Xperiaシリーズ初のデュアルカメラを搭載するソニーのフラッグシップモデル「Xperia XZ2 Premium(エクスペリア エックスゼットツー プレミアム)」。NTTドコモおよびauの2018年夏モデルとして登場しますが、価格はau版が10万8000円、ドコモ版が11万2752円(いずれも税込)と最上位モデルらしいところ。「HUAWEI P20 Pro」や「iPhone X」と近い価格帯で、まさにライバルと言えます。
今回はそんなXperia XZ2 Premiumuの魅力や気になる点について、ライバル機との比較も交えながら紹介します。なお、今回はau版の試作機でレビューを進めていきます。
本体サイズはとても大きい
写真で見ると、同じく2018年夏モデルの「Xperia XZ2」と非常によく似ているためサイズが実感しにくいのですが、本体はかなり大きくなります。ディスプレイは5.8インチなのですが、その割には手にした時に大きく感じます。そこで、他の機種と大きさを比べてみましょう。
Xperia XZ2 Premium | HUAWEI P20 Pro | iPhone 8 Plus | |
---|---|---|---|
サイズ | 158×80×11.9ミリ | 155×74×7.9ミリ | 158.4×78.1×7.5ミリ |
ディスプレイ | 5.8インチ | 6.1インチ | 5.5インチ |
数値を見るとさほど大きく感じませんが、横幅80ミリのスマホは少数派です。しかも、158ミリと長さもかなりあります。登場当初は「大きすぎる」という声が多かったiPhone Plusシリーズの「iPhone 8 Plus」と比べても高さがほぼ同様で、幅が上回っています。
しかも、ディスプレイが最近流行の細長いワイドタイプではないために、5.8インチというサイズの割には大きく感じるのです。ポケットに入れるのは非常に苦しく、持ち歩きは基本的にバッグに入れることになるでしょう。
「Xperia XZ2」レビュー、美しい新世代デザインが目を引くフラッグシップモデル
シリーズ最上位モデルのXperia XZ2 Premium
右のXperia XZ2 Premiumは非常に大きく感じる。中央はHUAWEI P20 Pro、左がiPhone X
重量が最大のネックだ
サイズが大きいのは、悪いことばかりではありません。ディプレイが大きければ文字が大きく表示されますし、写真や動画も迫力があります。
ワイドタイプのディスプレイはインチ数の割にコンパクトで、特に横幅が細いために持ちやすいメリットがあります。しかし、縦横比が4対3の写真を表示すると黒帯になるエリアが大きく、実質的には画面に無駄が発生します。また、ブラウザなどでも縦に長く表示されるので文字サイズはあまり大きくなりません。
どちらがよいかは使い方によって良し悪しが分かれるところで、ワイドではない大画面タイプのほうがコンサバな使い方ができます。
Xperia XZ2 Premiumを手にして最も懸念を抱いたのは、その重量です。スペックでは234グラム(サイズを含めて暫定値)となっています。キッチンスケールで計測してみましたが、236グラムありました。ちなみにHUAWEI P20 Proは180グラム、iPhone Xは172グラムでした。手にしても「重いなあ」という印象をもつはずです。
慣れてしまえば問題はないのかもしれませんが、普段軽いスマホを使っていると、長時間片手で持ち続けて利用するのに不安を覚えます。また落下が怖いので、ケースを付けるとさらに大きく、重くなってしまいます。購入を考えている人は、店頭で一度は持ってみることをおすすめします。
Xperia XZ2 Premiumは相当なヘビー級
HUAWEI P20 Proは180グラムで、この程度が使い勝手がよい
iPhone XもP20 Proに近い重量だ
デザインは素晴らしいがカメラ位置が課題
本体のデザインは、Xperia XZ2に似ていて目を引きます。背面は美しい曲線を描いており、ふっくらと膨らんでいる印象を受けます。鏡面仕上げにもこだわっていて、光源などが反射しても美しく歪みがありません。指紋が付きやすいのがネックですが、そこは最近増えている他のミラー仕上げモデルでも同様です。
ディスプレイは2.5D仕上げで、縁(フチ)が美しくアールを描いています。本体はかなり角張っていますが、手触りは角(カド)を感じさせません。形状が手になじむので、サイズの割には持ちやすさも上々です。
「Xperia XZ2」レビュー、美しい新世代デザインが目を引くフラッグシップモデル
