ドコモ新料金プランの隠された本質とは──通話料定額化の目的は値下げにあらず

2014-04-12 22:05
記事タイトルとURLをコピーする

ドコモ

NTTドコモは4月10日、新しい料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表した。

新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」 - NTTドコモ

しかし、「よく分からない」という混乱や、「音声通話はしないからカケホーダイなんて要らない」という誤解が散見される。

そこで、新料金プランの具体例を通して、その基本構造(カケホーダイ&パケあえる)と通話料定額化の目的(音声通話料というカテゴリの実質的な廃止)、隠された本質(料金プランの簡素化)について考察してみようと思う。

「国内音声通話の完全定額化」と「パケット通信量のシェアが可能」に

さっそく、新料金プランの”複雑さ”に対して戸惑いの声が聞こえてきている。(1)国内音声通話の完全定額化と(2)パケット通信量をシェアできるようになることにより、料金プランが従来のものから大幅に変更されることが要因だろう。加えて、割引が組み込まれることも混乱に拍車をかけているようだ。

ドコモ 料金プラン

新料金プラン、友だちに説明できる?

自分の利用料金がどうなるかは、ドコモが提供しているシミュレータを使えばすぐに計算できる。家族全体で算出するのは家族全員の利用実態を把握する必要があるため面倒だが、単身者なら簡単だろう。

かんたんシミュレーション - ドコモ

しかし、「誰が得をし、誰が損をするのか」という話題が家族や友だちなどの間で持ち上がった時に、「シミュレータを使えばいいよ」と話をぶった斬るのも味気ない。

そこで、新料金プランをどう他人に説明すればいいのかよく分からない人、今回の料金プランの大幅変更が意味するところを理解したい人のために、ここでは新料金プランの基本構造の説明を試みようと思う。

ざっくり考えてみる

なんとなく複雑そうな話ほど、ざっくりと考えてみることが理解を助けることになる。最初から、例外事項を含めて理解しようとすると「ワケガワカラナイヨ」ということになりかねない。したがって、「ただし~の場合は」という説明は、できるだけ省略する。

省略する例を挙げると、割引サービスの適用だ。旧プランと新プランで公正な比較が難しいため、いずれでも割引サービスはないものとして考える。その他、2年契約でなければどうなるか、法人向けプランだとどうなるか、パケット定額サービスである「パケットパック」を契約しない場合はどうなのか、月々サポートによる減額はいくらか、などといった条件は、とりあえずここでは考えない。

新料金プランに関する完全初心者は対象外

なお、この記事は、ドコモ新料金プランに関する予備知識が全くない読者は対象としていない。少なくとも、一度は新料金プランがどのようなものであるのか見聞きしたことを前提としている。解説が煩雑になりすぎることを防ぐためだ。

完全初心者の読者は、まずドコモ公式ページで簡単に新料金プランを眺めてきてから、この記事を読み進めてほしい。

まずは、具体例からイメージ

父母+兄妹の4人家族を想定

世の中の家族構成は多種多様だ。

ここでは、全員がスマホを使っているドコモユーザである4人家族(父+母+兄+妹)を具体例にして、どのように料金が変わるのかを考えてみよう。前述のとおり、年齢や利用年数による割引は考慮しない。

ドコモファミリー

この家族は、家族内の連絡はLINEで済ませることが多く家族内であまり通話しない。友だちなどとは人並みに電話する。両親はあまりネットをやらないが、子ども2人はそこそこネットを楽しんでいて、妹は7GBのパケット通信料制限を超えてしまう月も多い。

最近の家族1人あたり音声通話料は1,320円/月だったと仮定する。ドコモの2014年3月期の音声ARPUが1,320円と見込まれているためだ(ARPU:1契約あたり月間平均収入)。

旧Xi料金プランでは、こうなった

旧料金プラン構成の典型パターン

旧料金プランでは、「基本プラン(タイプXiにねん)+ISP契約(spモード)+通話料+パケット定額サービス(Xiパケ・ホーダイ ライト/フラット)」というプラン構成が平均的だった。

ドコモ 料金プラン

ここでは、家族全員が基本プラン「タイプXiにねん」、ISP契約「spモード」で利用。パケット定額サービスは、両親が「Xiパケ・ホーダイ ライト」(3GB制限)、子ども2人が「Xiパケ・ホーダイ フラット」(7GB制限)のプラン構成だとする。国内ドコモケータイへの24時間定額通話サービス「Xiトーク24」には加入していない。

料金はどうなった?

