Appleは2024年1月25日(米国時間)、EU圏内においてiOSアプリの配信ルールを変更し、App Store以外からもアプリのダウンロードが可能になると発表しました。
2008年にApp Storeが誕生してから、iOSアプリはすべてApp Storeを経由してダウンロードしなければならず、サードパーティのアプリストアの開設・利用は認められていませんでした。今回、EUにおけるデジタル市場法(DMA)が3月より施行されることを受け、EU圏内のユーザーにのみサードパーティのアプリストアが開かれた形です。

2024年3月からEUではデジタル市場法(DMA)が施行される
EUのデジタル市場法は2022年に欧州議会で可決された法律で、大手テック企業による反競争的行為の規制を目的としています。デジタル市場法では、App Storeのようなオンライン仲介サービスなどを1つ以上運営している、といった条件を満たした企業を「ゲートキーパー」として指定します。ゲートキーパーに対して、自社のアプリストアに不当な利用条件を課したり、他のソースからのアプリインストールを妨げたりといった行為を規制します。Appleは、App Storeという巨大なオンライン仲介サービスを保有しているため、ゲートキーパーの指定を受けています。今回のiOSアプリの配信ルール変更は、3月施行のデジタル市場法に準拠するためのものです。
サードパーティのアプリストアからのiOSアプリインストールは、2024年3月配信のiOS 17.4で導入されます。EU圏内のユーザーは、サードパーティのアプリストアからApp Storeのガイドラインに沿わないアプリも入手可能になります。ただ、AppleはサードパーティのアプリストアでiOSアプリを配信する場合でも、すべてのアプリに対してAppleの審査が必要になるとしています。iOSユーザーのプライバシーとセキュリティリスク軽減のためと説明しており、審査には自動的なチェックと人間によるレビューが含まれます。
またマルウェア対策として、ユーザーのデバイスにインストールされた後で、アプリにマルウェアが含まれていることが判明した場合、当該アプリが起動できないようになります。サードパーティアプリによるユーザーデータの追跡についても、データ追跡の前にユーザーの許可が必要です。
こうした対策の導入の一方で、Appleは詐欺や不正使用の目的、有害なコンテンツを含むアプリなどのリスクには十分対処できないとしています。例として、WebKit以外のブラウザエンジンを使用するアプリは、システムパフォーマンスやバッテリー寿命などに悪影響を及ぼす可能性があるとして注意を促しています。
iOSアプリの決済システムにもiOS 17.4で変更が加えられます。現在、iOSアプリでデジタルコンテンツなどを購入する際は、Appleのアプリ内決済システムを利用しなければなりません。2024年3月以降、EUでは外部サイトでデジタルコンテンツやサービスの決済を完了できるようになります。外部サイトの決済システムを利用した場合、アプリ内決済であってもAppleへの手数料を支払う必要はありません。もちろん、Appleのアプリ内決済システムの利用も選択でき、その場合は3%の手数料が追加されます。
EU圏内限定の措置ではあるものの、今回のアップデートはiPhoneとアプリのあり方を大きく変えるものとなります。今後、サードパーティのアプリストアがEU以外にも波及するのかといった点を含めて、Appleのアプリエコシステムがどのように変化していくかが注目されます。