【ポケモンGO】 新たな「ミニリュウの巣」だと噂の上野・不忍池を訪れて感じたこと

不忍池弁天堂

夕暮れ時の不忍池弁天堂付近

2016年8月6日土曜日、不忍池周辺がポケモントレーナーによって埋め尽くされた。夕方に筆者が目視したかぎりではあるが、数百人単位ではなく、千の単位で数えなければならない人出だったことは間違いないだろう。ここでポケモンGOのレアポケモン「ミニリュウ」を捕まえられるという情報がネット上で流れたからだ。そこで筆者も用事のついでに不忍池に立ち寄ってみたのだ。

上野・不忍池は、堤によって内部を隔てられている。北側の池の大半は上野動物園内に収まり、西側にはボート池、南側には蓮池があるといったように、大きく3つに分断されているのだ。

上野・不忍池

Image:Googleマップ

池の要となる中央の弁天島には、上野寛永寺の不忍池弁天堂が配置されている。そこから西に行けばボート乗り場があり、東に行けば上野の台地を少し登って寛永寺の清水観音堂や西郷隆盛像に至る。

弁天堂の参道には、いつものように10軒ほどのテキ屋が並んでいた。そのうちのひとつに氷屋がある。売り子の女性にかき氷の売れ行きについて尋ねたところ「普段の週末より売れているということはない」という。てっきり「いつもよりかなり数が出てますよ」というポジティブな回答を得られるものと期待していただけに、筆者は肩透かしを食らった格好だ。たしかに周りの焼きそば屋や焼き鳥屋などを見てみても、いつもの週末と比べて特別に売れまくっているということもなさそうだ。氷水の中で冷やされた多数の缶ビールたちからは在庫切れというサインも出ておらず、この異常な人の多さと比べると、ちょっと寂しい感じを受ける。ポケモントレーナーは、現地でそれほどお金を落とさないのかもしれない。

いや、きっと、上野のヨドバシカメラではモバイルバッテリーの販売数が多くなっているんだろうし、コンビニや自販機では飲料水や軽食が売れ、周囲の飲食店の売上は多少なりともアップしているだろう。だが、この猛暑のなか、日陰になるところが少ないあの場所にあれだけの人数が押し寄せていながら、かき氷がそれほど売れているわけではないという話が出てきたのが意外だったのだ。

不忍池弁天堂

不忍池弁天堂から東に目を向けると、トレーナーでごった返していて地面が見えない

ボート池で30分700円のスワンボートに乗ってみた。こちらでも、客を乗せて池に出ている数は、そう多くはない。周りのボートとの衝突をそれほど心配する必要もない。ざっくり10艘程度だっただろうか。逆に、ボート池の中央部から周囲を見回すと、いつもの週末の光景とは明らかに異なっている。不忍通り沿いの道とその両端からボート乗り場に繋がる堤上の遊歩道は、ところ狭しとトレーナーが歩いている。道端に立ち止まって遊んでいる人も少なくないが、歩きながら遊んでいるトレーナーの方が多い印象だ。あるポケストップにミニリュウが出現したとあれば、どのように情報を入手しているのか、トレーナーたちは駆け足で捕まえに向かう。命令されたわけでもなく集団で同じ方向に移動していく光景は、そう見られるものではない。一定の土地面積がある旧「ミニリュウの巣」の世田谷公園とは違い、不忍池は道が狭い。それゆえ見慣れさに拍車がかかるのだろう。

不忍池

スワンボートに乗船中に不忍通り方面を見ると大勢のトレーナーが移動中だった

ボート屋の日焼けしたお兄さんは「こんなに人が多くなったのは今日から。明日(日曜日)がちょっと心配です」と戸惑っていた。おそらく土曜日と同様に、ボート屋の売上自体にはそれほど影響がないのだろう。乗ったところでポケモン捕獲にメリットはなさそうだからだ。実際、筆者はボート上でポケモンをほとんど捕獲できないまま、30分のボート利用時間が終了した。ポケストップの青い領域にプレイヤーとしての自分が近づくためには、ボートをひたすら漕ぎ続けなければならない。それなら歩道を歩いたほうが、よほど速いし、そもそもボートに乗りながら画面でボールを投げ続けるのも何か違う気がする。

不忍池

「ハクリューが出た!」とボート池の北西に集まるトレーナーたち。人口密度は満員電車並になっていた

ポケモンGOには、これだけの数の人間をリアルで動かす力がある。人が動けば、金も動く。それはポケモンGOでも変わらないはずだ。ただ、純粋に観光目的で人が動くのとは少し趣が異なるとも感じる。飲み物を買ったり、食事をとったりすることはあるだろう。ただ、氷屋さんで聞いた話からすると、実はそれほど遊んでいる場所にお金を落としていくわけではないのかもしれない。

