国内外の情報通信サービスや最新機器が一同に集結するICT分野の総合展示会、「Interop Tokyo」が6月12日より幕張メッセで開催されている。
500以上の企業や団体の専門ブースが立ち並ぶ中、同会場内の一角において日本テレビ放送網ICT戦略本部担当局次長・山川洋平氏による講演「民放公式テレビポータル”Tver”の現在と未来」が併催された。
日本テレビ放送網(株)ICT戦略本部担当局次長 山川洋平氏
TVer(ティーバー)とは
左:ホーム画面では大特集に続き、おすすめ番組やランキングも表示される右:在京5局に在阪5局が加わった配信ラインナップ
TVerは、テレビ番組放送終了後にキャッチアップ配信をおこなういわゆる「見逃し配信」アプリ。番組終了後、次回の放送開始前まで原則1週間、インターネット経由で番組の視聴ができる広告付きの無料動画配信サービスだ。各局独自の見逃し配信を超え、在京5局、在阪5局のコンテンツを横断的に視聴できるポータル的な役割を担う。
アプリ画面には、ジャンル別新着番組のほか、放送局ごとのおすすめやランキング、ユーザーごとに選定されたおすすめ作品などが表示される。個々のユーザーが観たい番組にたどり着きやすい動線を確保するのが狙いだ。
TVer最新の利用状況
2015年10月、50番組の配信からスタートしたTVer。2019年6月現在の配信数は200番組にのぼり、毎月1000本弱のコンテンツが新しく追加されている。今回、会場で公開されたデータによれば、月間の動画再生数は7000万、アプリのダウンロード数は1900万を超える。
観たい番組が明確なユーザーだけでなく、「ここに来たら何か面白いものがあるんじゃないか」という理由で利用するユーザーも多い。
こういったなんとなく訪れるユーザーに対する「プラットフォーム」としての役割に大きな意義と将来性を感じている、と語る山川氏。TVer事務局長も兼任している。
ユーザーとテレビをつなぐ、TVerの目的
視聴デバイスの変化や違法動画の蔓延、若年層のテレビ離れなど、民放各局が抱えている共通課題を解決するべく、TVerはサービスの目的を次のように捉えている。
- 若い世代を中心に、誰でも、いつでも、どこでも視聴可能にする
- 公式のサービスを広げることで、違法動画の撲滅につなげる
- テレビコンテンツへの接触ポイントをつくり、テレビの視聴を促進させる
- 安心・安全なプラットフォームとして成長する
さらに、ユーザー調査やアンケートなどの視聴データベースを共有し、媒体の価値を毀損しない広告スタイル「PMP(プライベート・マーケット・プレイス)」の促進や、有料動画サービスへの流入を通して動画配信の成長につなげる、という運営上の方針も語られた。
同時配信やご当地番組特集など、TVerの新たな挑戦
女性ティーン層の認知率が66%を超えるなど、若者を中心に認知度も年々増加しているTVer。見逃し配信にとどまらない新たな試みや目新しい企画にも注目が集まる。
インターネット同時配信の実証実験を実施
このほかにも『なでしこジャパン国際親善試合』『ワールドビジネスサテライト』(TX)など、同時配信の実証実験が続いている
2018年6月におこなわれたFIFAワールドカップロシア開催時には、試合放送のインターネット同時配信を実施。これは、大規模イベントなどトラフィック集中時の情報配信のあり方を検証する目的で、総務省と共同でおこなわれた実証実験だ。
全64試合分のハイライト動画やマルチアングル動画のほか、民放放送32試合分をライブ配信。NHKが推進を検討しているテレビ番組のインターネット常時同時配信を意識した試みではあったが、最大同時接続数は18万弱、と大きな結果には結び付かなかった。それでも「TVerが配信しなかったら、テレビがない人にこのコンテンツは届かなかったかもしれない」と語る山川氏の表情からは明るい見通しが感じられる。
エリアごとのローカルコンテンツを配信「ご当地番組特集」
エリアは「関東」「関西」「中部」「北海道・東北」「中国・四国」「九州・沖縄」に分かれる。全国区で活躍するタレントが出演する人気番組が多い
また、全国ネットではない番組を制作局でエリアごとに分け、ユーザーがエリア単位で番組を検索できるようにした「ご当地番組特集」も興味深い新企画だ。
特集内における番組タップ数を調査した結果、関東では「関西エリア」が最も多くタップされた。番組群をエリアで囲うことにより、自分の居住地域ではないエリアにユーザーの注目が集まることがわかる。
改元に合わせて懐かしのアーカイブ映像を配信「TIMESLIP TVer」
元号が変わる直前には、平成を彩った「ちょっと懐かしい」テレビ番組を厳選して期間限定配信。日本テレビの『家なき子』やTBSの『ずっとあなたが好きだった』『どうぶつ奇想天外!』、フジテレビの『101回目のプロポーズ』『あいのり』など、ジャンルと放送局を超えた映像アーカイブは民放公式ポータルならではのサービスと言える。
テレビアプリをローンチ
また、ユーザーからの「テレビで観たい!」の声に応え、2019年4月にTVerテレビアプリを開始。同時配信/ライブ配信を除き、原則PCサイト・アプリと同じコンテンツが大画面で視聴できる。現在の対応機種は Amazon Fire TVシリーズと2015年以降に発売したAndroid TV搭載のソニーBRAVIAにとどまる。
NHKも観られる? TVerの今後
今後の展望としてTVerが掲げるのは、主に「参加局の拡大」「大型イベント(東京五輪)の配信」だ。
まずは、インターネットとテレビを連携させた「常時同時配信」に向け、民放との協議を進めるNHKが2019年度内の参加を検討中。その他各地の民放局からも問い合わせが増加している模様で、今後参加配信局の拡大が期待される。
また、2020年に開催される東京オリンピックの映像コンテンツを配信予定。配信規模やラインナップなどの詳細はまだ明らかにされていない。