海外旅行を計画する際に気になるのが、現地でインターネットが使えるかどうかです。SNSだけでなくマップや検索などにも便利なスマホは、海外でも存分に活用したいところ。しかし、海外で国内と同じようにモバイルデータ通信などを利用していると、通信料金が高額になってしまうこともあります。
そこで本記事では、初級ユーザー向けに海外でインターネットを利用するための用途に応じたおすすめの方法(フリーWi-Fi、海外用モバイルWi-Fiルーター、キャリアの海外用定額プラン、現地SIM、多国籍SIMなど)を紹介。併せて、海外でネットを使う上での注意点なども解説します。
海外インターネットの利用方法、どれを使う?
海外用Wi-Fiルーターや海外対応SIMカードなど、渡航先でのインターネット利用方法が多様化しています。
エアトリが10〜70代の男女1601名に行った「海外でのスマートフォン・携帯電話の使用状況」に関する調査によれば、海外用Wi-Fiルーターのレンタルが全体の35%を占めてトップでした。次いで、各キャリアを使用した国際ローミング(海外定額パケットプランなど)が25%、多国籍SIM・現地SIMが18%、そして現地のフリーWi-Fiが5%という結果が出ています。
最も多かった海外用Wi-Fiルーターの利用者を見ると、女性48%、男性26%と女性が男性を大きく上回る結果に。1台所持していればグループでWi-Fiの共有が可能なのが特徴で、女性のほうが男性よりも友人や家族など複数人での旅行が多いことが理由として挙げられています。
海外用Wi-Fiルーターに限らず、滞在期間や旅行人数、使用頻度などによって「使い勝手のいい」サービスは人ぞれぞれです。これから紹介する5つのインターネット利用方法と、そのメリット・デメリットを踏まえた上で、自分に合った方法を見つけて海外旅行を充実させてください。
無料重視派は「現地のフリーWi-Fi」
Image:Ken Hawkins/Flickr
旅行雑誌や観光マップなど事前準備をしていたとしても、予想外にネット環境が必要、なんとか無料で使いたい場合も。そんなときはフリーWi-Fiを活用しましょう。
フリーWi-Fiはその名の通り、インターネットが「無料」です。渡航先のホテルやカフェ、レストラン、ショッピングモール、空港、駅などには、施設の利用者向けにフリーWi-Fiルーターが設置されています。
このようなフリーWi-Fiスポットにスマホをつなぐと無料でインターネットに接続できるので、通信量でお金を使いたくない人におすすめです。また、現地でほとんどネットを使わない想定であれば、いざとなったらフリーWi-Fiでまかなえます。泊まっているホテルや、フリーWi-Fiのあるカフェを見つけておくと、すぐに利用ができて安心です。
フリーWi-Fiを見つけて接続する
渡航前にあらかじめフリーWi-Fiスポットを調べておくと良いでしょう。例えば「Googleマップ」アプリを起動し、旅行先のエリアを表示して検索欄に「Free Wi-Fi」などと入力すれば、フリーWi-Fiを導入している施設を一覧で確認でき、地図上にもポイントが表示されます。
また、滞在中のホテルやチェーン店のカフェ、ショッピングモールなどにもフリーWi-Fiスポットがあることが多いので、スマホの[設定]から[Wi-Fi接続]を選び、該当のネットワークとパスワードを入れて接続しましょう。
フリーWi-Fiの注意点
使えるエリアが限られている
フリーWi-Fiを使えるエリアはどこにでもあるとは限りません。急にネットを使いたくなっても接続ができない場合があります。事前にフリースポットを調べておくのが得策でしょう。
繋がった先のページが外国語でわからない
接続のためにスマホで設定をしようとしても、現地語のウェブページが開いて指示通りに進めてもなかなかつながらないことも。
利用者が多くて低速になる
カフェやレストランなど施設の利用者が多く、たくさんの人が同時にフリーWi-Fiに接続していると通信速度が遅くなってネットの接続がうまくいかないケースもあるので注意が必要です。
セキュリティに注意が必要
一番気を付けたいのがセキュリティです。無料だからといってむやみに接続すると、個人情報を盗み取られたり、詐欺メールを送信されたりするなどの被害に遭う危険性もあります。
現地のフリーWi-Fiを利用する際は、暗号化されたネットワークを選択するほか、重要な情報のやりとり避けましょう。
グループ利用でお得な「海外用モバイルWi-Fiルーター」
海外専用のモバイルルーターを貸し出している国内の事業者から、現地ですぐに使えるモバイルルーターをレンタルして接続します。ルーターさえ持って外出すれば、どこにいてもインターネットに接続できるので安心です。
