eSIM(イーシム)とは、スマホに内蔵された本体一体型のSIMのことで、物理型のSIMカードを挿さずにモバイル回線を利用できます。オンラインで手続きでき、1台のスマホで複数の回線を使い分けられるといった長所がある一方、eSIMに対応する端末が限られるなどの弱点も存在します。
本記事では、eSIMとは何か、そのメリット・デメリットをわかりやすく解説。そのうえで、キャリアでもいち早く対応した楽天モバイルにおけるeSIMの申し込み、iPhoneでの利用開始方法、回線の切り替えといった使い方を紹介します。
eSIM(イーシム)とは?
eSIM(embedded Subscriber Identity Module)とは、スマホに内蔵されている本体一体型のSIMを指します。通常のSIMは、小さいカードに契約者の情報や電話番号などが入っており、スマホに挿入することで電話やモバイル通信をおこなえるようになりますが、eSIMであればカードは必要ありません。
あらかじめスマホにSIMが内蔵されているため、オンラインで契約者情報や電話番号を書き込めば、すぐに使用できるようになります。
eSIMを利用する際は、事前にメリットとデメリットをしっかりと確認したうえで申し込むようにしましょう。
eSIMのメリット
eSIMを利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主に3つのメリットを挙げています。
オンラインで手続き可能、その日から使える
各事業者の申し込みページ 左:LINEMO(ソフトバンク)中:楽天モバイル右:IIJmio
eSIMはオンラインで手続きが完結できるため、スムーズに契約をおこなえます。
物理カード型のSIM(SIMカード)の場合、店舗まで行って申し込んだり自宅に郵送されるのを待ったりと、何かと時間がかかることがあります。しかし、eSIMなら手続きが完了すればその日から使えるので、急に必要になったときでも安心です。
楽天モバイルの場合は契約時に宅配便で送られてくる設定書を自宅で受け取る必要があるなどの例外もありますが、eSIMの一般的なメリットと考えてください。
1台で複数回線の使い分けが便利
デュアルSIM対応のスマホ1台に物理型のSIMカードとeSIMを両方設定すれば、電話番号やモバイル通信を使い分けることができます。
スマホを2台持ちをしなくても、仕事用とプライベート用など手軽に回線を使い分けられます。回線を使い分ける方法は後ほど解説します。
海外旅行時もスムーズ
海外旅行や海外出張の際にeSIMは役立ちます。海外でスマホを使うには、現地に対応したSIMカードを購入またはレンタルし、普段のSIMカードと入れ替える必要があります。
しかし、物理型のSIMカードを購入・レンタルして手元に用意するのは面倒なこともあるでしょう。SIMカードは非常に小さいので紛失してしまう恐れもあります。
そこで活躍するのがeSIMです。eSIMならオンラインで手続きするだけで利用できるようになり、紛失の心配もありません。
eSIMのデメリット・注意点
eSIMにはメリットだけでなく、デメリットや注意点もあります。事前に必ず確認したうえで、申し込むようにしましょう。
別端末で使うときは不便
物理型のSIMカードであれば、機種変更などで別端末で利用する際はSIMカードを挿し替えればすぐに使えるようになります。
一方のeSIMの場合、別端末で使うには手続きが必要です。オンラインで手続きできるとはいえ、SIMカードに比べれば移行の手間がかかるのが難点と言えるでしょう。
移行元の事業者によっては、eSIMの移行に手数料がかかる場合もあります。
eSIMに対応する端末が限られる
iPhone 6sなど古い機種は未対応
eSIMはすべてのスマホで利用できるわけではなく、対応機種のみで利用できます。手持ちのスマホがeSIM対応機種でなければ、利用できません(詳細は後述)。
たとえばiPhoneの場合、LINEMOやpovo、楽天モバイルにおける対応機種はiPhone XR以上に限られており、それよりも古い機種はeSIM未対応です。Androidスマホも、対応している機種は限定的です。
同じ機種でも事業者によって対応機種は異なる場合もあるので、eSIMを利用する際は、自分のスマホが対応機種がどうかを必ず事前に確認しましょう。
手持ちの端末で使うにはSIMロック解除が必要
たとえばiPhoneの場合、SIMロック解除済みだと「SIMロックなし
」などと表示されている
原則として、eSIMを利用するには端末のSIMロックが解除されている必要があります。手持ちの端末でeSIMを利用する場合は、SIMロックが解除されているかどうかを確認しましょう。
スマホのSIMロックが解除されているか確認する方法【Android・iPhone】
iPhoneをSIMロック解除(SIMフリー化)する方法、手続きのやり方と受付条件とは
すべての機種がSIMロック解除に対応しているわけではありませんが、eSIMに対応している機種ならSIMロック解除も可能なはずです。
なお、購入元によっては購入から101日が経過していないとSIMロック解除できなかったり、契約状況によっては事務手数料が発生したりする場合もあります。詳細は各キャリアの公式サイトを確認してください。
eSIMを提供しているキャリア・MVNO
