「確定申告」というと難しいイメージがありますが、ふるさと納税の寄付金控除を申告するだけなら比較的簡単におこなえます。とりわけ、年末調整が済んでいる会社員なら、なおさらスムーズです。
医療費控除などふるさと納税以外の控除を申告する必要があったり、何らかの事情でワンストップ特例制度の適用を申請できなかったりして、「会社員だけど確定申告をしなければならない」というケースは少なくありません。ぜひ本記事を参考に、確定申告に挑戦してみてください。
本記事は筆者がふるさと納税と確定申告をするにあたって“実際にやったこと”をベースに解説します。状況によって手順が異なる場合もあるのであらかじめご了承ください。
【2023年度版】ふるさと納税と確定申告の行動スケジュール
「ふるさと納税」と「確定申告」をセットでおこなうにあたって、最低限押さえておきたいルールを確認しましょう。「いつまでに」「なにをすればいいのか」、1年間の大まかなスケジュールをイラストでまとめました。

2024年度の住民税の控除に反映されるためには、2023年1月1日〜2023年12月31日までにふるさと納税の申し込み(返礼品の注文と寄付・決済)を終えて、2024年2月16日から3月15日までの間に確定申告を済ませる必要があります。
確定申告が済んだら、そのあと特にやるべき作業はありません。確定申告後1〜2カ月以内には所得税の還付金が振り込まれるはずので、それを確認しましょう。その後、5月〜6月に会社から渡される住民税決定通知書で、寄付した金額が住民税から控除されていることをチェックすれば、その年度のふるさと納税でやることは終了です。
ステップ1:寄付(ふるさと納税返礼品の注文と支払い)を済ませる(2023年1月1日〜2023年12月31日まで)

2024年度の住民税控除に間に合わせるためには、寄付(=返礼品の注文と支払い)を2023年1月1日(日)0:00〜2023年12月31日(日)23:59までの間に済ませる必要があります。
2024年1月1日(月)0:00以降に注文した分は2024年度の寄付となるので、住民税控除を受けられるのはその翌年(2025年)になります。返礼品を注文するタイミングによって、住民税が控除される年度が変わってくる点に注意しましょう。
なお、本記事では「楽天ふるさと納税」で返礼品を注文する手順を紹介していますが、利用するサイトはどこでも構いません。ふるさとチョイスでも、さとふるでも、ふるなびでも、Yahoo!ショッピングふるさと納税でも、どのサービスを利用しても確定申告の手順は同じです。
自身の寄付金額の上限を確認する
まずは、控除を受けられる寄付金額の上限を確認しましょう。楽天ふるさと納税のかんたんシミュレーターを活用すると便利です。

楽天ふるさと納税 かんたんシミュレーターに、ざっくりとした年収と家族構成を入力すると、自分の寄付金額の年間上限額(目安)が表示されます。1年間でこの上限額を超えないように、ふるさと納税の返礼品を注文していきましょう。上限額を超えた分の寄付金額は税金控除の対象にならないので、注意しなければなりません。
手元に「源泉徴収票」があれば、楽天ふるさと納税 詳細版シミュレーターでより精度の高い上限額を調べることも可能です。
源泉徴収票は、毎年12月の年末調整の後(もしくは退職するタイミング)に勤め先から発行される書類です。その年(1年間)に会社から支払われた給与、および自分が納付した所得税額などが記されています。
楽天ふるさと納税 詳細版シミュレーターにアクセスしたら、「寄付上限金額を計算する」項目の下にある「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除額の合計額」をそれぞれ入力しましょう。源泉徴収票の見方が分からない人は、それぞれの入力枠の横にある[ ? ]ボタンを押すと解説が表示されます。
あとは、必要に応じて「所得情報」と「控除情報」を入力したら[計算する]ボタンを押します。これで、ふるさと納税で控除を受けられる寄付金額のより詳細な上限額を調べることができます。
寄付したい自治体・欲しい返礼品を探す
「楽天ふるさと納税」もしくは「楽天市場」にアクセスして、寄付したい自治体・欲しい返礼品を探します。なお、「楽天市場」に設けられたふるさと納税の特集ページが「楽天ふるさと納税」です。どちらを利用しても、注文手順や支払い方法、ふるさと納税返礼品のラインナップは変わりません。

