バリキャリ義母が挑む笑いと涙の母親修行──ドラマ『義母と娘のブルース』

バリキャリ義母が挑む笑いと涙の母親修行──ドラマ『義母と娘のブルース』

出産すれば本当に母親になれるのか。仕事と子育ては相反する性質のものなのか。家族の形が多様化しても、母親の在り方に対する世間のイメージはどこか凝り固まったまま。でもお母さんである人は皆、誰かのルールに則ることよりも大切なことが見えているはずです。

ドラマ『義母と娘のブルース』は、仕事一筋だったキャリアウーマンが、一人娘がいる男性と結婚し、理想的な義母になるべく懸命に努力する10年間を描いた、同名コミックが原作のハートフル・コメディです。

綾瀬はるかと脚本家・森下佳子氏がタッグ

とにかく真面目一徹、バリキャリの主人公・宮本亜希子を演じるのは、若くして幅広い役柄の演技に定評がある綾瀬はるか。本作の脚本を手掛けたヒットメーカー・森下佳子氏とは、これまでも『世界の中心で、愛を叫ぶ』や『MR.BRAIN』などでタッグを組み、後に話題となるドラマを世に送り出してきました。本作のキーマンとなる麦田章を演じる佐藤健も、インタビューで「どの登場人物にも感情移入できるのは、さすが森下さん」と語っている通り、登場人物一人ひとりのキャラクターが際立つエッジの効いたセリフの数々にも注目です。

自分の娘となる8歳のみゆきに初見で名刺を差し出し、さらには履歴書まで渡してしまう。規格外に堅物な亜希子と、亡くなった母が忘れられず、絶対に義母を受け入れようとはしない賢く信念のあるみゆき。そんな意志の強い女達に囲まれながらも、どこか他人事で飄々とした父・良一を演じる竹野内豊は、評判のコミカルな演技で逆境のしんどさを実に軽やかに見せてくれます。

子供に子供騙しは通じない。そして、親子になるのはそう簡単じゃない。クスッと笑えるシーンの中で、一生懸命にならないと手に入らないことについて改めて考えさせられる、温かい雰囲気が涙を誘うまったく新しい家族の物語です。

亜希子とみゆきが母と娘になるまでの長く愛おしい日々

義母と娘のブルース 動画配信 見逃し

3年前に母親を亡くし、父の良一と2人で暮らす小学3年生の宮本みゆき(横溝菜帆)。そんなみゆきの前に突如、スーツ姿の凛々しい女性がヒールの音を響かせて現れます。岩木亜希子は、金属業界最大手・光友金属の営業部長を務める凄腕キャリアウーマン。みゆきの新しい母親となる人です。

「何卒、末永くお付き合い頂ければ幸甚です」。と名刺を差し出す亜希子を「私、この人嫌だ!」と全身全霊で拒絶するみゆき。家に帰っても、なんとか説得しようとする良一を睨みつけ、ああ言えばこう言うで応戦します。

一方で、巻き返しを狙う亜希子は、小学生に人気の雑誌を買い漁り、子どもの心を理解すべく児童心理について徹底リサーチ。様々な攻略法を考えた挙句、不安や恐怖を感じた時、そばにいた人に好意を抱くとされる心理現象「吊り橋効果」を狙って、みゆきを難易度の高いアスレチックに誘います。前日から子どもが好みそうな小ネタも仕込み、いざ出陣した亜希子ですが……。

義母と娘、そして父。家族まるごと応援したくなる不思議な面白さ

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日常会話もビジネスの延長。常に諸子百家の格言を引用し、どこまで本気かわからないほど四角四面な亜希子の振る舞いは滑稽です。笑ってしまうけれど、鋭い洞察力と確かな観察眼で、言っている事にきちんと一理ある点がまたおもしろいところ。みゆきの立場からすると俄かには受け入れがたい義母ですが、とにかくその一生懸命さは並大抵ではありません。

そして、注目すべきは同じように一生懸命なみゆきです。「みゆきがキビキビやれば、ママなんていらないよね」と知恵を絞って必死に義母を受け入れまいとする少女の姿は、実にかわいらしいのと同時に、どこか切ない気持ちにさせられる人も多いはず。

なんと言っても、このドラマ特有のちぐはぐな空気を作り出しているのは良一と亜希子です。常に敬語で接し、とても恋愛関係を経て結婚に至ったとは思えない他人行儀な2人。 唐突に決まった再婚には、何か特別な事情があるのでしょうか。


ちょっとした喜びや悲しみ、偶然や奇跡の重なりで積み上げられていく親子の日常。ささやかな笑いと感動が織りなす心温まる一作です。

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国内ドラマがとにかく強い、「Paravi(パラビ)」の魅力と気になる弱点を速攻レビュー