近年、スマホの画面をリアルタイムでPC(パソコン)に共有・表示したいというニーズが高まっています。「アプリを大画面で楽しみたい」「プレゼンに利用したい」「スマホを遠隔操作したい」など、その目的や活用シーンはさまざまです。
本記事では、Androidスマホの画面をパソコン(Windows/Mac)に映し出す、おすすめの方法を3つ紹介。いずれもアプリやソフトウェアをインストールせずにおこなえるので、「有料アプリは使いたくない」「安全性が高い方法でミラーリングしたい」という人はぜひ参考にしてください。
方法1:Miracastを利用して映し出す(Windows限定)
Windows 8.1以降のパソコンには、Miracast(ミラキャスト)というワイヤレスでの画面/音声共有機能が搭載されています。ケーブルで接続する必要がないので、出先での画面共有やプレゼンテーションなどにも便利でしょう。
「Miracast」は機器同士が1対1でつながるWi-Fiダイレクトという方法で接続するので、ワイヤレスでありながらも障害物の影響を受けにくく、動作も安定しています。スマホを素早く動かしても、映像の遅延や乱れがあまり気になりません。HDMIケーブルに比べると少し劣りますが、画質も申し分ないでしょう。
また、機種によってはパソコンでスマホを操作をすることも可能です。マウスでアプリを操作したり、キーボードで文字を入力したり、といった操作がおこなえる場合があります。
利用できる環境
Miracastでスマホの画面をパソコンに映し出すには、以下2つの条件をどちらも満たす必要があります。
- Windows 8.1以降のパソコン
- Miracastに対応したAndroidスマホ
Android 5.0から「キャスト」機能が標準搭載され、他デバイスにワイヤレスで画面を共有できるようになりました。しかし、だからといってすべての端末が「Miracast」に対応しているわけではありません。
現在、Androidスマホがサポートするワイヤレス通信規格は、メーカーや機種によって「Google Cast(グーグルキャスト)」と「Miracast(ミラキャスト)」で二分化されています。Windowsパソコンにミラーリングできるのは、Miracastに対応しているスマホのみです。
実際に筆者手持ちのスマホで検証しましたが、Miracastで画面を映し出せたのは「OPPO Reno 3A」と「Galaxy S21 5G」「Galaxy A20」の3つ。一方、「Pixel 6」や「Xperia 5」「AQUOS sense5G」はGoogle Castにしか対応しておらず、Windowsパソコンへの画面共有はできませんでした。
準備するもの
準備するものは特にありません。Miracastは機器同士が1対1でつながる「Wi-Fi Direct」という技術で接続するので、ネットワーク環境がない場所でも利用できます。
接続方法
ここからは、Androidスマホの画面をMiracast経由でパソコンにミラーリングするための接続方法を紹介します。
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WindowsパソコンでMiracast(このPCへのプロジェクション)を有効化する
Windows
ボタンをクリックし、[設定]へ進みます。設定メニューで[システム]をクリックします。
をクリックし、「常にオフ」項目を「どこでも使える」もしくは「セキュリティで保護されたネットワーク上のどこでも可能」に変更しましょう。その上で を押してください。
なお、各項目がグレーアウトして操作できなくなっている場合は、「ワイヤレスディスプレイ」などをインストールする必要があります(以下参照)。
上のような受信画面が表示されるので、そのままの状態にしておきましょう。
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Androidスマホのスクリーン共有機能を起動する
方法2:HDMIケーブルで接続して映し出す
パソコンへのミラーリングの方法として、一番キレイに画面を出力できるのが、HDMIケーブルによる接続です。
仕組みはいたってシンプル。パソコンモニターのHDMI端子にHDMIケーブルを接続し、変換アダプタを通してAndroidスマホの画面を出力します。
障害物の影響を受けやすいワイヤレス接続と比べ、ケーブル接続は安定した通信ができるのが魅力。ラグ(映像の遅延)が発生したり、映像や音が途切れたり、カクついたりといったことはほとんど起こりません。
基本的にはケーブルで接続するだけなので、パソコン側のOS問わず利用できて面倒な設定がないのもメリットです。しかし、Androidスマホの仕様上、実際に画面を映し出せる機種はかなり限られています。注意しましょう。
利用できる環境
HDMI接続でミラーリングするには、スマホ側とパソコン側がそれぞれ以下の条件を満たしている必要があります。
- スマホ側:「DisplayPort Alternate Mode(DP Altモード)」に対応した機種であること
- パソコン側:HDMI「入力」端子を搭載していること
「DisplayPort Alternate Mode」とは?
「DisplayPort Alternate Mode」とはざっくりいうと、映像信号などを伝送できるタイプのUSB-C端子のこと。略してDP ALTモードとも呼ばれています。
同じUSB-Cの端子を搭載していたとしても、DP Altモード非対応では映像信号を送ることができません。そのため、変換アダプタなどを使用してHDMIケーブルをモニターに接続しても、画面のミラーリングがおこなわれないのです。変換アダプタなどを購入する前に、自身のスマホがDP Altモードに適合しているか確認することをおすすめします。
実際に筆者手持ちのスマホ6機種で検証しましたが、画面が映し出されたのは「Xperia 5」と「Galaxy S21」の2つだけでした。残念ながら、DP Altモードに対応している機種はあまり多くないようです。
なお、DP ALTモードはUSB 3.1からサポートされた拡張仕様なので、USB 2.0では利用できません。自分のスマホのスペックをメーカーやキャリアの公式サイトで確認し、USB 2.0と記載があればDP Altモード非対応だと判断できます。
HDMIの「入力」に対応したパソコンとは?
