吉高由里子が演じるまっしぐらな新米検事の奮闘物語──ドラマ『正義のセ』

吉高由里子が演じるまっしぐらな新米検事の奮闘物語──ドラマ『正義のセ』

法と証拠に照らして事件を立証し、被疑者を起訴するかどうかを決めるのが検事の仕事。固いイメージの職業ですが、いかにも仕事のできそうなエリートではなく、正義感がやたらと強い普通の女の子が検事になったら──。傷害事件や殺人事件とどう向き合っていくのか、ちょっと覗いてみたくなります。

ドラマ『正義のセ』は、幼い頃の夢は正義の味方、下町の豆腐屋で生まれ育った純朴な新米検事が、多くの壁にぶち当たりながらも鋼のような正義感を武器に困難に立ち向かっていく、恋に仕事に100%全力投球女子のお仕事ドラマです。

「聞く力」がベストセラーにもなった阿川佐和子の小説が原作。本作のプロデューサー曰く「伝わる力」をもつ女優・吉高由里子が、カッコつけず、転べばちゃんと凹む等身大の新米検事をあの独特な親しみやすさで好演しています。時に勧善懲悪型、時に人の心の複雑さを写し出す難解事件。かわいくて骨のある検事が導く必死の結論に、視聴後は晴れ晴れしい気分になれる作品です。

動画配信サービスのHulu(フールー)では、『正義のセ』の全話が見放題です(2018年8月1日時点)。

難事件にぶつかり、凹みながらもめげない凜々子の検事修行

吉高由里子が演じるまっしぐらな新米検事の奮闘物語──ドラマ『正義のセ』

吉高由里子が演じる竹村凜々子は、横浜地方検察庁港南支部に配属された新米検事。ずっと遠距離だった彼との恋愛と仕事との両立に意気込む、真っ直ぐで一生懸命な性格です。

新しい職場の先輩達は、自分をのっけから「戦力外」扱いする厳しい実力派検事・大塚(三浦翔平)や何かと小言の多い担当事務官の相原(安田顕)など、一筋縄ではいかない面々。被疑者に侮辱されれば怒ってしまい、おだてられれば乗せられてしまい、被害者の話に感情移入して泣いてしまう凜々子。自分の思ったことがすぐ顔に出てしまい、事務官の相原にきつく注意されてしまう日々です。

そんな中、凜々子の元に舞い込んできたある傷害事件。被害届の内容は、被害者である建設会社社員の向井(浅利陽介)が、上司である恩田(石黒賢)から暴力を受けた後に階段から落ちて負傷した、というもの。向井は恩田から日常的にパワハラを受けていたと訴えているものの恩田は全面的に否認しており、向井が自分を貶めようとしている、と説明します。一緒にいた同僚も同じ発言をしており、双方の主張は真っ向から対立。

「被害届を出せば、もう大丈夫。救われるんだって思ってたんですけど」と、夫を思う妊娠中の向井の妻の言葉に心動かされる凜々子。「苦しんでいる人達を助けられないなら、検事をやってる意味がない」。職場の先輩に頭を下げ、丸1日かけて恩田の主張を退ける証拠探しに奔走する凜々子ですが、その先に待っていたものとは……。

誰しも共感してしまう主人公と彼女を支えるベテラン俳優陣に注目

吉高由里子が演じるまっしぐらな新米検事の奮闘物語──ドラマ『正義のセ』

「正直、今日は会うのしんどいなぁって思ってた。もし会ったら気遣って明るくして普通に話さなきゃいけない。でも今、そんなことできる自信はない」。仕事でゴタゴタがあって、恋人との約束もドタキャンされた凜々子の心の声は、まさに世の女性達のあるある。

仕事量の多さに泣きそうになり、ダメ出しの多さに泣きそうになり、恐喝犯を前に「こっわ~」と呟いてしまう。これまで何度もドラマ化されてきた検事のイメージを上塗りしていく凜々子の普通さは、こんな検事いたら面白いだろうな、と思えるほっこり感に溢れています。

吉高由里子が演じるまっしぐらな新米検事の奮闘物語──ドラマ『正義のセ』

「個人的にはこいつ絶対やってるなーって思っても、確実に有罪だと立証できる証拠が無ければ起訴はできない」。先輩からのアドバイスが、けた外れの正義感をもつ凜々子の立証熱を掻き立てていくシーンはまさに見ものです。

娘を「融通きかんちん」と呼ぶ父親・浩市(生瀬勝久)が「家族には面倒くさくてしょうがない。けど、検事という仕事には向いてんじゃねーのか」とさり気なく励ますシーンや、「貧乏くじ引かされたわ。勘弁してほしいよ~」と言いながらも凜々子の突拍子もない動きにどこかワクワク感も感じている事務官・相原の表情など、凜々子を支えるバイプレイヤー達の味のある演技にも目が離せません。

上辺で物事を判断しがちな凜々子が、被疑者や被害者を深く知るうちに人間の心や検事という仕事の複雑さに気付いていく成長ストーリー。凜々子と一緒に一喜一憂できる楽しさが最大の魅力です。