書籍を耳で聴けることで注目を集めているオーディオブックサービス。「audiobook.jp(オーディオブック・ドット・ジェーピー)」は、オーディオブックにおける最有力サービスです。
本記事では、audiobook.jpで配信されている多数の小説作品の中から再生回数ランキング上位10作品を紹介します(ランキング集計期間:2022年10月1日〜2023年9月30日)。また、audiobook.jpを運営するオトバンクの担当者を取材し、各作品のおすすめポイントを語ってもらいました。
順位 | タイトル | 著者 | 聴き放題プラン |
---|---|---|---|
1位 | invert 城塚翡翠倒叙集 | 相沢沙呼 | 対象 |
2位 | かがみの孤城 | 辻村深月 | ー |
3位 | 流浪の月 | 凪良ゆう | ー |
4位 | 硝子の塔の殺人 | 知念実希人 | 対象 |
5位 | 星を継ぐもの | ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿/訳 | ー |
6位 | 最後の医者は桜を見上げて君を想う | 二宮敦人 | 対象 |
7位 | ライオンのおやつ | 小川糸 | ー |
8位 | お探し物は図書室まで | 青山美智子 | ー |
9位 | 推し、燃ゆ | 宇佐見りん | 対象 |
10位 | 正欲 | 朝井リョウ | 対象 |
1位:『invert 城塚翡翠倒叙集』audiobook.jpユーザーに最も評価された作品

聴き放題プラン対象作品
「第20回本格ミステリ大賞」を受賞した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の続編。audiobook.jpユーザーが選ぶ「オーディオブック大賞2022」の文芸部門では大賞に選ばれました。audiobook.jpユーザーに最も評価された作品で、現在も多くのユーザーに支持されています。
本作はタイトルに「倒叙集」とあるとおり、最初に犯人がわかっている状態でストーリーが始まる倒叙ミステリ。犯行の動機や完全犯罪の謎をどう暴いていくのかが面白いポイントです。オーディオブックの再生時間は15時間強ですが、3編に分かれているため、1編ごとの再生時間は決して長いわけでありません。起承転結がはっきりしているので、audiobook.jp初心者向きの作品になっています。
あなたは探偵の推理を推理することができますか? 綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?
- 著者:相沢沙呼
- 出版社:講談社
- ナレーター:古賀葵、田澤茉純、宮園拓夢、行成とあ、神尾晋一郎など
- 再生時間:15時間16分48秒
- 出版日:2021年7月7日
- 販売開始日:2022年6月21日
2位:『かがみの孤城』19時間の長編ながら、早く次の展開を聴きたくなる感動作品

2022年にアニメ映画化されているので、知っている人が多い作品かもしれません。「2018年本屋大賞」で1位、audiobook.jpユーザーが選ぶ「オーディオブック大賞2023」の文芸部門で準大賞を獲得しました。
思春期の中学生が抱える葛藤や心理描写がうまく描かれています。生きづらさを感じている登場人物が前を向いて生きていく人間模様には共感させられます。
豪華声優陣の演技も素晴らしく、ストーリーに引き込まれる作品です。再生時間は約19時間と非常に長いですが、それでも聴き疲れません。聴けば聴くほど、早く次の展開を聴きたくなってしまいます。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた──。
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
- 著者:辻村深月
- 出版社:ポプラ社
- ナレーター:花守ゆみり、東山奈央、島﨑信長、伊藤かな恵、小林裕介など
- 再生時間:19時間6分47秒
- 出版日:2017年5月11日
- 販売開始日:2019年11月30日
3位:『流浪の月』声優の演技力が高いとaudiobook.jpユーザーから高評価

