iPhoneユーザーならぜひ活用したいのが、「Apple Pay(アップルペイ)」です。Apple PayではクレジットカードやSuicaを最大12枚登録して、お店で買い物をしたり、鉄道やバスに乗ったりできるようになります。普段からSuicaやiD、QUICPayといった電子マネーに慣れ親しんでいるなら、Apple Payを使い始める難易度はそれほど高くありません。
しかし、クレジットカードをiPhoneに登録する不安から、導入に二の足を踏んでいるiPhoneユーザーも少なくないでしょう。また、そもそもApple Payについて分かりにくい部分が多いという声もあります。
そこで本記事では、Apple Payの基本知識から始め方、使い方までをまとめて解説します。
Apple Pay(アップルペイ)とは?
みなさんが持ち歩いている財布には、クレジットカードやプリペイドカードが何枚も入っていると思います。Apple Payは、そうしたクレジットカードやプリペイドカードをiPhoneで持ち運び、使えるようにする電子ウォレット機能です。
Apple Payは“財布”
まずは、Apple Payで電子マネーを利用できるという点を押さえておきましょう。一口に電子マネーと言っても、いろいろな種類があります。
Apple Payでは、
- Suica(スイカ)
- iD(アイディ)
- QUICPay(クイックペイ)
の3つの電子マネーに対応しています。いずれも日本国内ではメジャーな決済手段です。Apple Payでは、これらの電子マネーをiPhoneというデバイス1つで使えるようになります。
iPhoneさえあれば、SuicaとiD、QUICPayで決済できる
Suicaカードや各種クレジッドカードなど物理的なカードを財布に入れておく必要がないため、財布を持たずに日常生活を送ることも不可能ではありません。iPhoneさえ持っていればお店でコーヒーを飲んだり、買い物をしたり、鉄道やバスに乗車したりできます。つまりApple Payが、普段持ち歩いている財布の代わりになるのです。
Apple Payは交通機関や店舗での電子マネー決済に使えるほかに、対応アプリやウェブサイト上でのオンライン決済にも使うことができます。タクシーを手配したり出前を注文したりと、生活に身近なサービスをより手軽に受けられるようになります。
Apple Payに入れて使えるのはどんなカード/電子マネー?
Apple Payは「Suica」「iD」と「QUICPay」の3つの電子マネーに対応していると最初に説明しましたが、利用するにはそれぞれカードの登録作業が必要になります。
Apple Payに登録できるカードは、
- Suicaカード
- クレジットカード
- プリペイドカード
の3種類です。どのカードを登録するかによって、利用できる電子マネーが異なるため、使いたい電子マネーに合わせてカードを用意する必要があります。
Suicaカードを取り込めばSuicaを使えるように(新規発行も可能)
Image:JR東日本
まずはSuicaカードです。SuicaカードをiPhoneで取り込むか、Suicaを新規発行すれば、Apple PayでSuicaが使えるようになります。Apple Payで鉄道やバスなどに乗車できるのは、このSuicaだけ。つまり交通機関を利用したいなら、Suicaの登録が必須です。
Suicaと同じ交通系ICカード(電子マネーサービス)では、「PASMO」や「ICOCA」「PiTaPa」といったものがありますが、Apple Payでは非対応です。もっともSuicaは、ほぼ全国をカバーする路線で相互利用できます。
クレジッドカードとプリペイドカードを登録すればiDかQUICPayに紐付けられる
Image:iD
Image:QUICPay
次に、クレジットカードとプリペイドカードです。登録するとiDまたはQUICPayのいずれかの電子マネーに自動で紐付けされます。どちらの電子マネーに紐付けされるかは、登録するカードによって決まります。
iDやQUICPayは、お店などでの買い物に使います(Suicaも買い物に使えます)。実際に使うときは、使いたいカード(電子マネー)を切り替えて、読み取り機にかざします。
また、クレジットカードとプリペイドカードは、店舗での決済だけでなく、Apple Payの対応アプリやウェブ上でのオンライン決済やSuicaのチャージにも使います。
プリペイド or ポストペイ
余談ですが、電子マネーは代金の支払い方法によって、プリペイドとポストペイの2つに分かれています。前もって現金やクレジットカードからチャージして使うのがプリペイド。対して、決済が完了したあとで代金を支払う(後払い)方式がポストペイです。
この点、Apple Payで使える電子マネーのうち、Suicaはプリペイド型電子マネーで、iDとQUICPayはポストペイ型電子マネーです。
ポストペイ型電子マネーの特徴は、ずばり残高を気にせずに使えるところ。Suicaと違って、iDやQUICPayは事前のチャージ不要で利用できます。残高を気にせずドンドン買い物をできるのが、ポストペイ型電子マネーのメリットです(ただし利用額は気にしましょう)。
プリペイド型電子マネーでは、「楽天Edy」や「nanaco」、「WAON」などが有名ですが、これらはApple Pay非対応です。もっとも、SuicaとiD、QUICPayが揃っていれば、ほとんどの店舗がいずれかに対応しているので、それほど困ることはないでしょう。