しばらく使ってみて使いづらさを感じたのが、カメラの位置です。大きなレンズのデュアルカメラが中心部のやや上に位置しているのですが、撮影時に指が入ってしまうことが多いのです。
普段HUAWEI P20 ProやiPhone Xを使ってる筆者は、左手でスマホをしっかりホールドしています。どちらのモデルも本体を横にするとカメラが上に位置するように設計されているため、それで問題がないのです。ところがXperia XZ2 Premiumで同じ持ち方をすると、指がレンズに掛かってしまうのです。
デザイン的にはXperia XZ2 Premiumのほうが間違いなく美しいのですが、もう少し位置を工夫してほしいと感じました。
本体の背面は美しい鏡面仕上げで、中心が膨らんだ形状。写り込みも美しい
カメラの位置がセンター中心寄りなのが気になる。指紋センサーもやや下すぎる
4K HDR対応ディスプレイは非常に明るい
ディスプレイは4Kを採用しています。解像度は3840×2160ドットで、Xperia史上で最高に明るいとのお墨付きです。確かに、これまでの4Kディスプレイは精細な表示を実現しつつも、やや暗いモデルが目立ちました。緻密な表示は暗く感じるのです。
この点、Xperia XZ2 Premiumは非常に明るく大満足です。HDRに対応し、動画もHDR撮影をしてそのまま表示できます。さらに、YouTubeなどの動画を4Kにアップスケーリングする機能も搭載します。画質と明るさはともに満足できるのですが、実際に使ってみるとライバルには引けを取る場面もありました。
本機をレビューしていたのは、ちょうど真夏の明るい時期。日中の直射日光下でも撮影テストをしたのですが、有機ELを採用するiPhone XとHUAWEI P20 Proは、そこそこプレビュー画面が使い物になりました。ところが、Xperia XZ2 Premiumは非常に見づらく感じました。
また、最高輝度での明るさはiPhone Xには及びませんし、斜めから見ると有機ELに比べて差があります。4Kの緻密な美しさと有機ELの明るさ、くっきり感のどちらを選ぶかの判断は微妙です。
また、上述のように縦横比も最近のスマホとは異なります。4:3の写真を多く撮影するならXperia XZ2 Premiumのほうが合っています。現状では、アプリもワイドタイプより使いやすいでしょう。しかし、これだけワイド液晶が増えてくると、数年後にアプリ対応などで残念な思いをする可能性もあります。
左のiPhone Xは飛び抜けて明るい。右のXperia XZ2 Premiumもほぼ合格だ
斜めから見ると、液晶のXperia XZ2 Premiumは暗さを感じる
microSDカードに対応で最大400GBまで増設できる
Xperia XZ2 PremiumはnanoSIMを1枚セットできる仕様で、他のキャリア向けモデルと同様です。注目したいのはmicroSDカードに対応することで、最大400GBまでストレージを増強できます。
最近はmicroSDカードを増設できない上位モデルが増えていますが、動画や写真を大量に保存すると不足を覚えるでしょう。Xperia XZ2 Premiumは、内蔵ストレージが64GBしかないのがちょっと物足りませんが、microSDカードによる増強ができるので、不足を覚えることはないはずです。
気をつけたいのは、イヤホン端子がないことです。さらにイヤホンも付属しません。付属のアダプターを利用してUSB-C端子でイヤホンに接続するのが一般的な使い方になるでしょう。まだUSB-C接続のイヤホンは市販されている数が少なく、価格も安くありません。HUAWEI P20 ProはUSB-C接続のイヤホンが付属しており、ちょっと差を感じる部分です。
ただし、USB-C接続のイヤホンでは充電しながら利用することはできないため、そんな使い方をするならBluetooth接続のワイヤレスイヤホンがおすすめです。
microSDカードによるストレージ増設に対応する
充電端子はUSB-Cで、イヤホン端子は搭載しない
Qi規格のワイヤレス充電に対応
急速充電はQuickCharge 3.0に対応しています。これが実に微妙です。従来はQuickChargeが主流で、対応するバッテリーやACアダプターも多数販売されています。ところがここへ来て、急速にPowerDelivery(PD)が普及し始めています。PDに対応していれば、パソコンのACアダプターを使って急速充電ができる可能性もあります。今後を見据えると、PDに対応してほしいところです。
また、最近主流になってきたQi(チー)規格のワイヤレス充電に対応するのも最上位モデルらしいところです。ソニー製のワイヤレスチャージドッグ(別売)を使うと、9Wの充電が可能としています。今回は市販のAnker製の充電パッドを使いましたが、問題なく動作しました。
