Googleの狂気、「Tango」の地図・ゲーム・ロボットへの活用でどうなる?

2014-06-28 14:14
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ドローン

Googleには、良くも悪くも"狂気"という言葉が似つかわしい。

今年の開発者イベントGoogle I/Oでは基調講演の最中に、Google反対派の男性が「お前たち全員は、殺人ロボットを作る全体主義的企業で働いている」と叫んだ(TechCrunchが動画をアップロードしてくれている)。たしかに、この男性は、99.9%くらいの確率で気合が入りすぎていただけなのだろう。だが、残り0.1%くらいの確率で、男性は未来からやって来たジョン・コナー(映画『ターミネーター』)である可能性があると夢想しまう。そう思わせられるほど、最近のGoogleは未来に手を伸ばし続けている。

その一例が「Project Tango」。モバイル端末に搭載したカメラやセンサー類で現実世界を立体的に捉え、リアルタイムマッピングを実行することで、端末に人間並の空間認識能力を与えようとする計画だ。

Tangoスマートフォンで室内をマッピング

部屋が3Dモデル化された

Google I/Oのセッションと同日公開された動画の中で、新しい情報が出てきているので、妄想を多分に交えたTangoに関する簡単な未来予想を試みたい。

実現しそうなTangoの未来

Tangoにおいて、Googleは外部の研究機関・企業と協力しているとともに、Google内部の各部門とも協同している。Google I/Oのセッションで、さり気なく示された次の協力パートナー図で個人的な発見があった。

Project Tango アクティブパートナー

現在、40以上のパートナーがプロジェクトに関わっているが、その中で今回注目したいのが、右下のGoogle内部の各部門。

Project Tango アクティブパートナー

「Maps」「Glass」「X」「Niantic Labs」といった文字を何とか読み取ることができるだろう。Mapsの下に括弧書きで書かれている"Caliper"が何を意味するのか、筆者には分からないが、MapsはGoogleマップのことだと仮定して話を進める。

各部門との関わりがどの程度のものなのかは不明だが、今後想定しうる展開をいくつか予想してみる。3以外は、まだ実際に形になっているわけではないので、あくまで筆者の想像だということを前置きしておく。

  1. Maps:Googleマップのストリートビューが、Tangoでマッピングされた3Dモデルに置き換えられる
  2. Glass:メガネ型ウェアラブルデバイスGoogle GlassがARデバイス化する
  3. X:ロボットやドローンにTangoを搭載して活用
  4. Niantic Labs:実際の市街地や自然をリアルタイムマッピングしたARゲームを楽しめる

1. Maps

Googleマップへの応用の可能性については、以前の記事(Googleの新プロジェクトがスゴすぎる、可能性はストリートビューの比ではない「Tango」が真に驚異である理由)で考察した。

Project Tango

ロボットなどに認識させる目的で、自転車で周囲をマッピングする実験が実施されていることは明らかにされている。今すぐに、3Dゲームのようにストリートビューの中を歩き回れるようなことにはならないだろう。しかし、構想としては存在しているのではないかと考えている。

2. Glass

Google GlassとTangoを結びつけるとしたら、既に他の端末などで作られた3DマップをGlassを通して見ることができるAR(拡張現実)機能として実装されるのが妥当な線か。Glassそのものに不必要なカメラとセンサー類、高性能CPUなどをTangoのために搭載するのは当面のところは現実的ではないだろう。

Google Glass

Googleマップへの応用との合わせ技で、Glassのディスプレイ上でストリートビューを見ると、現実世界がCGに置き換えられており、そこにさまざまな情報が表示されるというような機能が実現するかもしれない(今は亡き「セカイカメラ」の後を引き継ぐのだろうか)。

3. X

Xとは、共同創業者セルゲイ・ブリン氏が統括している「Google X」と呼ばれる未来技術の開発グループのこと。Google Glassのほか、自動運転カーや気球でインターネット網を構築する「Project Loon」などを開発している。

もっとも霧に包まれている同グループには、Android OSの父であるAndy Rubin氏が率いるロボット部門も所属している。

Boston Dynamics

すでに、スイスの研究機関によって、災害現場などで即座に状況をモニターするためにドローンが現場をリアルタイムマッピングする実験もおこなわれている。Google X内でもロボット部門とTangoとのコラボレーションが計画されていると考えても的はずれではないはずだ。

ドローン

Google Xはムーンショット(月へのロケット打ち上げ、転じて失敗を恐れず壮大な挑戦をおこなう意味)のためのグループ。実際に、月にTangoロボットを送り込んで、月面ストリートビューを実現させることだって夢物語ではないだろう。

4. Niantic Labs

Niantic Labsは、実際に街を歩いてプレイする必要があるスマホ向け拡張現実ゲーム「Ingress」を開発している部門。とすれば当然、IngressとTangoを結びつける構想があると考えるのが自然だろう。

現在のIngressのプレイ画面に表示されるのは近未来感のある地図などだが、Tangoと結びつけば、上の紹介動画にあるように実際の建物(もしくはCG化された建物)とゲーム画面を融合させられるようになるかもしれない。

「スカイネット」が現実になりかねない怖さと畏れ

以上の予想は、具体的な根拠もあれば希望的観測に基づくものもある。話半分に考えておいてほしい。

それにしても、Googleはどこへ向かうのだろうか。ここ数年で、Googleがどのような企業を買収してきたのか考えると、妄想に拍車がかかってしまったとしても責められない。

Boston Dynamicsに代表されるロボット関連企業や人工知能開発のDeepMind、人工衛星のSkybox、超上空飛行ドローン開発のTitan Aerospace、飛行風力タービンのMakani Power、監視カメラのDropcamなど、無秩序に見えるほど多様な企業を買収している。

Skybox SkySat-1

それぞれの企業は、一次的な目的達成のために買収されたのだろう。例えば、SkyboxやTitan Aerospaceの場合だと、世界中でインターネットを接続できるようにするための手段とするための買収だと考えられるし、監視カメラのDropcamなら傘下のNestが進めるホームオートメーション事業の一角に据えるための買収だと見るのが妥当だろう。Makini Powerは、Googleにとって生命線となる電力供給の補助輪として使えるだろうし、DeepMindはGoogleのソフトウェア開発能力を高めることに繋がるはずだ。ロボット事業に関しては謎が多すぎるが、人間にはできない何かを代行させるはずで、深海や山脈や危険地帯だけでなく宇宙空間や月、火星などで活躍させる目論見でもあるのだろう。

ソフトウェアの力による情報収集・分析能力とハードウェアの可能性を掛けあわせて、Googleの生命線であるインターネットを自前でなんとかしてしまおうという野望(電力供給事業への参画、光ファイバー事業、無線によるインターネット網、衛星によるインターネット網の構築など)で積分した先の未来に、何が待ち受けているのか。

最初に挙げた映画『ターミネーター』では、「スカイネット」と呼ばれる人工知能が人類を滅亡の縁に追い込むストーリーが描かれた。Googleは、そのようなディストピアを善意で実現してしまいかねないと恐れを感じるのは筆者だけだろうか。