Apple Payは2020年7月現在、デビットカードに対応していません。一部例外はあるものの、デビットカードはWalletアプリに登録できません。また店舗などで使えるポイントカードは、Ponta(ポンタ)カードとdカードに対応しています。
安全? Apple Payのセキュリティとプライバシー
クレジットカードを登録して使うことに対して、慎重に考えている人も多いでしょう。
「クレジットカードを不正に利用される危険はないのか」「カードの情報や個人情報、取引のデータなどが漏れることはないのか」「Apple Payは安全なのか」といった点は、誰しも気になるところです。
こうしたセキュリティやプライバシーの問題について、アップルはもちろん十分な対策をしています。
まず原則として、決済時にFace IDまたはTouch IDによる認証を求められるので、自分以外の人が勝手に決済するおそれはほとんどありません(例外はエクスプレスカードに設定されたSuicaで、利用時にiPhoneのロック解除が不要)。
また、仮にiPhoneを紛失しても、ウェブサイトからiCloudにログインしてiPhoneを紛失モードにすることでApple Payの使用を一時的に停止できます。遠隔操作でiPhoneの情報をすべて消去して、Apple Payの機能を完全に停止させることもできます。
Apple Payにはクレジットカードを登録しているので、「カードの情報や取引の記録などが漏れるのではないか」「少なくともアップルには筒抜けではないか」といった心配もあります。
この点、Apple Payではセキュアエレメントチップの中に、クレジットカード情報から生成したセキュリティ情報(デバイスアカウント番号)を保管しています。セキュリティ情報はクレジットカード番号そのものではなく、アップルにも復号化できません。漏洩しても第三者が不正に利用することは難しい仕組みです。また決済処理そのものは、ユーザーとお店(加盟店)、銀行やカードの発行会社の三者間で完結しており、アップルにはクレジットカードの番号や取引の履歴などは一切伝わりません。
このようにクレジットカード情報を登録するといっても、無防備にさらけ出されているということはなく、幾重にもしっかりとした保護対策が取られています。
Apple Payが使える端末は?
Apple Payが持つ4つの機能(交通機関・店舗での非接触型決済・アプリ内決済・ウェブ上の決済)をすべて利用するには、iPhone 7以降のiPhoneや、Apple Watch Series 2以降のApple Watchが必要です。
またiPhone 7以前のiPhoneやiPadでも、Touch IDを搭載している機種なら、アプリ内での決済やウェブ上でのオンライン決済は利用できます。
交通機関(Suica) | 店舗(iD/QUICPay/Suica) | アプリ | ウェブ | |
---|---|---|---|---|
iPhone 7/7 Plus以降 | ○ | ○ | ○ | ○ |
Apple Watch Series 2以降 * | ○ | ○ | ○ | × |
Apple Watch Series 1/Apple Watch(第1世代)* | × | × | ○ | × |
iPhone 6s/6s Plus/6/6 Plus/SE(第1世代) iPad Pro/iPad(第5世代)/iPad Air 2/iPad mini 4/mini 3 |
× | × | ○ | ○ |
2012年以降に発売されたMac | × | × | × | ○ |
Apple Payの始め方
Apple Payをはじめる第一歩は、カードの登録作業です。iPhone 8やiPhone 8 Plus以降、Apple Watch Series 3以降では12枚までカードを登録できます。それ以前のモデルは8枚です。
ここでは、クレジットカード/プリペイドカードの登録方法と、Suicaの登録方法について説明します。
クレジットカードを登録する方法
実際にカードを登録してみましょう。クレジットカードあるいはプリペイドカードを手元に用意して、「Wallet」アプリを起動します。
アップルのウェブサイトでは、対応しているクレジットカード/プリペイドカードの一覧がまとめられています。
使えるかどうか確かめるには、実際に取り込んでみるというのが手早く確実です。追加できるクレジットカードは多種多彩。国際ブランドでいえば、JCB、MasterCard、American Express(AMEX)およびVISAが、Apple Payに対応しています。
1「Wallet」アプリで[カードを追加]をタップする
「Wallet」アプリをタップして起動し、[追加]をタップします(2枚の追加からは[+]をタップ)。
2[続ける]をタップする
Apple Payに関する簡単な説明が表示されるので確認し、[続ける]をタップします。
3カードの種類を選ぶ
Apple Payに追加するカードの種類を選択します。ここでは[クレジット/プリペイドカード]をタップします。
ここで[Suica]を選べば、SuicaカードをApple Payに転送できます。
4 枠内にカードを収める
「カードを追加」画面に移動するので、iPhoneのカメラをカードにかざし、枠内にカードが入るようにします。うまく読み取れない時は、[カード情報を手動で入力]をタップします。
