隣人との繋がりが希薄な現代の集合住宅。古き良き昭和の心地よさを無理矢理に取り戻そうとしたら、一体何が起こるのでしょうか。
ドラマ『限界団地』は、廃れてしまった団地に孫娘を連れて引っ越してきた一人の老人が、理想の団地文化に対する異常な執念と孫への偏愛から、奇怪な行動に次々と周りを巻き込んでいく狂気のストーリーです。
主人公の寺内誠司を演じるのは、63歳にして連続ドラマ初主演を務める佐野史郎。20年以上経っても強烈なイメージが消え去らない程、かつてTBS系ドラマで演じたマザコン男性・桂田冬彦役は衝撃的でしたが、今回の役どころが抱える心の闇も相当なもの。盗聴、放火、殺人。目障りな連中を容赦なく闇に葬る恐ろしい寺内ですが、その酷く歪んだ愛情ゆえの異常行動は、冷酷でありながら見方によってとても人間臭いものに思えてくるのが面白いところです。
孫娘に愛情を注ぎつつ、実父の老々介護もこなす慈悲深いおじいちゃん。彼が心の底で密かに抱いている感情とは。団地妻ネタ、カラオケおばさん VS 40代フリーター自治会長との笑える壮絶バトル等、団地のおもしろエピソードも光る、メリハリの利いた大人の心理サスペンスです。
寺内の異常な愛情が団地にもたらす怪奇事件の数々
あやめ町団地は、市民から『夢のニュータウン』とまで呼ばれ、かつては活気が溢れていた集合住宅。今では建物も老朽化、空き室が目立ち、住民同士の交流も途絶えるという衰退の一途を辿っています。
そんなあやめ町団地のかつての住人・寺内誠司は、1年前に両親を火事で亡くした孫娘・穂乃花と老いた実父を連れて再びこの団地に引っ越してきました。手作りのドアノブカバーを手に、隣人に挨拶周りをする寺内。しかし、かつて団地にあった住人同士の温かい交流は既にありませんでした。危機感を持った彼はやる気のない自治会長・金田哲平(山崎樹範)に掛け合い、回覧板の復活、緊急時に情報を共有するための「ふれあいカード」の配布、無分別ごみ対策など、自ら率先して団地を良くするためのボランティア活動に勤しみます。
隣の部屋の住人・桜井江理子(足立梨花)らがそんな寺内老人の懸命な姿に心動かされるのに対し、団地内では「寺内は穂乃花の両親を殺したんです。穂乃花を独り占めするために。あの男は異常者なの」と力説する穂乃花の母方の祖母の姿が。
そんなある日、団地のルールを無視し続ける酒浸りの老人、妻に先立たれて孤独な日々を送っていた身寄りのない老人の2人が相次いで孤独死する事件が発生。ここぞとばかりに住民の連携を訴える寺内に続々と賛同の声が集まります。
その数日後、今度は近所の豪邸が全焼。原因は放火。そこに住むのは以前、穂乃花と団地のことを侮辱した高飛車な女でした。そんな中、寺内老人は今日もまた真剣に団地の偵察を続けていますが……。
役に対する理解が深い、佐野史郎の演技に注目
冬彦さんを思い出させる佐野史郎独特の不気味な視線はここでも健在。規律を乱す住人、自分や家族に無礼な住人、とにかく目障りだと感じた人間に次々と手を下す寺内は一方で、はた迷惑でも自分には直接害のない人間や、一度認めた相手には包み込むような優しさを見せます。
自分の価値観にとらわれていて、利他的であると同時に非常に利己的な寺内。でも観ているうちに寺内老人の行動や思考にどんどん引き込まれていくのは、佐野史郎が演じる「狂い」に深みがあるから。「この人、何を考えているのかな」という純粋な疑問から、観る側が自然と怖さの奥にあるものを意識してしまうところに、このドラマの面白味があります。
江理子をいびる先輩ママや、江理子に不義理を働く夫に対する制裁も容赦のないもの。なぜそこまでして江理子を守るのか。寺内が桜井家の隣の部屋に引っ越してきたそもそもの理由から気になります。
善悪や愛情の概念が、突き詰めるとよくわからなくなってくる展開そのものがこの作品の怖さ。人がもつ心の光と闇が紙一重であることを如実に語った、先がまったく読めない至極のサスペンスです。
動画配信サービスのFOD(フジテレビオンデマンド)では、『限界団地』の全話が見放題です(2018年8月1日時点)。