家族4人について料金を算出してみると、次のようになる。4人合計で30,252円となった。1人ずつの料金は図表には示さなかったが、父母は1人あたり7,063円、兄妹は1人あたり8,063円となっている。

ドコモ 料金プラン

新「カケホーダイ&パケあえる」料金プランでは、こうなる

新料金プラン構成の典型パターン

新料金プランでは、「基本プラン(カケホーダイプラン)+ISP契約(spモード)+パケット定額サービス(パケットパック)」というプラン構成が基本になる。旧料金プランと比べると、国内音声通話料が完全定額になり基本プランである「カケホーダイプラン」に組み込まれるため、よりシンプルな構成となった。

ドコモ 料金プラン

ここでは、家族全員が基本プラン「カケホーダイプラン」、ISP契約「spモード」で利用。パケット定額サービスは、父親がパケットパックの家族シェアタイプ「シェアパック20」(20GB制限)、母と子ども2人が「シェアオプション」で父親のパケット通信量を共有するプラン構成だとする。

料金はどうなる?

家族4人について料金を算出してみると、次のようになる。4人合計で29,500円となった。1人ずつの料金は図表には示さなかったが、父は19,000円、母兄妹は1人あたり3,500円となっている。

旧料金プランの場合と比べると、若干安くなっていることが分かるだろう。

ドコモ 料金プラン

お父さん・お母さんは実質的に負担増へ

世の中のドコモユーザのお父さん・お母さんは、家族のケータイ代を払っているのだろうか?

新料金プランへの移行によって、これまで子ども分のケータイ代は子ども自身に支払わせていたお父さん・お母さんは、子どものケータイ代も一旦負担しなければならなくなる。後から回収するのか、そのままウヤムヤになってしまうのかは家庭次第だが、全体としてみればお父さん・お母さんたちの負担は増えることになるだろう。

ケース・バイ・ケースだが、筆者としては「頑張ってください」としか言いようがない。

逆に言えば、子どもたちにとっては、ドコモユーザになる強い動機になる。「家族みんなで考えると得になるんだよ。お父さん、ずっとドコモだから割引額大きいし!」などとせがんでくるかわいい娘を前にして、あっさりと陥落して"搾取"されることになるお父さんは、一体どれくらい発生してしまうのだろうか。

新料金プランの基本構造

ここまでは、新料金プランについての基本的な理解を前提に、具体例を検討してみた。なんとなく理解を深めてもらえただろうか。

では次に、新料金プランの基本構造を筆者なりに解きほぐしてみたい。それは、「家族ユーザの優遇と非家族ユーザの冷遇」という競争戦略と、「パケあえる」「カケホーダイプラン」という2つの柱とから成り立っている。

特に、「パケあえる」と「カケホーダイプラン」という新料金プランの特徴には、その名称だけからは読み取りづらい本当の意味が隠されていることが読み取れるのだ。

1. 家族ユーザの優遇と非家族ユーザの冷遇

先ほどの4人家族の事例は、ドコモが提示している代表的なケースを若干アレンジしたもの。言い換えると、ドコモにとって説明上都合が良い事例だということだ。非家族ユーザなどの場合、現状と同じ形で新料金プランに移行すると、値上げになるケースも出てくる。