audiobook.jpユーザーが選ぶ「オーディオブック大賞2023」の文芸部門で大賞を受賞しました。2022年には広瀬すずさんと松坂桃李さんの主演で実写映画化もされています。
事件の当事者と当事者以外の間でうずまく感情や関係性が深く描かれた、聴き応えのある作品です。登場人物ごとに声優が分かれており、それぞれの朗読が素晴らしくて世界観に引き込まれてしまいます。
声優の演技力が高いとaudiobook.jpユーザーからも高い評価を得ています。本で読んだ人も映画を観た人も、ぜひaudiobook.jpで聴いてほしいです。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい──。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
- 著者:凪良ゆう
- 出版社:東京創元社
- ナレーター:大空直美、小林千晃、木島隆一、幸村恵理、関根瞳など
- 再生時間:12時間6分28秒
- 出版日:2019年8月29日
- 販売開始日:2023年5月19日
4位:『硝子の塔の殺人』まるで映画を観ている感覚を味わえる本格ミステリ

聴き放題プラン対象作品
audiobook.jpユーザーが選ぶ「オーディオブック大賞2023」の聴き放題部門で準大賞を受賞しました。人が立ち寄らない場所で密室殺人が起きる、絵に書いたような本格ミステリです。作中ではミステリ作家やミステリ作品の名前が複数登場し、ミステリ好きにとっては、「この作品は知っている」と思えるはずです。
第1、第2、第3……と立て続けに殺人が起こり、犯行はすべて密室でおこなわれます。最後には大どんでん返しもあり、実際に聴いてとても驚きました。最後の結末が非常に楽しみな作品です。
声優陣もとても豪華。情景が目に浮かんでくるようで、映像が無くても映画を観ているような感覚を味わえます。
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
- 著者:知念実希人
- 出版社:実業之日本社
- ナレーター:新垣樽助、清都ありさ、浅科准平、稲垣好、仲村かおりなど
- 再生時間:17時間10分13秒
- 出版日:2021年7月30日
- 販売開始日:2022年8月24日
5位:『星を継ぐもの』ナレーターは俳優・森田順平、ミステリファンも必聴のハードSF

日本では1980年に出版された、「ハードSF」と呼ばれるジャンルのSF作品です。SF作品でありながら、ミステリの要素も含まれています。
本作品は、俳優の森田順平さんが単独で全編のナレーターを務めています。今回紹介している他の作品とは異なり全て一人で朗読しているのですが、話し方が上手くてストーリーに引き込まれてしまいます。キャラクターごとに声色を変えているのでわかりやすく、ストーリーもしっかり頭に入ってきます。
再生時間は約10時間と比較的短め。SFとミステリの両方の要素があるので、とても聴き応えのある作品です。
月面調査員が、真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体はなんと死後五万年を経過していることが判明する。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか?
いっぽう木星の衛星ガニメデでは、地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡したデビュー作。
- 著者:ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿/訳
- 出版社:東京創元社
- ナレーター:森田順平
- 再生時間:9時間55分45秒
- 出版日:1980年5月23日
- 販売開始日:2016年8月26日
6位:『最後の医者は桜を見上げて君を想う』余命半年の患者を巡る2人の医者の死生観に感動

聴き放題プラン対象作品
余命宣告された患者と2人の医者が、患者の亡くなる日までをどのように過ごすのかを描いた作品です。死を受け入れて治療をせずに残りの人生を謳歌することを勧める医者と、奇跡を起こして患者を救おうとする医者。「生」と「死」の二局面を持った医者が織りなすストーリーが見どころです。
どのような最期を患者に迎えさせるのか、あるいはどのように患者を救うのか。2人の医者が互いに認め合う様子には感動させられます。重たい内容ですが、命について考えさせれるシーンがユーザーに支持されているのではないかと思います。
あなたの余命は半年です──。ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。
対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは? 究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか? それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生!
- 著者:二宮敦人
- 出版社:TOブックス
- ナレーター:伊東健人、神尾晋一郎、白石稔、森谷遥、風間万裕子など
- 再生時間:12時間31分16秒
- 出版日:2016年11月1日
- 販売開始日:2022年12月11日
7位:『ライオンのおやつ』聴くと心が温かくなる、命の尊さに気づける作品

