美味しい食事は人生に欠かせません。何があっても美味しいものを食べれば元気になれますよね。
映画『幸せのレシピ』は、一流レストランの料理長を務める女性の再生と成長の物語です。頑固で料理のことは絶対に妥協しない性格の彼女が、最愛の姉を失い、残された姪との生活を経て、心をひらいていく過程を暖かく見つめています。
姪との関係だけでなく、キザでイタリア料理が得意な男性シェフとのロマンスもあり、恋と仕事の両方で自分らしく生きる道を掴み取る女性の物語です。
最愛の姉を失い、姪との生活に四苦八苦
ニューヨークの一流レストランのキッチンで料理長を務めるケイト(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、しょっちゅう客と喧嘩することで、店のオーナーからセラピーに通うように指示されます。セラビストに対して、料理のうんちくと愚痴を連発するケイトですが、仕事中の態度は相変わらずで、料理のことに関しては誰が相手でも妥協しません。
ある日、姉が事故で命を落とし、その娘のゾーイは1人残されてしまいます。ケイトはゾーイの後見人として彼女と一緒に暮らすことになるのですが、母の死のショックでゾーイは心を閉ざし気味、ケイトもまた、人付き合いが得意ではないので、どう接したらいいかわからず、戸惑います。
そんなある日、レストランに新しいシェフが就任します。イタリア料理が得意なニック(アーロン・エッカート)は陽気な男で、ケイトの腕に惚れてこのレストランにやってきたと言います。しかし、ニックの軽いノリが受け付けられないケイトは事ある毎にニックと対立してしまいます。
そんなニックは、ある日ケイトと一緒にレストランにやってきたゾーイの心を見事に開いてみせ、ケイトからも一目置かれるようになります。3人は仲を深めてゆき、ケイトとニックの間にも恋心が芽生えてゆきます。
しかし、オーナーがニックにケイトのポジションをオファーしたことで、再び仲は険悪に。そして、ゾーイが突然家からいなくなるなど、トラブルが続くなか、ケイトは自分が心を閉ざし、だれも信頼していなかったことに気が付き始めるのです。
姉を失ったケイトとゾーイが互いのことを知っていくことで、心を再生していく過程がやさしく描かれていて感動的です。本作は2001年のドイツ映画『マーサの幸せレシピ』のリメイク作品で、オリジナル版はゾーイの父親も登場するのですが、本作ではゾーイとケイトとニックの3人の関係の熟成を焦点にしています。
主演のキャサリン・ゼタ=ジョーンズも相手役のアーロン・エッカートもはまり役。ゾーイ役のアビゲイル・ブレスリンは、彼女がブレイクするきっかけとなった2006年の『リトル・ミス・サンシャイン』に続き、素晴らしい演技を披露しています。
豪華な料理が映画を彩る
食を題材にした作品は、とにかく食欲をそそります。映画にはトリュフなどの高級料理から、イタリアの庶民料理であるピッツァまで様々な料理が登場し、映画を彩っています。
ケイトが得意な高級料理を出したら、まったく食べようとしなかったゾーイは、ニックのパスタには手を付けたりします。料理にはこだわりも大事ですが、相手が何を望んでいるのか、自分が作りたいものだけを作っていては駄目なのですね。そんな風に料理を介したコミュニケーションを本作では描いています。
ケイトは、ゾーイやニックと出会う前は、自分の理想とする料理を作るためだけに生きていました。言うなれば、彼女の作る料理は自分だけのためのものだったのです。それが、心を開き、誰かのために料理を作る、他の人の料理も褒める、そして誰かと一緒に食事することの素晴らしさに気づいていくのです。
誰かと一緒に食事を作り、一緒に食べることがとても素敵に思える作品です。
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