SFホラー映画の代名詞的存在である『エイリアン』。その1作目が公開されたのは1979年。長きに渡って愛されるシリーズにまた一つ新たな秀作が誕生、現在ディズニープラスで独占配信されています。
フェデ・アルバレス監督の『エイリアン:ロムルス』は、シリーズの原点に立ち返る1本となり、同時にこれからも同シリーズが作られ続けることに意味があることを示した作品と言えます。これまでのシリーズの要素を網羅し、作品世界を大きく広げる内容となっているのです。
本作の時間軸は、『エイリアン』と『エイリアン2』の間に位置します。それらの作品とのつながりはありますが、本作だけでも楽しめる構造になっています。しかし、それだけにとどまらず同シリーズの前日譚となる『プロメテウス』の要素も持ち合わせ、同時に、これまでのシリーズにはなかった人間とAIの共存にもスポットを当て、未来志向の作りになっているのが特徴です。
希望の宇宙船はエイリアンの巣窟だった
ウェイランド・ユタニ社が所有する鉱山は、劣悪な労働環境でした。そこで働くレインは、旧型アンドロイドのアンディとともに鉱山での厳しい生活に耐えています。第三惑星への移住を希望していますが、ユタニ社の不当な契約で拘束されて移住することができません。
そうしたなかで、レインの仲間たちが漂流してきた宇宙船を盗み出し、別の星へと逃亡する計画を立てていました。今の生活を変える最後のチャンスかもしれないと考えたレインは、この計画に乗ることにします。
一行は無事に宇宙船の中への侵入に成功。しかし、その宇宙船は不気味な生物が冷凍保存されていたのです。次々と恐ろしい事実に直面していきますが、外は宇宙ですから逃げ場はありません。レインはアンドロイドのアンディとともにその過酷な環境の中、生き延びるためにあらゆる方策を実行します。
宇宙船という限定空間で未知の生物に追われる恐怖をはじめ、シリーズ1作目を彷彿とさせる要素が満載の本作。逃げ場のない空間で生き残るのは誰なのかという物語をスリリングに描いています。
監督のフェデ・アルバレスは『ドント・ブリーズ』という低予算ホラー映画で名を馳せた人物。『ドント・ブリーズ』は、ある家に忍び込んだ若者が、盲目で恐ろしく耳のいい老人に追いかけ回される様を描くホラー映画でしたが、本作には同作で見せたような限定空間で追い詰められていく恐ろしさがふんだんに描かれているのが特徴です。
これはアルバレス監督の得意分野でもあり、同時に『エイリアン』1作目の展開とも共通します。逃げ場のない閉鎖空間というだけでも怖いのですが、そこに未知の生物が居合わせるということでさらに恐怖は倍増。次々と襲い掛かる生物の群れは、心臓に弱い方には要注意なほどの恐ろしさを持っています。
人とAIの共存もテーマに
本作は恐怖を描くのみに留まらず、SF的な問いかけも含んだ作品となっています。生成AIの発展は目覚ましく、これから人類はAIやロボットと共存していくことになるでしょう。本作はそんな未来を先取りしたような内容になっています。
主人公・レインの相棒は人型アンドロイドのアンディです。レインは、アンディのことを家族同然の存在として認識しており(レインはアンディを弟と呼んでいる)、自分が生き延びるために見捨てようという発想はありません。また、超合理的に物事を判断する別のアンドロイドも登場します。「AIに心はあるのか、ないのか」「人とAIは共存できるのか」というテーマも潜ませているのです。
古典となった名作シリーズに新たな息吹を与えたという点で、本作は高い評価に値する作品です。シリーズの面白さを網羅的に詰め込んだ上で、最新の娯楽映画として提示してみせた稀有な作品と言えるでしょう。『エイリアン』シリーズを見始めるのであれば、まずは本作から始めてもいいかもしれません、それだけの出来栄えの作品です。
『エイリアン:ロムルス』を見る(ディズニープラスで配信中)
驚異的な成功を収めた「エイリアン」シリーズの原点回帰。荒廃した宇宙ステーションを探索する若者たちが恐怖に襲われるSFホラー・スリラー。監督と脚本はホラー映画の巨匠フェデ・アルバレス、製作はシリーズ1作目の監督リドリー・スコットが手掛ける。
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