ほしい返礼品を探す
どの返礼品を選ぶか悩んでいるなら、「返礼品ランキング」を参考にするとよいでしょう。「食品・スイーツ」「ドリンク・お酒」など、ジャンル別に最も注文されている人気の返礼品をチェックできます。
金額の目安とキーワードで返礼品を選びたい場合は「返礼品サーチ」機能が便利です。「1万円以内 お米」「3万円以内 和牛」「1万円以内 訳ありフルーツ」など、気になるキーワードで返礼品を探せます。
通常、楽天ふるさと納税のポイント付与率は1倍(税別100円につき1P付与)です。たとえば、何もない日に10万円を寄付したら付与されるポイント数は1000ポイント。
これがポイント3倍の日に寄付すれば3000ポイント、ポイント5倍の日に寄付すれば5000ポイントといったように、寄付する日を変えるだけで獲得できるポイントを大幅にアップできます。

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「寄付を申込む」ボタンをタップ

[寄付を申込む]をタップ
寄付したい自治体、および欲しい返礼品を選んだら[寄付を申込む]ボタンを押します。

ふるさと納税をするにあたって、必要な設定を済ませましょう。途中「ワンストップ特例制度の申請書の送付について」という項目があります。今回は確定申告をするので「不要」や「要望しない」を選択すればOKです。
確定申告に必要な「寄附金受領証明書」はワンストップ特例申請書の要望に関係なく、寄付を申し込んだ人全員に送付されます。確定申告をしたい人が、間違えてワンストップ特例申請書の「要望する」を選択しても大きな問題はありません。

注意事項を確認して[内容に同意し買い物かごへ進む]をタップ
ふるさと納税に関する注意事項が表示されるので、一読して[内容に同意し買い物かごへ進む]をタップします。

[購入手続き]をタップ
買い物かご内で改めてふるさと納税の返礼品を選択し、[購入手続き]をタップします。
注文者情報が住民票と同じであることを確認する
注文内容の確認画面が表示されたら、支払い方法や配送方法をチェックしながら一番下までスクロールして注文者情報をタップします。
この注文者情報が、住民票として登録されているものと同じか、必ずチェックしておきましょう。税金の控除に必要な「寄付金受領書」は、この注文者情報をもとに作成・送付されます。注文者情報が間違っていると、正しく手続きができません。注意してください。
楽天ふるさと納税では、注文者情報を住民票情報とみなします。必ず「注文確認画面」で注文者情報が住民票情報と一致するかご確認ください。注文者情報の初期入力値は楽天会員登録情報になっています。
注文を確定する

[注文を確定する]ボタンをタップする
注文者情報を確認したら、[注文を確定する]ボタンを押します。
通常の注文と違って、ふるさと納税の返礼品注文はキャンセルできません。「やっぱり別の返礼品を注文したい」とならないように、しっかりと吟味してから注文確定ボタンを押しましょう。

最後に「Thank You」という画面が表示されていれば、ふるさと納税の返礼品注文は完了です。
ワンストップ特例申請には「寄付する自治体を5つ以内に収めないといけない」というルールが設けられていますが、確定申告にはそのようなルールはありません。寄付する自治体の数に制限はないので、3000円や5000円などの少額の寄付も気兼ねなくおこなえます。
返礼品を受け取る

ふるさと納税返礼品のマンゴー
発送時期は返礼品によって異なります。旬の食材などは届くのが半年以上先になるケースも珍しくありません。あらかじめ、注文履歴などで発送時期を確認しくとよいでしょう。
なお、返礼品には税金控除に必要な書類は同梱されていません。これらの書類は、返礼品とは別に自宅に郵送されます。
確定申告に必要な書類(寄附金受領証明書)が自宅に届く

ふるさと納税の寄付(支払い)が完了してから、数日から数週間ほどで自宅に封筒が届きます。筆者の経験上、返礼品よりも先に書類が届くケースが多いです。

寄附金受領証明書
開封して、「寄附金受領証明書」が入っているか、正しい情報が記載されているかチェックしましょう。寄附金受領証明書の確認ができたら、あとは確定申告期間(2024年2月16日〜3月15日)を迎えるまで、大切に保管しておきます。
ステップ2:確定申告を済ませる(2024年2月16日〜2024年3月15日まで)