HDMI端子には「入力」と「出力」があり、それぞれ役割が異なります。
スマホの画面を映し出すにはHDMIの「入力」に対応したパソコンモニターが必要です。これさえ満たせば、Windows/MacなどのOSやバージョン、機種などは問いません。
ここで注意したいのが、ほとんどのノートパソコンは対象外ということ。確かにノートパソコンにはHDMI端子がついているものがありますが、多くの場合これはHDMIの「出力」であって「入力」ではありません。
ノートパソコンの画面を他のモニターに表示させることができても、逆にAndroidスマホの画面をノートパソコンに表示することはできないのです。
残念ながら、HDMIの「出力」端子をHDMI「入力」端子に切り替えるような機能はありません。ノートパソコンにスマホの映像を共有したい場合は、他の方法を検討したほうがよさそうです。
準備するもの
準備するものはHDMIケーブルとHDMI変換アダプタの2つです。
HDMIケーブル
モニターとiPhoneを接続するための「HDMIケーブル」が必要です。新たに購入せずとも、BDレコーダーや家庭用ゲーム機に付属のものを流用してもよいでしょう。
新たに購入する必要があるなら、コスパに優れ、ユーザー評価も高い下記のHDMIケーブル(ホーリック製)がおすすめ。カラーバリエーションも豊富です。
HDMI変換アダプタ
HDMIケーブルをAndroidスマホに接続するための「変換アダプタ」も用意しなければなりません。AndroidスマホのUSB-C端子に対応しているものを選びましょう。
Amazonなどネットショップでは格安の商品も多数販売されていますが、できるだけ信頼できるメーカーの商品を選ぶことをおすすめします。
今回筆者が使ったのは、スマホ周りのガジェットツールを多く提供する人気メーカー、Anker(アンカー)社が販売する「Anker PowerExpand+ 7-in-1」。HDMIの変換はもちろん、SDカードリーダーやUSB-A変換アダプタとしても使える優れものです。ひとつあれば幅広く活用できるでしょう。
もう少し費用を抑えたければ、同じアンカー製の「Anker PowerExpand+ USB-C & HDMI 変換アダプタ」がおすすめです。Amazonで税込2390円で手に入ります。
接続方法
ここからは、Androidスマホの画面をHDMIケーブル経由でパソコンにミラーリングするための接続方法を紹介します。
方法3:Vysorを使って映し出す
「Vysor」は、Androidにおいて著名な開発者であるKoushik Dutta氏が提供している画面ミラーリングツールです。
PWA(Progressive Web Apps)といってブラウザ上で表示できるシステムなので、ソフトウェアやアプリをインストールする必要はありません。スマホとパソコンをケーブルで接続するだけでスマホ画面を映し出せます。
特筆すべきは、スマホをパソコンで操作できること。マウスを使ってスマホアプリを操作したり、キーボードで文字を入力したりできます。「スマホアプリをパソコンの大きな画面で操作したい」という人にはおすすめの方法です。
ただ、無料版のままだと画質がかなり劣化してしまう上、パソコンへの音声共有もできません。仕事のプレゼンやゲーム配信など「人に見せる」といったシーンには向かないでしょう。
利用できる環境
ブラウザで使用するので、パソコンのOSや機種などは問いません。スマホは、iPhoneを除いて基本的にどの機種も利用できるはずです。
準備するもの
準備するものは、AndroidスマホとWindowsパソコンを接続するための「USB-A & USB-Cケーブル」もしくは「USB-C & USB-Cケーブル」。基本的には、手持ちのAndroidスマホとWindowsパソコンを接続できれば何でもOKです。
ただし、100円均一やAmazonなどで格安で販売されている「充電専用」と記載された商品は、パソコンに接続しても認識されないので注意してください。
接続方法
ここからは、Androidスマホの画面をVysorを使って映し出すための接続方法を紹介します。
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Androidスマホ側で「USBデバッグ」を有効化する
「Vysor」を使って画面をパソコンに映し出すには、AndroidスマホのUSBデバッグモードを有効にしなければなりません。有効にすることで、USB接続した機器からAndroidスマホに対してさまざまな操作がおこなえるようになります。
ただ、「USBデバッグモード」はあくまで開発者向きの裏設定です。有効になっている状態は、セキュリティ上あまり好ましくありません。「Vysor」を使う時のみオンにし、使い終わったら必ずオフにすることを心がけてください。
まずは、Androidスマホの「設定」を開きます。
設定メニューで
を開いたら、画面の一番下にある「ビルド番号」を7回連続でタップしてください。Galaxyでは「端末情報」→「ソフトウェア情報」画面の中段に「ビルド番号」があります。7回タップし終えると、自身のスマホのロック解除のために設定しているPINコードかパターン、パスワードの入力画面に遷移します。
「これでデベロッパーになりました!」というメッセージが表示されたら、開発者モードは有効化されています。
再び端末の「設定」に戻り、
をタップ。詳細設定をタップすると、設定項目が増えて が出現します。開発者向けオプションを下にスクロールすると、「USBデバッグ」という項目があります。これをオンにして、確認画面で
をタップすれば事前準備は完了です。 -
ブラウザで「Vysor」にアクセスして投影する
続いて、Vysorにアクセスします(左リンクからそのまま遷移できます)。
ブラウザでVysorにアクセスしたら、
をクリックします。スマホとパソコンが正しく接続できていれば、ポップアップでスマホの名前(機種名)が表示されるので、これを選択して[接続]を押しましょう。
Android Deviceの項目に赤い
ボタンが出現するので、これをクリックします。パソコンに黒い画面が表示された状態になったら、スマホを確認してください。