近年、東京のオフィス街などでフードトラックを見かけることが多くなってきました。お昼がいつも同じ定食屋さんやコンビニ弁当では飽きてしまいますが、オフィスの近所に停まっているフードトラックは、よく入れ替わるので飽きないんですよね。
そんなフードトラックは、アメリカでも人気。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』はそのタイトルどおり、フードトラックを題材にした映画です。SNSで炎上した一流シェフがクビになり、フードトラックで再起をはかるのですが、監督と脚本、製作総指揮を務めたジョン・ファヴローが自ら主演しています。恰幅のいいお腹がとても良い味を出しています。ロバート・ダウニー・Jrやダスティン・ホフマン、スカーレット・ヨハンソンなども出演していて、ファブロー監督の人望の厚さがうかがえます。
とてもハートウォーミングな内容で、料理を通じて、家族の絆を取り戻す過程をロードムービー形式で楽しく描いています。しかも、ただの料理映画ではなくSNSの活用法についても非常に学びにある作品です。
SNSは災いの元?
ロサンゼルスの一流レストランの総料理長を務めるカール(ジョン・ファヴロー)は、有名フードブロガーに料理をけなされ、アカウントを作ったばかりのTwitterで罵倒してしまいます。それがあっという間に拡散、一夜にして悪い意味で有名人となってしまい、レストランオーナーとも険悪なムードとなり、再びやってきたフードブロガーと喧嘩したところを動画に撮られ、それがまた大拡散。レストランをクビになってしまいます。
悪い評判が定着して再就職も上手くいかないカールは、元妻の提案で息子と一緒にマイアミに行くことに。そこで極上のキューバサンドウィッチに触れ、これをフードトラックで販売することを思いつきます。オンボロのトラックを買い付け、元同僚のマーティンと夏休み中の小学生の息子パーシーの3人で、マイアミからロサンゼルスまで、フードトラックの移動販売の旅に出るのです。
息子のパーシーは、父親と違ってTwitterの達人。ロケーションタグをつけてトラックの現在地をツイートしながら、見事な宣伝を展開。店はたちまち大繁盛、カールは見事に復活し、息子とも絆を取り戻していくのです。
一流レストランでは、自分の思うような料理を作らせてもらえず、オーナーに言われるままの料理しか出していなかったのですが、フードトラックで自分の好きなようにメニューを作り、その料理の旅を通じて息子に自分の誇らしい姿を見せることができたカールは、人生の大切なことに気づくのです。
フードトラックとSNSの相性の良さ
この映画の主な舞台のひとつであるロサンゼルスでも、2008年頃からフードトラックが流行していました。この映画でも息子のパーシーがTwitterで宣伝をする様子を描いていますが、フードトラックはSNSの流行と時を同じくして流行しました。
フードトラックは移動できるのが特徴ですから、リアルタイムで情報を発信できるTwitterと相性が良いんですね。「今日はここで店を出しているよ」などというツイートをして、それを読んだ人が買いに来るわけです。最近ではインスタグラムを使うお店も多いみたいです。
この映画では、SNSで手痛い失敗をした主人公が、SNSの使い方を熟知している息子のおかげでフードトラックを成功させるわけですが、SNSの良い部分と悪い部分が両方描かれているのも本作の優れた部分です。
SNSは使い方を間違えれば、炎上してとんでもないことになってしまいますが、上手に活用すれば、アイデアひとつで人気のお店を作ることもできるんです。そんな現代的な教訓の部分と、親子の愛情の普遍性がバランスよく描かれた素敵な作品です。
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