アップルの「アプリ内課金」帝国に小さな亀裂、「リーダー」アプリに外部リンク設置を許可

Netflixなどに対してアカウント作成・管理(要は自社サイト決済)に誘導する資格を付与へ

Appleは2022年3月30日(米国時間)、App Storeで販売される「リーダー」アプリに対して、条件付きで外部サイトへのリンクをアプリ内に設置することを容認し、デベロッパーからの申請受付を開始したと発表しました。「リーダー」アプリとは、動画や音楽、電子書籍などのデジタルコンテンツの提供を主とするアプリのこと。今回の施策により、NetflixやSpotifyのようなエンタメ系サービスが恩恵を受けうることになります。

Appleによる今回の方針変更は、2021年9月に交わされた日本の公正取引委員会との合意に基づくものとなります。App Storeに掲載するアプリに対し、Appleがアプリ内課金以外の課金による販売方法を強く制約している点は従来から懸念されてきました。そこで日本の公正取引委員会は、Appleがアプリ内に外部リンクを掲載することを禁じている方針について、独占禁止法に反する可能性があるとして2016年に調査を開始。Appleは日本の公正取引委員会との合意時に、2022年初めからアプリ内に外部リンクを設置できる設定を適用すると表明していました。

Netflixはアプリからのアカウント登録ができず、Webサイトでの登録を案内するのみ

Netflixアプリ内のアカウントページにアクセスするとウェブサイトにアクセスするように促される。ここにNetflixへのリンクを設置することが許容されるようになる

これまでAppleは、アプリでサービスやコンテンツを販売する場合、Appleのアプリ内決済システムによる販売を義務付けていました。Appleのアプリ内決済システムを利用すると、アプリから直接アカウントの新規登録やコンテンツの購入が可能になる一方で、販売額の最大30%を手数料としてAppleに支払う必要があります。この手数料を回避したアプリは多くあり、たとえばNetflixではアプリからアカウントの新規作成ができず、別途Webサイトで手続きをおこなうよう案内するのみの状態となっていました。

Appleは合意時の発表通り、App Storeで販売されるアプリにアカウントの作成・管理のための外部リンク設置を容認する方針を発表。ただし、デベロッパーはアプリ内に外部リンクを設置するために、数多くの条件を満たす必要があります。まず、外部リンクを設置できるアプリは、動画や音楽、電子書籍などのデジタルコンテンツ配信を主な機能とする「リーダー」アプリに限られます(ゲームアプリなどは対象外)。「リーダー」アプリのデベロッパーは、さらにAppleへの「External Link Account Entitlement」の申請が求められます。なお、「リーダー」アプリであっても、すでにアプリ内課金を提供しているアプリは対象外となり、申請をおこなうことはできません。

Appleによる警告画面の表示と、Webブラウザでのページ表示が必要となる

申請を通過したとしても、ユーザーをアプリから自社のWebサイトにリンク誘導させる場合、サービスやコンテンツの購入がAppleを通じていないことを説明する画面や、ユーザーの情報をサードパーティデベロッパーに渡すリスクに関するAppleのWebページへのリンクの表示が必須となります。さらに、リンク先のページの表示はアプリ内のWebビューではなくWebブラウザで開くこと、サービスの料金などをアプリ内にテキスト表示できない、などの制限もクリアする必要があります。

ただ、これらの条件を満たしてアプリ内に外部リンクが設置されれば、わざわざブラウザからWebサイトにアクセスしてサービスの登録や購入をする手間が減るため、ユーザーにとって大きな恩恵となります。また、サービスを提供する企業としても、Appleの手数料を避けつつ、アカウント登録やコンテンツ購入の動線が分かりづらいために失っていた潜在的なニーズを獲得できるチャンスとなるでしょう。

EDITED BY
TOKIWA