市販の充電パッドでもワイヤレスで充電できた
フルセグ・ワンセグ、おサイフケータイ、防水に対応する“全部入り”モデルとなっているため、将来オリンピック中継を見る時にも活躍するはずです。なお、テレビを視聴する際は付属のイヤホンアダプターがアンテナになります。Bluetooth接続のイヤホンで見る時にも、アダプターだけは付けておくことになります。充電ケーブルなどを挿していると、それなりに電波の感度がよくなりますが、メーカーが保証する使い方ではありません。
カメラは超高感度撮影で暗いシーンが得意
デュアルカメラは、モノクロセンサーを組み合わせることで、暗さに強いタイプを採用しています。カラーセンサーの解像度は1920万画素で、加えて1220万画素でF1.6のモノクロセンサーが搭載されます。
最高ISO感度は51200と、まさに一眼レフ並みの性能です。今回は暗い場所での撮影もテストしてみましたが、確かに差があります。暗さに強いHUAWEI P20 Pro比べても勝っていると感じる場面も少なくありませんでした。なお、暗いシーンでの撮影はiPhone Xとも比べました。
ただし、ズームは一般的なカメラと変わりません。「暗さに加えてズームにも強く」と欲張ると、トリプルカメラになるわけです。暗いシーンの撮影に関しては、筆者が試したスマホの中ではナンバーワンでしたが、トータルで見るとズームにも強いHUAWEI P20 Proのほうが勝っています。
「HUAWEI P20 Pro」レビュー、圧巻のカメラ性能はライバル機をリード
通常の撮影
Xperia XZ2 Premiumで撮影
HUAWEI P20 Proで撮影
滑り台のてっぺんに明るさを合わせて撮影しています。どちらも文句なしの出来ですが、曇りの日だったのでHUAWEI P20 Proのほうが現実に近いものの、明るさをマニュアルで調整すれば似たような結果になります。
近接撮影
左:Xperia XZ2 Premiumで撮影右:HUAWEI P20 Proで撮影
ヒマワリを撮影。どちらも非常に美しいのですが、Xperia XZ2 Premiumのほうが花びらが飛ばずにくっきりと写っています。
ズーム撮影
3倍ズーム
Xperia XZ2 Premiumで撮影
HUAWEI P20 Proで撮影
5倍ズーム
Xperia XZ2 Premiumで撮影
HUAWEI P20 Proで撮影
5倍ズームにすると差は歴然で、ズーム用のレンズを持つHUAWEI P20 Proが勝っています。
暗所での撮影 1
Xperia XZ2 Premiumで撮影
HUAWEI P20 Proで撮影
iPhone Xで撮影
肉眼ではかなり暗い公園で撮影しました。どれもノイズは目立ちますが、Xperia XZ2 Premiumはケタ違いに明るく撮れています。ここでは、iPhone Xは完全に格下の出来です。
暗所での撮影 2
Xperia XZ2 Premiumで撮影
HUAWEI P20 Proで撮影
iPhone Xで撮影
Xperia XZ2 Premiumは自然な色合いで明るく撮れています。HUAWEI P20 Proも明るいのですが、花や葉の色があまり魅力的ではありません。iPhone Xはここでも分が悪くなっています。
暗所での撮影 3
Xperia XZ2 Premiumで撮影
HUAWEI P20 Proで撮影
iPhone Xで撮影
道路標識に明るさを合わせて撮影しました。Xperia XZ2 Premiumは非常に明るく光源が飛んでいますが、明るさを調整すれば美しい写真になります。ここまで明るいのは驚きです。HUAWEI P20 Proの出来も文句なし。iPhone Xでは、全体が明るくないのに光が飛んでいるのが残念です。
まとめ
Xperia XZ2 Premiumはカメラ好きのXperiaファンに推奨できますが、大きな本体サイズは評価が分かれるところです。またディスプレイも液晶の自然な美しさと、パキッとした有機ELで好みが分かれるでしょう。
どちらにせよ、このクラスの製品を買うのですから、ライバル機と比較しながら選択することをおすすめします。HUAWEI P20 Proと比べるとカメラはやや劣りますが、Xperia XZ2 Premiumはテレビが視聴できるメリットなどがあり、使い方によって選択できるところもあります。
今回は試作機によるレビューのため、ベンチマークテストや一部の撮影機能(背景ぼかしなど)が利用できませんでしたが、スペック的にも性能は文句なしのはずで、3〜4年は満足して使える機種と考えられます。
構成・文:戸田覚
編集:アプリオ編集部