ルーターは1台レンタルすれば複数の端末につなぐことができ、仲間とシェアして使うと便利です。
また、通信速度も早い速いので、海外旅行には強い味方。レンタル料金は比較的安価で、仲間とシェアすればさらにコストを抑えられます。
海外用モバイルWi-Fiルーターをレンタルする
渡航先にもよりますが、「イモトのWi-FI」や「Global Wi-Fi」など、海外専用モバイルルーターのレンタル会社よりネット予約ができます。渡航先、滞在期間などを入力し、フライト時間や空港ターミナルを指定するだけです。
プラン/料金 | グローバルWi-Fi | イモトのWi-Fi | ワイホー | ジャパエモ | ジェットファイ | エクスモバイル |
---|---|---|---|---|---|---|
世界周遊プラン | 〜1980円 | 1580円(3Gのみ) | 1380〜2980円 | ✕ | 450〜1580円(※キャンペン期間) | 1100〜1450円 |
ヨーロッパ周遊プラン | 1480〜1880円 | 1880円 | 1180〜1680円 | 1000円 | ✕ | 750〜1580円 |
アジア周遊プラン | 1480〜1780円 | 1280円 | 980〜1580円 | ✕ | 380〜1280円(※キャンペン期間) | 950〜1250円 |
返却場所も事前予約の際に指定ができるため、受け取り・返却がスムーズになります。1日1000円〜2000円前後の値段設定が多く、グループ旅行でシェアすれば1人あたりの利用料が安くて済みます。
海外用モバイルWi-Fiルーターの注意点
1台で1グループ、別行動に注意
複数人数で1台のルーターをレンタルした場合、全員がネットを使用するには同じ行動をとるのが必須です。別行動する際は一方のグループがネットを使えなくなるため、事前に2台レンタルしておくなど対策が必要です。
毎日充電しなければならない
ルーターのバッテリーは消耗も早く、毎日充電しておかなくてはなりません。万が一バッテリーを使い切ってしまったら、その時点でネットには繋がらなくなります。
荷物になる
モバイルルーターはスマホ1台分ほどの大きさ・重さであることが多く、意外と荷物になります。持ち歩かなければネット接続ができないので、朝ホテルに置いたまま出かけるとレンタルした意味がなくなってしまいます。
レンタルが手間、当日の手配だと手に入らない場合も
事前予約でレンタルする空港と返却場所を決める場合がほとんどですが、借りに行く、返しに行く作業が発生して少々手間がかかります。出発当日に空港などでレンタル手続きもできますが、レンタル機器がすべて出払っているケースもあるので、予約するのが得策でしょう。
国内と同じように使いたい人は「国内キャリアの海外専用パケット定額プラン」
NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯電話会社が提供する海外専用の「パケット定額プラン」で、事前申し込みや設定をすれば、国内で利用しているときと同じようにネット接続ができます。
なぜ大手キャリアの通信を海外でも使えるのかというと、「国際ローミング」と呼ばれるサービスのためです。日本の携帯電話会社が海外の事業者と提携していて、現地のキャリアと通信が行われると、現地キャリアの通信設備を通して日本の通信会社のサービスを受けられるという仕組みになっています。
特別な機材を用意する必要がなく、簡単な申し込み・設定をすればいつも通りにスマホを利用できるのが最大のメリット。「国内同様に、スムーズにスマホを使いたい」「旅行中の特定の日だけ使えればいい」という人におすすめです。
「パケット定額プラン」に申し込む
キャリアによって、申込み方法や料金システムに違います。
NTTドコモの場合
Image:NTT docomo
インターネットを制限なく使うなら、「海外パケ・ホーダイ」の定額プランがいいでしょう。NTTドコモの場合、申し込みは不要で、スマホの[設定]から[モバイルデータ通信]→[データローミング]をONにするだけで使用できます。
1日の使用パケットが20万パケット(約24.4MB)以内であれば1980円/日、どんなに使っても1日最大2980円/日で収まる二段階の価格設定。ただし、日本時間0時〜23時59分59秒を1日として課金されるシステムです。渡航先の現地時間ではないので注意してください。
海外パケ・ホーダイを現在使用中かどうか、日本時間は何時かなど、無料でサポートしてくれるアプリもダウンロードしておくといいでしょう。
この他にも、国内で契約中のパケットパックのデータ量を海外でも使う、「パケットパック海外オプション」などのプランもあります。
au(KDDI)の場合