eSIMを提供している主なキャリア・MVNOのプランは以下の通りです(2021年9月時点)。
月額基本料金 | 通話料金 | |
---|---|---|
LINEMO(ソフトバンク) |
|
22円/30秒 【通話オプション】
|
povo(au) | 20GB:2728円 | 22円/30秒 【通話オプション】
|
ahamo(ドコモ) | 20GB:2970円 | 22円/30秒 (5分以内の国内通話は無料) 【通話オプション】 かけ放題オプション:月額1100円 |
ソフトバンク | 各料金プランのページを参照 |
左記同様、各料金プランのページを参照 |
au | 各料金プランのページを参照 |
左記同様、各料金プランのページを参照 |
ドコモ | 各料金プランのページを参照 |
左記同様、各料金プランのページを参照 |
楽天モバイル |
|
|
ワイモバイル |
|
22円/30秒 【通話オプション】
|
UQモバイル |
|
22円/30秒 【通話オプション】
|
IIJmio |
|
基本通話料金:11円/30秒(みおふぉんアプリ利用時も同額) 【通話オプション】
|
ソフトバンクのLINEMO(ラインモ)、auの「povo」(ポヴォ)、ドコモの「ahamo」(アハモ)といった各キャリアが提供するオンライン専用プランでもeSIMに対応しています。もちろん、ソフトバンク・au・ドコモの大手キャリアが提供するメインのプランでもeSIMへの変更は可能です。
また、1年間料金無料キャンペーンなどで話題となった楽天モバイルもeSIMに対応しています。楽天回線エリア内であれば高速データ回線が無制限となり、月額利用料金も最大で3278円と格安SIMにも劣らない料金体系となっています。
MVNO(格安SIM)ではソフトバンクのサブブランドである「ワイモバイル」、auのサブブランドである「UQモバイル」、格安SIMで人気の「IIJmio」がeSIMを提供しています。
eSIMに対応するiPhone・Androidスマホ
たとえば、iPhone Xより古い機種はeSIMを利用できない
すべてのスマホでeSIMを利用できるわけではありません。eSIMを本体に内蔵している機種以外で契約しても利用できない場合があるため、十分に注意してください。
eSIMを利用可能なスマホは各キャリア・MVNOごとに一覧で記載されているため、契約前に必ずチェックしておきましょう。
LINEMO(ソフトバンク)
povo(au)
ahamo(ドコモ)
楽天モバイル
ソフトバンク
ドコモ
au
ワイモバイル
UQモバイル
IIJmio
たとえばドコモの場合、SIMロック解除に対応する機種はiPhone・Androidスマホ含めて多数ありますが、eSIMに対応しているのはiPhone XS以降のiPhoneのみで、Androidスマホは非対応です。また、auであればiPhone XS以降のiPhoneおよび販売元がauのPixel 5のみとなっています(2021年9月時点)。
このようにSIMロック解除には対応していてもeSIMには対応していないケースもあるので注意してください。
楽天モバイルでeSIMを契約して利用する方法
今回は、楽天モバイルのeSIMを申し込み、iPhoneで通信や電話を利用できるようにするまでの流れを解説します。他のサービスを契約した場合でも、基本的な流れは変わりません。
手順1:事前に準備すること
eSIMを契約する前に、支払い方法の確認およびもう1台の端末とメールアドレスの準備をおこなっておきましょう。
支払い方法を確認する
現時点で、eSIMを取り扱う事業者の支払い方法は限られています。契約前にしっかり確認しておきましょう。
たとえば、LINEMOやIIJmioはクレジットカード支払いのみ、povoや楽天モバイル、ワイモバイルはクレジットカードや口座振替のみです。
端末の用意
契約時には、eSIMを契約するスマホとは別に、もう1台端末を用意する必要があります。eSIMの設定は、スマホでQRコードを読み取っておこないます。そのため、QRコードを表示するための端末がないと設定できません。
Webブラウザを表示できれば、タブレットやパソコンでもかまわないので事前に用意してください。
別端末に表示した初期設定用のQRコードを、eSIMを使う端末で読み取る(楽天モバイル)
メールアドレスの作成
LINEMOやpovoなど、キャリアメールを利用できない事業者もあるので注意しましょう。それまで利用していた「@docomo.ne.jp」などのキャリアメールは使えなくなってしまいます。
これまでキャリアメールで会員登録していたサービス(サブスクなど)は、eSIM対応プランに移行すると利用できなくなる可能性があります。事前にGmailなどのメールアドレスを用意しておきましょう。
Gmailアカウントを新しく作成する方法──複数アカウントでの追加ログインも解説
なお、ソフトバンクのeSIMであればキャリアメールの利用は可能です。
手順2:契約申し込み
楽天モバイルのeSIM(Rakuten UN-LIMIT Ⅵ)を契約する手順を紹介します。今回はPCブラウザの画面で紹介していますが、スマホでも手順はほぼ同じです。
1eSIM契約ページでeSIMを選択
まずは、楽天モバイルのeSIM契約ページにアクセスし、[楽天モバイルのeSIMを申し込む]をクリックします。