確定申告期間は、例年2月16日〜3月15日です。自分の好きなタイミングでおこなえるわけではありません。年度内の税額控除に反映させたいなら、2024年2月16日〜3月15日の間に必ず確定申告を済ませましょう。
なお、確定申告の期限を守れなかったとしても、5年以内であれば控除を申告(還付申告)できます。例えば2024年2月16日〜3月15日期間に間に合わなかった場合は、2028年12月31日までに還付申告の手続きをおこなえば、税金の還付を受けられます。
- 方法1:確定申告書を作成して税務署の窓口に持っていく
- 方法2:確定申告書を作成して税務署へ郵送する
- 方法3:e-Tax(イータックス)を用いて、オンライン上で確定申告書を提出する(※マイナンバーカード必須)
寄付金控除のための確定申告は、上記3通りのやり方があります。今回、筆者は方法3の「e-Tax(イータックス)」を利用してスマホで確定申告をおこないました。
書類を印刷したり郵送したりする手間がかからないので、手続きはかなりスムーズです。ふるさと納税の控除申請だけなら、30分ほどで終えられるでしょう。マイナンバーカードを所持しているなら、e-Tax(イータックス)を活用することをおすすめします。
必要書類を準備する

(1)寄附金受領証明書(2)マイナンバーカード(3)源泉徴収票
e-Tax(イータックス)を開始する前に、まずは手元に「(1)寄附金受領証明書(寄付したすべての自治体分)」と「(2)マイナンバーカード」を準備します。年末調整済みの会社員の人は「(3)源泉徴収票」も用意しましょう。
源泉徴収票とは、毎年12月の年末調整の後(もしくは退職するタイミング)に勤め先から発行される書類のこと。1年間に会社から支払われた給与、および自分が納付した所得税額などが記されています。
あわせて、「マイナポータル」アプリを使ったことがない人は、下のボタンからインストールを済ませておいてください。「マイナポータル」アプリは、マイナンバーカードを読み取る際に必須となります。
国税庁 確定申告書作成コーナーにアクセスする
スマホで「国税庁 確定申告書作成コーナー」にアクセスします。

「作成開始」をタップ

「次へ」をタップ
国税庁 確定申告書等作成コーナーにアクセスしたら、[作成開始]をタップ。作成のステップが表示されるので、一読して[次へ]を押します。
e-Tax(マイナンバーカード方式)を選択する


作成する申請書等の選択で「所得税」にチェックを入れます。今回は、提出方法を「e-Tax(マイナンバーカード方式)」、マイナポータルは「連携しない」に設定しました。



申告内容に関する質問に答えていきましょう。筆者は給与所得のある会社員であり、年末調整も済んでいるので上の通り回答しました。ただ、もちろん個人の状況によって選択は変わります。自身の状況に該当するものを選んでください。


マイナンバーカードの読み取り画面への案内が表示されます。一読して[同意して次へ]→[次へ]の順に進んでください。
マイナンバーカードを読み取る



「マイナンバーカードの読み取り」をタップします。「マイナポータルで開きますか?」の問いに対して[開く]を選択すると「マイナポータル」アプリが起動します。続いて、[読み取り開始]ボタンを押してください。

マイナンバーカードを読み込ませる
上の画像のようにスマホの背面にマイナンバーカードをくっつけて、読み込ませてください。「読み込みが完了しました」と表示されればOKです。



マイナンバーカードに登録されている本人情報が表示されるので、確認して[次へ]をタップします。

マイナポータル連携、および楽天ふるさと納税マイページでの証明書電子発行申請をおこなった人は、「xmlデータの読込」をすることでふるさと納税の内容(寄付した自治体や寄付金額など)を一括で登録できます。寄附金受領証明書の内容入力作業を省くことが可能というわけです。
今回、筆者はマイナポータル連携も証明書電子発行申請もおこなわなかったので、[xmlデータを読み込まず次へ]に進みました。なお、楽天ふるさと納税マイページでの証明書電子発行には2営業日ほどかかるようなので、利用したい場合は前もって申請しておきましょう。
源泉徴収票の内容をカメラで読み取る


源泉徴収票が手元にある人は、[カメラで源泉徴収票を読み取る]ボタンをタップ。[撮影する]に進みましょう。

スマホのカメラが起動するので、枠に合うように源泉徴収票を撮影します。


「読み取りが完了しました」と表示されたら[次へ]をタップ。実際の源泉徴収票と読み取り結果を見比べて、正しい内容が反映されているか確認しましょう。確認できたら[補正完了]をタップしてください。
すべての自治体分の寄附金受領証明書の内容を入力する


入力内容から計算した所得金額をチェックしたら、[寄附金控除]の項目をタップ。入力欄の[+]を押しましょう。

寄附金受領証明書の内容を入力していく
寄附金受領証明書の内容を入力していきましょう。複数の自治体にふるさと納税をした場合は、[別の寄附先を入力する]をタップして全自治体分の寄附金受領証明書を登録してください。