Image:au by KDDI
auユーザーの場合、他キャリアより比較的低額です。「世界データ定額」の定額プランを使えば、現地でインターネットに接続してから「24時間980円」で現在利用中の定額プランを海外でも利用可能になります。
出発前にスマホの[設定]より、[モバイルデータ通信]→[データローミング]をONにします。iOSの場合、「世界データ定額アプリ」を事前にダウンロード、初期設定を済ませておけばアプリから操作ができて便利です。
Androidの場合はブラウザでの対応となります。到着後、SMSで使用可能通知が届いたら、本文のURLよりブラウザを開きます。iOSの場合も同様に、SMSに記載のURLまたはアプリを開きます。
Wi-Fiを「OFF」にした状態で[利用開始]した瞬間から24時間、世界データ定額が適用されます。980円/日で、海外でも国内で契約しているデータ定額サービス/料金プランを使用できます。ただし、パケット通信料は月間容量から差し引かれます。24時間が経つと自動的に終了するので、継続使用の場合は、最初の手順と同じように[利用開始]をタップしてください。
日本時間や現地時間を気にせずに、24時間インターネットが使用でき、また、2018年9月30日まではアメリカ本土、ハワイ、アラスカ、プエルトリコ、米領バージン諸島での利用が無料などのキャンペーンも。
ソフトバンクの場合
Image:softbank
ソフトバンクユーザーは世界対応ケータイへの事前申し込みで、「海外パケットし放題」の定額プランが利用できます。
ソフトバンクの海外パケットし放題では申し込みは不要です。[設定]→[ネットワーク設定]→[データローミングON]のみで定額プランが適用されます。必要なくなったら[データローミング]をOFFにするだけでプランが終了します。
定額で最大2980円/日、25MBまでなら1980円/日で1日使い放題になります。ただし、日本時間0時〜23時59分59秒を1日として課金されるシステムです。渡航先の現地時間ではないので注意してください。
海外パケットし放題を現在使用中かどうか、日本時間は何時かなど、無料でサポートしてくれるアプリもダウンロードしておくといいでしょう。
iPhone、iPadの利用者のみ、「アメリカ放題」がキャンペーン中につき、利用料無料、申込み不要となっています(2018年9月現在)。アメリカ本土、ハワイなど、エリアに制限があるので詳しくは公式サイトを確認してください。
「パケット定額プラン」の注意点
1日単位の課金になるため、使うタイミングが重要
海外パケット定額のほとんどは2段階の定額制となっており、どれだけ使っても1日当たりの上限は3000円程度に抑えられます。ただし、1日単位の課金制であるものの「1日」は「日本時間の0:00~23:59」となっているなど、キャリアによって定義が異なります。渡航先の現地時間と間違えないように注意しなければなりません。
また、キャリアによって料金システムなどに違いがあるので、詳しくは各公式サイトを参照してください。
海外パケ・ホーダイ | サービス・機能 | NTTドコモ
海外で使う | 海外・国際サービス | au
海外で使う | モバイル | ソフトバンク
頻繁な旅行・長期滞在には「現地(渡航先)のSIMカード」
スマホは端末本体と、SIMカードと呼ばれる携帯の電話番号情報や、電話回線に接続するための情報などが書き込まれたカードがなければ、携帯電話の回線につなぐことはできません。このSIMカードを現地のキャリアが提供しているものに替え、SIMフリースマホに入れて利用する方法です。
台湾旅行でスマホを使う、現地のSIMを利用して快適にインターネットする方法
「頻繁に海外へ行く」「出張などで長期滞在をする」人におすすめしたいのがこの方法です。現地のSIMカードを使うために現地の国内通話の扱いになり、割安な料金で利用できます。渡航先にもよりますが、3日間で1000円〜1500円ほど。定額プランやルーター費用よりお手頃なので、長期滞在に向いているでしょう。
また、現地の通信回線を使うため、通信環境がよいのもメリットです。SIMカードの多くはプリペイド式で、使いすぎて高額請求になる心配もありません。事業者によってSIMの有効期限が設けられており(半年など)、期間内は繰り返しチャージするだけ。ルーターのレンタル・返却や、サービスの申し込みなどの手間もなく、頻繁に訪れる人には便利です。
渡航先のSIMを購入する
海外で現地SIMを使うためには、SIMロックが解除されたSIMフリースマホと現地キャリア対応のSIMカードを準備しなければなりません。
iPhoneをSIMロック解除(SIMフリー化)する手順とメリット・デメリット