そういえば、鳥取県が鳥取砂丘をポケモンGOプレイヤーに大々的にアピールするという話が動き始めている(http://www.pref.tottori.lg.jp/tottorigo/)。この取組み自体は大いに評価したい。共存共栄できるなら、それに越したことはないのだ。しかし、鳥取砂丘でのみ捕獲できる強力ポケモンが存在するならまだしも、ポケストップが密集している程度では、県外からの観光客流入に大きな効果は出ないのではないだろうか。ポケモンGOは、「不忍池が新たなミニリュウの巣だ」という理由で、現地に大量のトレーナーが集まるようなゲームシステムだからだ。ポケストップの数ではなく、どのポケモンを捕獲できるのかが最重要であるため、強いインセンティブはそこにしかないだろう(無論、ポケストップが少ない地域からの観光客流入は見込めないことはない)。

また、ポケモンGOを開発・運営する米ナイアンティック側が自治体や施設ごとに個別に特殊ポケモンを用意する可能性は考えづらい。というのも、ポケモンGOが「ポケモン」というIPに乗っかったゲームである以上、勝手気ままに新種のポケモンを乱発するわけにはいかないからだ。かと言って、多くの自治体や施設に割り当てられるほど、既存のポケモンの種類は多くない。それゆえ、ポケモンGOが観光という経済活動に貢献できる部分は、ほとんどないのではないか。

いま筆者は、ポケモンGOによって現地が経済的に潤うという効果はそれほどなさそうだし、観光への強いインセンティブにもならないだろうと考えている。これは、統計データに基づくものではなく、あくまでも肌感覚と推測に基づくものに過ぎない。現地で商っている人たちに少しだけ話を聞いてみたこととゲームの仕組みを総合して何となくそう思った、というだけの印象論だ。

ポケモンGO:不忍池 ポケモンGO:不忍池ではハクリューゲット

鳥取砂丘ではミニリュウやハクリューのようなレアポケモンをゲットできるのだろうか?

ポケモンGOの兄貴分的な存在である位置情報ゲーム「Ingress」では、ゲームシステム的に土地を転々と移動していく必要があるし、固有のポータル(ポケモンGOでいうポケストップ的存在)をいくつ訪れたかを計測してくれる機能が存在している。つまり、さまざまな地域に出かける動機を与えてくれる設計になっているわけだ。

反対にポケモンGOでは、ポケモンを引き寄せるルアーモジュールというアイテムの存在がプレイヤーに一箇所に留まるインセンティブを与える。また、訪れたポケストップを数えてくれる機能では、何度も訪れたポケストップだろうが、初めて訪れるポケストップだろうが、同じ「1」としてカウントされていく(内部的にはユニーク数をデータとして保持しているのかもしれない)。ライトユーザー向けには正解なのかもしれないが、そこそこIngressを楽しんだ身としては物足りなさが残るところだ。そして、新しい土地に赴く強いモチベーションとなる要素が、レアポケモンの発生する「巣」だけになっている現状は、少しいびつさを感じさせられる。

ゲームに「飽きた」という声も聞こえてくるし、今後プレイヤー数は減っていくのかもしれない。しかし、そんな声をかき消すほどに多数のプレイヤーをリアルで動員してしまっているのがポケモンGOだ。ここまで爆発的に流行ったゲームは、過去に例がなく、当面のところ「ポケモン×Ingress」のポテンシャルは計り知れない。今後のアップデートでゲームはさらに変化していくだろう。

そもそも、このゲームは経済効果を目的としたものでもなく、観光のための企画モノでもない。グーグルとナイアンティックによる技術とデータ、ポケモンと任天堂の持つコンテンツパワー。両者が融合して生み出されたAR位置情報ゲームの可能性を「金を生むか」という視点から判断しようとすると、いま何が起きているのかを見誤ってしまうに違いない。

不忍池弁天堂には、いつもと変わらず参拝客が訪れていた。そして、彼らの手元にはポケモンGOの画面が映しだされたスマートフォンがあった。

不忍池弁天堂

トレーナーたちも参拝していた不忍池弁天堂は、いつもより賑わっていた気がする

ポケモンGOがなければ彼らはここを訪れなかったのかもしれないし、参拝が主目的でポケモンGOはついでだったのかもしれない。ただ、きっと前者のトレーナーも少なくなかったはずだと思いたい。近くにあったけど知らなかった"新しい何か”との出会いを、ポケモンGOが多くのトレーナーにもたらしてくれると期待したい。そんな力が、このゲームにはあるはずだ。

ポケモンGO規制論の裏で...「解放区」鳥取県では、想像以上の観光効果が起きていた! - ネタりか

なお、不忍池ではミニリュウだけでなく、ハクリューやドククラゲ、アズマオウなどもゲットできた。また、不忍池でのプレイに長時間を費やしたわけではないので、筆者としては現地を「ミニリュウの巣」だと断定できないことも付け加えておく。

追記(2016年8月7日7時35分):一部表現を修正し、内容を追加しました。