5カードの情報を確認する
カメラが読み取ったカードの情報を確認して[次へ]をタップします。カードによっては数字が読み取りにくいものもあるので、必ずカード情報を確認し、必要なら修正します。
6有効期限とセキュリティコードを入力する
カードに記載されている有効期限とセキュリティコードを入力し、次へをタップします。
7利用規約に同意する
利用規約が表示されるので内容を確認し、[同意する]をタップします。
8カードが追加される
カードが追加され、そのカードで利用できるサービスが表示されます。ここで「iD」と「QUICPay」のどちらのポストペイ型電子マネーを利用できるのかが表示されます。店頭で電子マネーを利用する際はサービス名を店員に伝えることになります。
[次へ]をタップします。
9カード認証の方法を選ぶ
この画面が表示されたらカードの認証方法を選びます。画面ではSMSと電話の2種類が表示されていますが、認証方法はカードによって異なります。認証方法を選んだら[次へ]をタップします。
10認証コードを入力する
SMSを選んだ場合、認証コードが送られてきます。コードを入力して、[次へ]をタップします。電話の場合はガイダンスやオペレーターの指示に従って認証をおこないます。
11Apple Watchに追加する
Apple Watchを利用していると、「Apple Watchに追加」という画面が表示されます。カードはいつでも追加できるので、ここでは[完了]をタップして進みます。
12カード追加完了
アクティベートが完了し、追加したカードがApple Payで利用できるようになりました。最後に[完了]をタップします。
メインのクレジットカードを設定する方法
複数のクレジットカード/プリペイドカードを登録した場合、そのうちの1枚を「メインカード」に設定できます。
メインカードは、店頭ですばやく決済を済ますための機能です。スリープ状態からApple Payを起動するとき、メインカードに選んだカードが最初に表示されるので楽に決済できるようになります。お店で買い物をするときに一番よく使うクレジットカードを設定しておけばよいでしょう。
クレジットカードとSuicaのどれでもメインカードに設定可能
メインカードの設定は「設定」アプリでおこないます。[WalletとApple Pay]→[メインカード]をタップして、任意のカードをタップします。
Suicaカードを登録する方法
SuicaカードをApple Payに登録(追加)してみましょう。
まず、プラスチックのSuicaカードを用意して、机の上に置いておきます。登録の仕方は、クレジットカードのときと同じ要領です。実際のカードをiPhoneのカメラで読み取って、Suicaの情報を取り込みます。
詳しい手順は下記記事で解説しているので、ここでは割愛します。
また、Suicaカードの現物を持っていない場合でも、Suicaを新規発行できます(Suicaアプリが必要)。新規発行の手順は下記記事を参照してください。
なお、初めてApple PayにSuicaを追加するとき頭の片隅に入れておいてもらいたいのが、iPhoneを機種変更する場合の注意点です。事前に旧機種に追加してあるSuicaを削除しておく必要があります。
Suicaのエクスプレスカード設定について
Walletに登録した最初のSuicaカードは、「エクスプレスカード」として自動設定されます。エクスプレスカードというのは、Face IDやTouch IDの認証なしで決済できるように設定されるカードのことです。Walletアプリには複数のSuicaカードを登録できますが、エクスプレスカードに設定できるのは1枚のカードだけです。
Image:Apple
エクスプレスカードには毎日の通勤・通学に使うSuicaを設定しておきます。スリープ中でもSuicaで決済できるので、改札をスムーズに通過できます。エクスプレスカードの設定は、「設定」アプリ→[WalletとApple Pay]→[エクスプレスカード]で、いつでも変更できます。
Apple Payの使い方(支払い方法)
Apple Payを使って買い物をしたり、鉄道やバスに乗車したりしてみましょう。
Apple Watchの使い方の解説は省略します。
お店や改札などで使う(非接触型決済)
店頭で買い物をするときは、iD、QUICPay、Suicaのいずれかを使って決済します。精算時に「iD(アイディ)でお願いします」「QUICPay(クイックペイ)でお願いします」というように、使いたい電子マネーを口頭で伝えましょう。前述したように、この非接触型決済を利用できるのは、iPhone 7以降のiPhoneかApple Watch Series 2以降のApple Watchのみです。
Image:Apple
どの電子マネーが使えるかは、店頭のポスターやレジのそばなどにあるシンボルマークを見て判断します。
Face IDを搭載したiPhoneを使うときは、サイドボタンをダブルクリックします。Touch IDを搭載したiPhoneなら、ホームボタンをダブルクリックします。Walletアプリが起動し、メインカードに設定したカードが表示されます(Touch IDを搭載したiPhoneは、ホームボタンに指を触れたままカードリーダーにかざしても構いません)。