主人公は余命を宣告され、ホスピスに入る患者。ホスピスの患者同士との掛け合いや、残った時間をどう生きていくかという様子に感動させられます。
生と死、命の尊さに気付ける作品です。命を題材にしているが、聴き終わったあとに心が温かくなるような余韻が残ります。朗読を担当する桑島法子さんの声が優しいのも、この作品の特徴です。
主人公と一緒に、人生と向き合ってみてはいかがでしょうか。
人生の最後に食べたいおやつは何ですか──。若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。──食べて、生きて、この世から旅立つ。すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。
- 著者:小川糸
- 出版社:ポプラ社
- ナレーター:桑島法子、伊倉一恵、清水健佑、高塚正也、田中沙耶など
- 再生時間:8時間3分11秒
- 出版日:2019年10月9日
- 販売開始日:2021年8月25日
8位:『お探し物は図書室まで』全5章の連作短編集、章ごとに異なるナレーターにも注目

全5章から成る連作短編集。悩みを抱え人生に行き詰まった人が図書館へ行き、司書が選んだ本によって悩みを解決するストーリーです。婦人服の販売員や家具メーカーの会社員など、章によって異なる登場人物たちが悩みを解決して前に進む様子に、ほっこりさせられます。
章ごとに別の声優がナレーターを担当しているのが本作品の特徴。登場人物の感情や葛藤もすっと頭に入ってきやすいです。
お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか? 人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。
- 著者:青山美智子
- 出版社:ポプラ社
- ナレーター:くじら、芹澤優、川﨑万智、佐々千春、野口花緒など
- 再生時間:8時間44分14秒
- 出版日:2020年11月11日
- 販売開始日:2022年12月27日
9位:『推し、燃ゆ』"推し"が不祥事で炎上、ファンの喪失感を描いた芥川賞受賞作品

聴き放題プラン対象作品
2021年に第164回芥川賞を受賞し、audiobook.jpユーザーが選ぶ「オーディオブック大賞2022」の文芸部門では準大賞を獲得した作品です。主人公の"推し"が不祥事により炎上するところからストーリーが始まります。推しが生活の一部だったにもかかわらず、炎上してしまったことによる主人公の喪失感を描いています。
非常に現代的なテーマで、現実でも似た体験をした人は多いのではないでしょうか。推しを生きがいにしている人や生活の糧にしている人が聴くと、まるで主人公の境遇が自分のことのように聴けるはずです。
audiobook.jpユーザーからは、ナレーターを担当した三澤紗千香さんの朗読
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」。逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。
デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。21歳、圧巻の第二作。
- 著者:宇佐見りん
- 出版社:河出書房新社
- ナレーター:三澤紗千香
- 再生時間:3時間13分01秒
- 出版日:2020年9月10日
- 販売開始日:2022年2月8日
10位:『正欲』"多様性"の時代にこそ聴きたい、audiobook.jpユーザーも注目の作品

聴き放題プラン対象作品
稲垣吾郎さんと新垣結衣さんの共演で映画化され、2023年11月10日に劇場で公開されたばかりの作品です。2023年10月以降、再生数が伸びており、ユーザーから高い注目を集めています。
登場人物たちが人には言えない悩みや葛藤を抱えながら生きていくというストーリー。聴く人によっては共感できないと思える展開もありますが、それでも「こういう人もいるんだ」という気付きを得られます。多様性を重んじるこの時代にマッチした作品だと感じます。
息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づいた女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、ひどく不都合なものだった──。
「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」。これは共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か?
- 著者:朝井リョウ
- 出版社:新潮社
- ナレーター:伊東健人、浦和希、菊地達弘、小市眞琴、洲崎綾など
- 再生時間:14時間2分5秒
- 出版日:2021年3月26日
- 販売開始日:2023年4月25日