画面に従い、プランの確認やオプション加入の有無を選択します。
2021年4月現在、申し込みできるのは「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」のプランのみです。
続いて、SIMのタイプを選択します。必ず「eSIM」を選んで[この内容で申し込む]をクリックしてください。
2楽天アカウントを入力、本人確認書類をアップロード
楽天市場や楽天トラベルなどでも使用する楽天会員のログイン画面が表示されるので、ユーザーIDとパスワードを入力して[ログイン]を押します。
なお、楽天会員の登録をしていない人は、[楽天会員に新規登録(無料)してサービスを利用する]からユーザーIDを作成しましょう。
ログインが完了すると、会員情報に登録されている氏名や住所などが表示されるので、間違いがないか確認してください。
さらに、本人確認書類を提出する必要があります。免許証などを撮影して画像をアップロードするか、eSIMの設定書を宅配便で受け取る際に配達員に提示するか選択できます。今回は免許証を撮影して登録しました。
3電話番号を選択
続けて、eSIMで使用する電話番号を選択します。現在使用している電話番号を引き継いで利用する場合は、「他社からの乗り換え(MNP)」にチェックを入れます。新しい番号を取得する場合は、「新規電話番号を取得」を選択しましょう。
なお、1000円追加すると電話番号の下4桁を選択することができます。今回はオプションなしで、新規の電話番号を取得しました。選んだら、[次へ]をクリックしてください。
4受け取りや支払いの方法を確認して申し込む
受け取り方法や支払い(クレジットカード)情報を確認し、申し込み内容に間違いないかチェックしたら[申し込む]を押してください。
最後に、重要事項説明や利用規約を確認してチェックを入れ、[同意して申し込む]をクリックすれば申し込みが完了します。
なお、位置情報と通信履歴の提供(最後の同意項目)については、同意しなくても申し込みは可能です。
手順3:eSIMの初期設定(回線の開通手続き)
後日、郵送されてきたQRコード記載の手順書に従って、利用開始までの設定をおこないます。
1設定手順書のQRコードを読み取る
設定手順書に印字されているQRコードを読み取ってください。前述の通り、eSIMを設定するスマホではなく、別の端末で読み取りましょう。
QRコードを読み取ると楽天会員のログイン画面が表示されるので、ログインします。
ログインすると「本人確認が完了しました」と表示されるので、[申込履歴を開く]→[開通手続きをする]と進んでください。
左:初期設定用のQRコードが表示される右:eSIMを設定する端末でQRコードを読み込んだ画面(iPhone)
QRコードが画面上に表示されるので、eSIMを設定するスマホで読み取ります。
読み取ると「モバイル通信プランを追加」という画面が表示されるので、[モバイル通信プランを追加]をタップして進んでください。
APN構成用プロファイルの事前削除
ワイモバイルやUQモバイル、IIJmio、mineoなどでiPhoneを使っていた場合、以降の通信プラン追加設定前にAPN構成プロファイルを削除しておく必要があります。
2端末にモバイル通信プランを追加する
今回は、すでに契約している通信回線(KDDI)とは別に、新しく楽天モバイルのeSIMを追加しています。設定画面に「モバイル通信プランの名称」という画面が表示されるので、必要なら名称を自身のわかりやすいものに変えたうえで[続ける]をタップします。
その後、電話回線とモバイル通信でどちらを主回線にするか選択してください。モバイル通信は、主回線にした契約のパケットを消費しておこないます。なお、どちらを主回線にするかは後からでも切り替え可能です。
3VoLTEやAPNなどの設定をおこなう
iPhoneの「設定」アプリの「モバイル通信」画面が表示されます。ここで[副回線]をタップして進みます。
まずは[音声通話とデータ]をタップし、「LTE」を選択した状態で「VoLTE」をオンにします。
再び副回線の設定画面に戻ったら、[モバイルデータ通信ネットワーク]を選択。次の画面で「モバイルデータ通信」「インターネット共有」の各項目の「APN」に「rakuten.jp」と入力します。
設定が完了すると、電話番号などが表示されるようになります。
画面上に主回線と副回線の両方のアンテナが表示されます。今回のケースでは、主回線に「au 4G」、副回線に「Rakuten」と表示されています。
手順4:モバイルデータ通信をeSIMの回線に切り替える
iPhoneでモバイル通信をする回線を切り替えるには、「設定」アプリから[モバイル通信]→[モバイルデータ通信]をタップして進みます。
あとは、副回線(楽天モバイル)を選択すればOKです。楽天モバイルの回線でモバイルデータ通信をおこなうように切り替わります。
ドコモから楽天モバイルに乗り換えるのはアリ?
ソフトバンクから楽天モバイルに乗り換える手順とメリット・デメリットまとめ
auから楽天モバイルへの乗り換え前に確認、メリット・デメリットまとめ
ワイモバイルから楽天モバイルに乗り換える手順とメリット・デメリットまとめ
mineo(マイネオ)から楽天モバイルへの乗り換え前に確認
検証端末:iPhone 11 Pro(iOS 14.4.2)、Pixel 3(Android 11)