ざっくり言うと、家族・音声通話メイン利用者を優遇し、単身者でデータ通信メインの利用者を冷遇するのが、今回の新料金プランだ。

家族ユーザ→優遇

家族もドコモユーザである一般的なユーザは、パケット通信量のシェアと「ずっとドコモ割」「U25応援割」で割安になる可能性が高い。

  • パケット通信量のシェア:パケット定額で余っていた無駄なパケット通信量にかかる料金を無駄にせずに済む
  • 「ずっとドコモ割」:代表回線契約者の利用年数に応じて、代表回線契約のパケットパック料金から一定額を割り引く
  • 「U25応援割」:25歳以下の回線契約の基本プラン(カケホーダイプラン等)が月額500円割引+パケットパックに毎月1GBプラス

音声通話メイン利用者→優遇

国内音声通話が完全定額化したため、当然だろう。

非家族ユーザでデータ通信メインの利用者→冷遇

今回の新料金プランを「値上げだ」と感じるユーザが多そうなのが、非家族ユーザでデータ通信メインの利用者であるユーザ層だ。

家族がいなかったり、いても自分だけがドコモユーザである非家族ユーザは、家族でパケット通信量をシェアすることができない。そして、非家族ユーザ向けのパケット定額プランである「データSパック」は上限2GBで3,500円、「データMパック」は上限5GBで5,000円となっている。

たとえば、これまでの「Xiパケ・ホーダイ ライト」プラン(4,700円、上限3GB)利用者で3GB使いきっていたユーザが、新プラン「データSパック」(上限2GB)を契約し、2GBを超過してもスピード制限が課されない「スピードモード」に設定した場合、1GB超過した時点でパケット通信料が4,500円となる。これは「Xiパケ・ホーダイ ライト」の4,700円を下回るものの、基本プラン「カケホーダイプラン」が旧「タイプXiにねん」より2,000円近く値上がりしているため、従来よりも高い合計料金を支払う必要が出てくる。旧「Xiパケ・ホーダイ フラット」が「データMパック」に移行した場合、その傾向はさらに顕著になる。

他方で近年、音声通話をあまり利用せず、LINEやiPhoneのFacetimeなどのVoIP通話を利用するユーザが増えている。となれば、音声通話が完全定額になったとしても、そもそも利用しないサービスについても料金を強制的に徴収されるように感じるユーザが多くなることが予想される。

その他のケース

「誰が得をするのか、損をするのか」について総ざらいするのは、本記事では割愛する。以下の記事がさまざまなケースを検討しているので参考にしてほしい。

ドコモの競争戦略

なぜ、ドコモが家族ユーザを優遇するのか。おそらく、世代的に家計を支える中高年層に比較的ドコモユーザが多いためではないかと思われる。

「ドコモユーザのお父さんを中心に、他社に流れてしまった家族をドコモに引き戻す」

このような狙いが透けて見えるのだ。

KDDIとソフトバンクの2社が、どのように対抗してくるか興味深いところだ。

2. パケあえる

「パケあえる」とは、要はデータシェアプランを導入するということだ。これは、家族のデバイス間や2台持ちしている非家族ユーザのデバイス間で、パケット通信量を共有する。

すでにKDDIが、今年6月から2台持ちユーザ向けのデータシェアサービスを開始することを発表しているが、今回のドコモの施策はそれをさらに推し進めるものだ。

シェアする家族、デバイスが増えるほど割安感が出てくるのが「パケあえる」の特徴だろう。

旧料金プランの問題点を「パケあえる」で一部解決

最初に挙げた4人家族の旧料金プランのケースでは、全員が無駄なく合計20GBのパケット通信量を使いきっているわけではない。1GBも使わないような利用実態であるにもかかわらず、両親は3GBのライトプラン(月額4,700円)を契約せざるをえないのが一般的だった。

そこで、新料金プランでは、「パケあえる」というキャッチコピーのとおり、余っている家族のパケット通信量を他の家族に分け与えることができる「シェアパック◯◯」というパケット定額サービスを用意することで、パケット通信料の実質的な値下げを可能とした。

