。ディスプレイの明るさや占有率はiPhone XSに軍配が上がりますが、カメラは引き分けです。本体の完成度はどちらも高く、デザインは好み次第でしょう。トータルではiPhone XSのほうが優れていると感じますが、そもそも価格差があります。
日本ではiOSの人気がとても高いのが現状です。価格まで踏まえると引き分けといったところなので、iPhoneを使い続けてきたユーザーが、積極的にPixel 3に移行するケースはあまりなさそうです。iOSユーザーは、迷うとすればiPhone XSやiPhone XRなどの選択になるはずです。
構成・文:戸田覚
編集:アプリオ編集部