Face IDやTouch IDの認証を済ませると、画面が「リーダーにかざして支払う」に変わるので、そのままカードリーダーにiPhoneをかざします。決済が済むと「完了」と表示されます。
エクスプレスカードに設定されているSuicaで決済するのであれば、iPhone上部をカードリーダーにかざすだけ。サイドボタンやホームボタンに触れる必要はありません。
「メインカードがQUICPayなのに、この店ではiDしか使えない……」こんなときは、カードを切り替えます。サイドボタン(またはホームボタン)をダブルクリックしてWalletアプリを起動したあと、画面の下端に表示されているカードをタップすると、別のカードに切り替えることができます。
なおQUICPayの場合、一度に支払える金額は2万円までです。ただしQUICPay+(クイックペイプラス)に対応しているお店では、この制限はなくなります。またiDの場合、限度額は店舗によって異なります。
鉄道の改札を通過するときやバスに乗車するときは、Suicaを使います。
買い物をするときと同じで、改札や乗車口にある読み取り機にiPhoneをかざします。これでエクスプレスカードに設定されているSuicaで決済が完了します。プラスチックのSuicaカードと変わらない使い勝手です。複数のSuicaがある場合でカードを切り替える手順は、クレジットカードのときの操作と同じです。
なおSuicaはプリペイド式の電子マネーなので、あらかじめチャージしておく必要があります。残高が足りないときはチャージをします。チャージには、現金やApple Payに登録したクレジットカードが使用できます。詳細は下記記事で解説しています。
残念ながらWalletアプリにはオートチャージの設定はありません。オートチャージを使いたいときは、別途「Suica」アプリをインストールして、オートチャージに対応している「ビューカード」を登録する必要があります。
アプリやウェブで使う(オンライン決済)
クレジットカードが登録してあれば、対応しているアプリ内やSafariのウェブサイトで買い物をすることもできます。
オンライン決済というと、アプリやECサイトごとに手順が異なるので、戸惑うことが多いのですが、Apple Payなら簡単です。対応しているアプリやウェブサイトの商品ページでApple Payのボタンをタップするだけで決済の手続きができます。
Apple Payを利用したオンライン決済は、Touch IDを搭載したiPhone 6s/6/SE(第1世代)やiPad Pro/iPad(第5世代)/iPad Air 2/iPad mini 4/mini 3でも使うことができます。利用したいサービスがあれば使ってみましょう。
アプリ内で使う
2020年7月時点では、Apple Payに対応しているアプリは「Suica」を含めて20個あります。
「Suica」以外のアプリを紹介すると、物販系では「giftee」「メルカリ」「BASE(ベイス)」「minne(ミンネ)」「Yahoo! ショッピング」など12個。サービス系では「Uber Eats」「TOHOシネマズ 公式アプリ」「出前館」「じゃらん」などの7個です。
2020年7月現在、対応アプリは20個となっている
どのサービスでも、支払うときに通常の決済方法とApple Payのどちらを使うか選ぶことができます。Apple Payを選ぶ場合は、Apple Payボタンをタップして、認証をおこなうという2ステップで決済が完了します。
決済をするときはApple Payボタンをタップして、Face IDやTouch IDで認証するだけでよい
Safariのウェブ上で使う
Apple Payに対応の上記のサービスは、アプリ内だけでなく、ウェブページでの決済もおこなえます。MacでApple Payを使うときはアプリがないため、ウェブページから利用します。
いくら便利なサービスでも、毎回クレジットカード情報を入力するような使い勝手では面倒です。Apple Payなら最初にクレジットカードを登録しておけば、あとはどのウェブサイトでも即決済できるため快適です。対応サービスが増えてくれればと期待も高まります。
ちなみに、ウェブサイトで決済するときはSafariブラウザが必要です。Chromeブラウザで同じページを表示しても、支払い方法にApple Payが表示されません。
SafariブラウザでApple Payが利用できる
Apple Payからカード情報を削除する
Walletアプリに登録したクレジットカードは、いつでも削除できます。カードの有効期限が切れたり、解約したりした場合は、カードを削除して整理しましょう。
クレジットカードはWalletアプリで削除します。クレジットカードを削除すると、すべての情報が削除されます。再追加したいときは、登録操作を最初からやり直す必要があります。
まず、削除したいカードを表示して、右上の[…]をタップ。カード情報画面に移動するので、画面下部にある[このカードを削除]→[削除]とタップします。これでWalletアプリからカードが削除されます。
Suicaも同様の手順で削除できます。
Suicaはいつでも再追加できる
Suicaの場合は、Walletから削除してもJR東日本のサーバーにデータが残るので、いつでも再追加できます(利用履歴は削除されます)。残高などのデータは削除時のデータが引き継がれて復活します。
検証端末:iPhone X(iOS 13.6)