ドコモ

2台持ちユーザはおトクに

先述のとおり、1台持ちの非家族ユーザは新料金プランで冷遇されているが、2台持ちの場合で両方のデバイスでドコモ回線を利用したい非家族ユーザは、家族向けの「シェアオプション」に相当する「2台目プラス」というオプションによって、デバイス間でパケットを共有することができる。

ドコモ 料金プラン

3. カケホーダイプラン

ここまで、「カケホーダイプラン」は国内音声通話を完全定額にするものだと、何度も書いてきた。

しかし、それは話を分かりやすくするためにドコモの表現にのっとったまでのこと。

筆者は、国内音声通話を完全定額にする「カケホーダイプラン」の投入の目的が、音声通話料というカテゴリの実質的な廃止にあると睨んでいる。大多数のユーザにとって、基本プランとして音声通話なしの「データプラン」を契約するのは、事実上困難だろう。そうだとすれば、音声通話料を完全定額にすることと音声通話料のカテゴリを実質廃止し基本プランに組み込むことの違いは表現上の違いに過ぎないと考えても、大筋ではおかしくないのではないか。

この観点から、記事冒頭で例に挙げた「音声通話はしないからカケホーダイなんて要らない」という意見は、一種の誤解だということが分かるだろう。「カケホーダイプラン」が実質的には音声通話の完全定額プランではなく単なる基本プランを意味するのだとすれば、音声通話利用の有無はどうでもいいということになる。「音声通話はしないから基本プランなんて要らない」という理屈は成り立たないからだ。

筆者が思うに、「カケホーダイプラン」という基本プラン名は、ドコモによる巧妙なマーケティング戦略が打ち上げた巨大な花火のようなものだ。その爆発音の陰では、音声通話というカテゴリがデータ通信のカテゴリに統合され、基本プランの本質が「デバイスごとの回線利用料」に変化していくことになるだろう。

ドコモ新料金プランの本質とは

以上のように、そもそも音声通話というカテゴリが実質的に消滅していくことが想定されるため、「カケホーダイ」によって音声通話が安くなるわけではないと考えている。また、「パケあえる」からと言って、必ずしもパケット通信量を節約できるわけでもない。

もちろん、ドコモが「値下げになる」とユーザを騙そうとしていると主張するつもりは毛頭ない。むしろ、ドコモは一般ユーザに分かりやすい漸進的なマーケティング戦略を採用しているのだと思う。

今回の新料金プランの本質は、料金プラン構成を簡素化し、基本プラン(デバイスごとの回線利用料)と共有可能なデータ通信料の2つにしてしまうことにあるのだと、筆者は考えている。その過程で、ユーザにウケが良い「音声通話の完全定額」を大々的に打ち上げたのだ。

次の3枚の図表を順番に見てもらえば、筆者の意図するところが分かるだろう。

新料金プラン

これは先ほど挙げた4人家族の事例で使用した図表と同じものだ。

ドコモ 料金プラン

新料金プランを変形

父親の契約しているパケットパック「シェアパック20」を、シェアオプションと純粋な共有パケット通信量部分に分解してみた。実態としては家族で共有するパケット通信量を父親もシェアオプションでシェアしていると見立てることが可能なためだ。

ドコモ 料金プラン

定額部分をまとめると……

最後に定額部分をまとめてみる。

「カケホーダイプラン」と「ISP契約」と「シェアオプション」を1つにまとめることができる(黄色で表示)。数式を変形しているような気分だ(実際、そうだが)。

ドコモ 料金プラン

まとめた3つの契約は、端末ごとに必要となるもの。つまり、黄色でまとめた部分は、端末ごとの回線契約分に相当することになる。

残った青色の部分は共有できるパケット(データ)通信契約部分に相当する。

こうしてみると、新料金プランが本質的には料金プランの簡素化であるということがはっきりしてくる。

実は、この最後の図表の料金プランは、アメリカなどで2年ほど前から導入されている料金体系と同様のものだ。

なぜ、ドコモはこのような大転換を図るのか。その点については、別記事「2つの狙い、なぜドコモは料金プランを変えるのか?」で解説している。ぜひ一読してほしい。