全自治体分の入力が終わったら、内容をチェックして[次へ]をタップします。


控除される金額(ふるさと納税した金額−2000円)が表示されるので、確認して[閉じる]→[次へ]の順にタップ。そのほか、医療費控除をおこなう場合は、[医療費控除]に進み案内に従って入力しましょう。

寄附金受領書は自宅で保管しておく
e-TAXで確定申告した場合は、寄附金受領証明書の添付(郵送での提出)は不要です。ただし、寄附金受領証明書は5年間、自宅で保存しておく義務があります。
分かりやすく年度別にファイリングして、自宅で大切に保管しておきましょう。
還付金の振込口座を指定する


続いて、還付金の確認と受け取り口座の指定をおこないます。確定申告をおこなうと「住民税の控除」だけでなく「所得税の還付」が受けられます。所得税の還付金を銀行口座に振り込んでもらう場合、口座情報をここで入力しましょう(ほとんどの銀行が対応しています)。
申告書の送信前に、申告書の内容に誤りがないか、帳票を表示して確認します。[帳票表示・印刷]ボタンをタップすると、送信前の帳票をPDF形式で確認できます。誤りがなければ[次へ]をタップします。

[送信する]をタップして、確定申告書データを送信します。[次へ]→[帳票表示・印刷]をタップすると、申告書のPDFデータが表示されます。必要に応じてPDFデータを保存しておきましょう。これで確定申告の手続きは完了です。
ステップ3:所得税の還付金が振り込まれる(確定申告完了後からおよそ1カ月〜2カ月の間)
ふるさと納税の「確定申告」をすると、住民税と所得税が控除・還付されます。住民税だけで控除する「ワンストップ特例制度」との大きな違いです。確定申告をした場合でもワンストップ特例を利用した場合でも、控除される合計額は同じになります。

確定申告とワンストップ特例申請の違い
例えば、1年間にふるさと納税で5万4000円を寄付したとします。
「ワンストップ特例制度」を利用した場合、控除額の全額が翌年度の住民税から控除されます。今回の例では、5万4000円から自己負担金の2000円を差し引いた5万2000円が住民税から控除されることになります。
一方「確定申告」をした場合、「住民税からの控除」と「所得税の還付」の2つの方法で税金が控除されます。今回の例では、5万4000円から自己負担金の2000円を差し引いた金額のうち、4万6800円が住民税から控除されるほか、所得税の還付金として5200円が振り込まれます。
どちらの方法も受けられる控除の合計額は同じですが、“控除のされ方”が異なるというわけです。

税務署からメールが届く

e-Taxシステムにログイン
所得税の還付金は、確定申告を完了したあと、数週間から2カ月程度で指定した口座に振り込まれるはず。e-Taxの場合、還付金の処理状況が税務署からメールで随時届くので、記載されているURLをタップしてマイナンバーカード情報でログインし内容をチェックしておきましょう。

税務署から還付金が振り込まれる
筆者の場合、確定申告完了後およそ2週間程度で還付金が振り込まれました。
ステップ4:住民税決定通知書で控除金額をチェックする(2024年5月〜6月ごろ)
確定申告の手続きが正常におこなわれていれば、2024年度の住民税から寄付した金額分が控除されます。

住民税決定通知書
「住民税決定通知書」で、住民税の控除額を確認してみましょう。「住民税決定通知書」とは、2024年6月からの1年間に支払う住民税の金額が記載された書類です。給与所得のある会社員の場合、5月〜6月頃に勤め先から渡されます。

住民税決定通知書の摘要欄にある「寄附金税額控除」の項目を見てください。ここに記載されている「寄附金税額控除額」(住民税分の控除)と「所得税の還付金額」の合計に自己負担金の2000円を足した金額が、ふるさと納税で寄付した金額の合計になっていれば正しく控除されています。
なお、自治体によっては「市民税(区民税)」と「県民税(都民税・府民税・道民税)」それぞれの金額が別で書かれていることもあります。この場合は、両者を足した金額を寄附金税額控除として計算してください。

例えば、ふるさと納税をした金額の合計が5万4000円、所得税の還付金が5200円、住民税決定通知書に記載されていた寄附金税額控除が4万6800円だったとします。
この場合、所得税の還付金5200円+住民税決定通知書の記載額4万6800円=5万2000円。これに自己負担金の2000円を足すと、5万4000円(ふるさと納税をした金額の合計と同額)となり、正しく控除されていることがわかります。