失敗しない、初めての「SIMフリースマホ」の選び方 超入門ガイド
渡航先の空港へ到着すると、SIMを販売している事業者があるので、購入手続きと一緒にスタッフにスマホを渡してSIMの設定を頼むといいでしょう。APN設定が完了すればそのまま現地キャリアを通してインターネットが使えるようになります。
日本で使っていたSIMは、もちろん返却されます。帰国後、SIMの入れ替えが必要になるので、紛失しないように管理してください。
現地SIMの注意点
SIMフリーのスマホさえ準備できれば簡単に現地キャリアを使用できるようになる現地SIMですが、サイズやプラン内容などをしっかり抑えておく必要があります。
自分のスマホが、現地SIMの周波数帯域(バンド)に対応しているかどうか
自分のSIMフリースマホが、渡航先の周波数に対応していないと、現地SIMを入れてもインターネットに繋がりません。渡航先の周波数を事前にリサーチし、その周波数に対応しているか確認しておくと良いでしょう。
また、格安の海外SIMを購入すると、周波数帯域(データを拾う周波)が少ないので、インターネットに繋がるまでに時間がかかる原因になるので注意が必要です。
「HUAWEI P20 lite」の対応バンド。メーカーやキャリアの公式サイトのスペック表などに記載されていることが多い
SIMのサイズが自分のスマホと合わない場合も
SIMカードにはさまざまな種類があり、規格が合わないと利用できないので注意が必要です。例えば、サイズ。SIMカードはサイズ別に「標準SIM」「マイクロ SIM」「ナノSIM」の3種類があります。自分のスマホがどのサイズに対応しているのかを事前に確認しておきましょう。
通話料金に注意
SIMカードには「データ通信のみのタイプ」と「データ通信に加え、音声通話が利用できるタイプ」があります。通話ができるタイプには、あらかじめ通話料金が含まれているので、SIMの値段も通話可能時間によっては高額になります。
容量や期間の指定を確認
ほかにも、指定された通信量(「1GB」「3GB」など)までデータ通信が利用できるタイプと、「14日」「30日」など、指定した期間内であればデータ通信が利用できるタイプがあります。期間限定のタイプは、1日あたりの通信量制限がある場合が多いので注意が必要です。
都度チャージで長期間利用するなら「日本で買える多国籍対応SIM」
Image:楽天モバイル
日本の複数の通信会社から、海外でデータ通信ができるプリペイドタイプの格安SIMが発売されています。日本国内でSIMカードを購入して挿入するだけで利用でき、現地で使う通信料を事前に国内でチャージすることも可能です。ヨーロッパパック、アジアパックなど、地域によってプランや料金が異なりますが、2000~3000円程度で購入できます。
「滞在期間が長い」人におすすめです。一度購入しておけば繰り返し利用でき、必要なデータ量を、必要なタイミングでチャージしていくシステムです。チャージ後は、7日間、30日間など、期限が設けてあるプランが多く、有効期間内に使い切れないと無効になってしまいます。
逆を言えば、そこまでネットを利用しない人にとっては最小データ通信量をちょっとずつチャージすればいいので、都合がいいかもしれません。
多国籍対応SIMを購入する
日本国内で購入可能な多国籍対応の格安SIMは、「楽天モバイル」や「トラベルSIM」「MightySIM」などの通信事業者から販売されています。
利用できる端末は「W-CDMA(UMTS)」という通信規格に対応したSIMロックのかかっていないスマホ。国内で購入できるSIMフリースマホのほとんどが該当しており、大手携帯電話会社の一部機種でもSIMロックを解除すれば利用可能です。
渡航先が多国籍対応SIMの対象かどうかも確認しておきましょう。購入後、多国籍対応SIMをスマホにセットし、各社の手順に従って設定してください。専用アプリ、ブラウザのマイページなどからチャージ・パック購入ができるようになっています。
多国籍対応SIMの注意点
通信事業者によって対応地域ごとの値段が違う
提供している通信事業者によって料金や利用できる地域が限られているため、プランを選択する際は注意が必要です。データ通信だけなのか、通話・SMSの送信も含まれるかでも値段は変わってきます。また、通話・SMSに対応していない事業者もあるので、事前に調べておくことが必要です。
購入後の利用期限に注意
購入したプランのほとんどは、使い切るまでに期間が設けられています。購入してから24時間、7日間、30日間有効など、プランによって使える有効期限があるので、残ってしまうと非常にもったいないことになります。
構成・文:吉成早紀
編集:アプリオ編集部