『刑事ロク 最後の心理戦』謎の“友”に翻弄されるベテラン刑事が過去を見つめ直す

近年、世界的な人気を獲得しつつある韓国ドラマ界の中でも飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している制作スタジオがあります。それは、『愛の不時着』などを手掛けたスタジオドラゴンです。

そのスタジオドラゴンが新たに放つのが、骨太な犯罪ドラマ『刑事ロク 最後の心理戦』です。定年間近のベテラン刑事が何者かにハメられ殺人容疑を被せられ、かつての未解決事件や不正を見つめ直すことになるという筋書きで、巧みなミステリープロットと主人公の悔恨のドラマとが交錯し、予測不能なストーリーと深い人間ドラマが展開していく作品です。
 

妻と離婚し、一人暮らしのベテラン刑事テクロク（イ・ソンミン）は定年退職を間近に迎えています。これまでたくさんの事件に関わり、真面目に事件に取り組んできたつもりでした。

しかし、ある日、同僚の刑事が殺される事件が発生。テクロクがたまたまその刑事と会った直後の出来事であり、彼は容疑者にされてしまいます。そして、彼の携帯電話には「友」を名乗る不審な電話がかかってきて、過去の事件を洗えと告げられるのです。

殺された同僚は、かつて不正によって無実の人間に罪を被せており、最近も警察署長と組んで何かをやっていたようでした。「友」はテクロクに対して、次々と過去の事件を洗い出すように指示してきます。その結果、多くの事件で不当な捜査や証言の強要などが掘り出され、自分もまた知らずのうちに加担していたことにテクロクは気づき始めるのです。

本作は、そんな謎の存在「友」の正体とテクロクの過去、そして現在進行形で警察署内にうずまく不正の陰謀が重なり合うように展開していきます。警察署長は定年後に政治家への転身を目論んでおり、裏で様々な画策をしています。「友」が指定してくる過去の事件は、署長の知名度向上につながっている節もあり、疑惑は過去から現在にも繋がっていることを匂わせてきます。

テクロクは自分をハメた犯人捜しと同時に、そうした警察内の不正を暴くことにもなり、ある意味では「友」と協力関係にあるようにも見えてくるところが非常に上手い展開です。

そして、これが定年間近のベテランにふりかかる災難であるというのも大きな特徴と言えるでしょう。これまでのテクロクの人生を振り返ることにもつながり、自分が刑事としてやってきことは一体なんだったのかと反省と後悔を促しているのが、物語に深みを与え、定年前の最後の仕事としてその責任を全うするという面もあるわけです。

主人公のテクロクを演じるのは、韓国を代表する演技派俳優イ・ソンミン。1968年生まれで88年から演劇の道に入り、経験豊富なキャリアを持ちますが、若い頃は売れずに苦労したそうで、30代半ば頃からようやく映画やドラマなどで頭角を現すようになった苦労人です。

大統領から刑事、北朝鮮の工作員など幅広い役柄を演じることができる、韓国でも随一の演技派と言われ、多くの映画とドラマに引っ張りだこな存在です。2021年には、『KCIA 南山の部長たち』と『ビースト』と2本の映画が日本で公開。2022年には本作の他にもドラマ『財閥家の末息子』が配信予定で、映画『手紙と線路と小さな奇跡』も公開されるなど出演作品が目白押しとなっています。

本作では、粗野な刑事が過去を振り返る苦悩と、家族を想いやる優しさや部下にも慕われる信頼ある刑事を人間くささたっぷりに演じています。

日本のテレビドラマ『リーガル・ハイ』の韓国版リメイクで主演を演じたジン・グが演じる刑事・ジンハンは、新たに赴任してきて課長となる人物。警察署内では長年にわたり不正が行われていることを知った彼も動き回ります。

テクロクの部下である女性刑事のイ・ソンアを演じるのはキョン・スジン。彼女は冷静かつ行動的なキャラクターで、作中でも存在感を放つ存在です。彼女も子役時代から演技を経験している演技派。ラブコメのヒロインから、刑事役まで幅広い役をこなすことで知られています。

実力派の織りなす演技のアンサンブルは人間ドラマに深みを与え、本作を一層魅力あるものにしています。果たして「友」は誰なのか、そして、テクロクにどんな結末が待ち受けているのか、気になる人は是非ディズニープラスでチェックしてみてください。